■「ブリヂストン・イノベーション・ギャラリー」がリニューアル
タイヤの世界がいま、大きく変わろうとしています。その胎動を、ブリヂストンの新しい施設で実感しました。
話題の「オールシーズンタイヤ」は実際どこまで雪道を走れる? スタッドレスと比較した
2020年11月21日から一般公開が始まった、「ブリヂストン・イノベーション・ギャラリー」(東京都小平市)は、ブリヂストン技術センターに隣接し、同社の歴史、現在、そして未来について詳細な展示を見ながら体感できる場所です。
以前は19年間にわたって「トゥデイ館」として運用していましたが、展示スペースを約1.5倍に拡大し、展示内容を大幅にリニューアルしました。
今回の「ブリヂストン・イノベーション・ギャラリー」のリニューアルでは、ギャラリーだけではなく、小平の事業施設全体が次の50年に向けてグローバル拠点「ブリヂストン イノベーション パーク」として生まれ変わるというのです。
具体的には、第1期として、2021年から研究開発拠点「B-イノベーション」と、次世代自動車などの実走行をおこなうミニテストコース「B-モビリティ」の開設が決まっています。
そもそも小平の地は、1960年3月に操業開始したブリヂストンの旧東京工場があった場所です。
同社は福岡県久留米市の地下足袋メーカーとしてスタートし、高度経済成長期に自動車産業への本格的な参入をおこない、その拠点となったのが小平市でした。
社宅や病院、スーパーマーケット、スポ―ツ施設のほか、小学校の建設までブリヂストンがおこない、地域の街づくりに積極的に関わってきました。
当時の日本企業としては珍しく、メーカーでありながら、社会に対するトータルケアを重要視してきたといいます。
1970年代に入ると、「ポテンザ」や「レグノ」など現在まで続く主力ブランドが登場。販売網でも「コックピット」「タイヤ館」へと広がっていきます。
そして1980年代はグローバル化の時代です。1988年にアメリカのファイアストンを買収。インディカーなどアメリカンモータースポーツへの参戦も始まります。さらに1990年代にはF1参戦へと繋がっていきます。
また、1980年代はスタッドレスタイヤの研究開発に注力した時期でもありました。1970年代後半から札幌、青森、仙台など雪国でスパイクタイヤによる粉塵が大きな社会問題となったことを思い出す人も多いはずです。
当時の開発事情について、ブリヂストン担当者は「まだウインター向けの自社専用テストコースがなく、地元警察や自治体の許可を得て一般路や氷結路など、いま思えば行き当たりばったりな感じでテストをしていた」と苦労話を語ってくれました。
あれから33年間、開発拠点の整備に加えて、ユーザーや販売店からのフィードバックを検証することで、ブリザックは累計販売本数が約3億本に達するにまで成長。
今後の冬用タイヤ開発の方向性としては、ゴムを極める、接地性を極める、モノづくりを極めるとして、効き・持ち・快適について「断トツな商品を目指す」と意気込みを語りました。
■将来的な新分野となる「5つのタイヤ」とは?
既存製品の進化のみならず、ブリヂストンはいま、大きな時代の変化に直面しています。
CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、電動化)やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)といった100年に一度の自動車産業大変革を、ブリヂストンの「第三創業期」として捉えて、2050年に向けた新しい挑戦を始めているというのです。
そうしたなかで、ブリヂストンとしては将来的な新分野として「5つのタイヤ」の研究を進めているというのですが、一体どういうものなのでしょうか。
将来の自動車を取り巻く環境としては、一般モビリティの進化、バスやタクシーなどの自動運転化、そして生活に密着した小型のラストワンマイルモビリティなどが想定されます。
そのうえで、ひとつめのタイヤは「低価格の空気入りタイヤ」です。
ふたつめは、低価格と正反対の、「ランフラット性能、グリップ性能、乗り心地性能などに特化した高価格の扁平タイヤ」。
3つめは、「耐過重、転がり抵抗、タイヤ騒音を大幅に改良した高内圧ダウンサイジングタイヤ」。
4つめは、「低速小型モビリティ用のエアフリータイヤ」。そして5つめは、走行環境をセンシングする「知能タイヤ」です。
これら「5つのタイヤ」の研究開発の拠点となるのが、小平地区の「ブリヂストン イノベーション パーク」なのです。
こうした「5つのタイヤ」の研究開発では、ブリヂストン単体ではなく、積極的に他業種とコラボレーションしていくとのことですが、どのような新技術が登場するのか、タイヤの進化から目が離せません。
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