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無駄にイキって見えないミッドシップスポーツ──今、男が買うべき「カッコいいクルマ」を考える 第2回

掲載 更新 18
無駄にイキって見えないミッドシップスポーツ──今、男が買うべき「カッコいいクルマ」を考える 第2回

クルマにとって造形の良し悪しというはあるものの、男が「カッコいい」と感じる対象は、もっと精神性に根ざしたものでなければならない。伊達軍曹が提案する、男が買うべき「本当の意味でカッコいいクルマ」。第2回は日本で乗ってもイキって見えない、程よく力の抜けたスポーツカー、アルピーヌA110を提案する。

SHORE, Amy肩に力が入りすぎている近年のハイパフォーマンスカー

電気自動車を声高に主張する必要はない

いわゆるひとつのクルマ離れを起こしている若い世代については知らない。だが一定以上の年齢の男は、依然としてクルマというものに「パワー」「スピード」「ステイタス」のような成分の含有を求める者も多い。そしてそれら成分を十分に含有しているクルマ、例えば最新世代のポルシェ911などのことを、「うむ。これはカッコいいクルマである」と認識するわけだ。

筆者も「一定以上の年齢の男」であることは間違いないため、その認識に対して大きな異論はない。

だが問題はそういったクルマ、つまりドイツ・アウトバーンの追い越し車線を250km/hで苦もなく走れる近年のハイパフォーマンス車を、あまり「カッコいい」とは思えない──ということだ。

ある日のことだ。筆者が運転するスバル車の前にBMWのM4クーペが割り込んできた。割り込みについてはどうでもいい。よくあることだ。筆者が気になったのはBMW M4クーペの全幅(車幅)についてである。

圧倒的なまでに広い。いや、幅が広いというよりも「太い」という表現のほうがしっくりくるぐらい、BMW M4クーペはある意味巨体であった。資料によれば現行型BMW M4クーペの全幅は1870mmだが、日本の狭い道を行くそれを真後ろから見た筆者には「……もしかして2メートル近い?」と、一瞬だが感じられたほどだ。

もちろん、M4クーペの“巨体”には意味がある。

アウトバーンの追い越し車線とサーキットこそを本籍地とするM4クーペゆえ、搭載されるエンジンは431psもの最高出力を発生する直列6気筒ツインターボ。その大パワーを最大限かつ安全に生かし、なおかつ市販車としての乗り心地の良さもある程度確保するためには、トレッド(左右の車輪間の距離)はいきおい広げざるを得ないのだ。ひと昔前のナローで可憐な車幅では、もはやそのパワーを制御しかねるのである。

これは何もBMW M4クーペに限った話ではなく、最近のポルシェ911等々においてもすべて同じことだ(もちろん車幅の拡大には「衝突安全性確保のため」という部分も大だが)。

そういった理屈と世の中の流れはわかっているつもりだが、真後ろから見たM4クーペは──こういう言い方が失礼なのは重々承知だが──率直に言ってカッコ悪いように、筆者には見えた。

なんというかこう、オリンピックで3大会連続金メダルを獲得した選手が、なぜかそのメダル全部を普段着に身につけ、ジャラジャラいわせながらスーパーマーケットで買い物している姿を見てしまったような、そんな間抜けさを感じてしまったのだ。

オリンピックで金メダルを獲得するという行為は、言うまでもなくカッコいい。偉業である。それと同様にBMW M4クーペのスタイリングと諸性能も基本的にはカッコよく、そして偉大なものだ。

だがその偉大さを場違いな場所で誇示してしまっては、すべてのカッコよさは“無効”となってしまうだろう。

もちろん、前述した「金メダリスト in スーパーマーケット」はさておき、BMW M4自体にもそのユーザーにも、「誇示してやろう」などというつもりはさらさらないはず。パフォーマンスを追求した結果、科学の必然として巨体化しただけのことであり、ユーザーは、ただそれをユーズしているだけのことだ。

だが科学とアウトバーンの必然としての巨体(というか巨体感)は、ここ日本ではどうしても「無駄にイキってる=肩に力が入りすぎててカッコ悪い」と見えてしまう蓋然性から逃れにくいのである。

そういったカッコ悪さからの逃走を図るには、「例えばプジョー208などの、肩に力が入っていないコンパクト系に行く」または「作りも寸法もシンプルだった旧車系を選ぶ」という、主に2つの手法がある。

その2つともに、個人的には強く推奨したい手法ではある。だが世の中には「でもやっぱり、ビュンビュン走れてステイタス性もそれなり以上にあるクルマじゃないと乗る気になれない」という男もいまだ多いはず。

しかしそういった「ビュンビュン走れて、ステイタス性も備えたクルマ」を選ぶと、やっぱり「金メダリストinスーパーマーケット状態」に陥ってしまうというジレンマもある。

であるならば、結局どうすればいいのか?

SHORE, Amy快適装備も付いた軽量スポーツカー

その問いに対する答えはさまざま考えられるが、現状、有力と思われる解のひとつは「アルピーヌ A110に乗ること」だろう。

アルピーヌ A110とは、アルピーヌ・ジャポン(実質ルノー・ジャポン)が2018年から販売しているフランス産のミッドシップスポーツ。1960年代から1970年代にかけて活躍した同名のスポーツカーを現代の技術で蘇らせたリバイバルモデルだ。

ボディサイズは全長4205mm×全幅1800mm×全高1250mmで、サイズ的にはポルシェ ケイマンに近い。だがケイマンより18cmも短い全長が効いているのか、実際の姿からは、数値から感じる以上のジャストサイズ感というか「可憐感」のようなものが強く感じられる。

Denis Meunier車体の中央付近に搭載されるエンジンは、ルノー・日産アライアンスが開発した最高出力252psの1.8リッター直4直噴ターボ。252psという数字は、スポーツカーにおいては400ps超が当たり前となった現代ではいかにも非力に見えるが、少なくとも実際のアルピーヌA110はまったくもって非力ではない。

なぜならば、車両重量が恐ろしく軽いからだ。

ボディの96%にアルミニウムを使用し、残る4%には樹脂を使用しているアルピーヌA110の車両重量は、ベーシックな「ピュア」というグレードの場合で1110kg。いきなり「1110kg」という数字を出されてもカーマニア以外はピンとこないかもしれないが、「ポルシェ ケイマンより280kg(力士2人分)軽い」「前出のBMW M4クーペより500kg(プロレスラー4~5人分)軽い」と書けば、その軽量っぷりがイメージできるだろうか。

いずれにせよ、現代のスポーツカーとしては──それもロータスなどのような快適装備ほぼゼロの硬派スポーツカーではなく、十分な装備類が付いたハイパフォーマンス車としては異例の軽さであり、それゆえ、252psでも「ぜんぜん十分」なのだ。

Denis Meunier「アルプスの峠道」での走りを最適化

そしてアルピーヌA110は、市街地における乗り心地も非常に良好である。

BMW M4クーペやポルシェ911のように「250km/h巡航の世界」を主たる走行局面と想定するなら、クルマの足回りというのは必然的に硬めに作らざるを得ない。というか正確には、200km/h超の局面で「ちょうどいい」と感じられる作りのサスペンションは、50km/hや、せいぜい100km/hほどの速度域では、どうしても「硬い」と感じられてしまうのだ。

しかしアルピーヌA110は、M4クーペなどと同様の「スポーツカー」であることは間違いないのだが、想定している局面が大きく異なる。

M4や911などのドイツ勢が、アウトバーンの速度無制限区間で「200km/hで走るフォルクスワーゲン ポロを250km/hで追い抜く」的なシーンに最適化されているのに対し、アルピーヌA110が最適化した対象は「アルプスの峠道」。

曲率の高い峠道では、どんな手練であってもさすがに200km/hや250km/hで走り続けることはできない。つまりアルピーヌ A110はその想定速度域が相対的に低いがゆえに、250km/hの世界を生きるドイツ勢と違い、超ワイドボディの中に固められたサスペンションを置く必要がない。それゆえ、1800mmという現代のスポーツカーとしてはナローなボディの中に、タウンスピードであってもしなやかなに動くタイプのサスペンションを置くことができたのだ。

こういったモロモロの結果としてアルピーヌA110は、性能面でもビジュアルの面でもまごうことなきスポーツカーでありながら、他のモデルとは趣が大きく異なる稀有な一台に仕上がった。

もちろん考え方やセンスというのは人それぞれであろう。だが「金メダルや勲章を必要以上にジャラジャラさせること」を恥ずかしく感じるメンタリティをお持ちの人に対しては、この「程よく力が抜けている最新ミッドシップスポーツ」に注目してみる価値は大であると、筆者としては断言せざるを得ない。

文・伊達軍曹 写真・アルピーヌ・ジャポン 編集・iconic

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