競技種別やセッティングによって どっちが速いかは諸説あり!?
オープンカー論争のなかで、屋根を開けて走るのが速いのか、それとも閉めて走るほうが速いのか、度々、論争が繰り広げられることがある。空力なのか? 重量バランスなのか? 今回は、果たしてそれらが走りにどのように影響するのかを分析してみた。
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また、各サーキットや競技によっては「オープンカー規定」なるものもあって、条件によっては、走れる/走れない に分かれたりもするので、そのあたりについても後ほど触れてみたいと思う。
サーキットで人気のオープンカーってどんな車種?
運転手や助手席の搭乗者と、空の間になにも遮るものがないオープンカー。一度乗ると、その爽快さや開放感に溢れた感覚に感動して、虜になってしまう人も多い。太陽の暖かさ、顔やカラダに直接あたる風、草木の香り……、屋根が閉まっていてはなかなか感じることのない心地よい刺激がオープンカーなら味わえる。
そんなに気持ちがイイのなら、全員にオープンカーをススメたいところではある。しかし、屋根をしまう(トランクなどの)スペースのことを考えると、たいてい2人乗りだったり、室内のスペースが極端にせまいことやオープン時はトランクに屋根が収納されるので、トランクに荷物が積めなくなってしまうなど普通のクルマにはない問題があるのも事実だ。
こうなると家族で同時に乗ることができないし、数日かけてドライブ旅行に出かける際にはスーツケースが積めなかったり。ユーティリティに関しては少々不便であることを理由に、所有できる人を選んでしまうのも、オープンカーの特徴だったりもする。
さて、オープンカーですぐに思い浮かぶのが、マツダのロードスターだろう。初代のNA系が誕生したのが1989年。ライトウエイトスポーツカーとして人気を博し、それ以降、国内ではオープンカーの代名詞のように慕われてきた。2代目がNB系、3代目がNC系、そして現行の4代目はND系である。いずれの世代のロードスターも身近なスポーツカーの一台として、サーキットやジムカーナなどモータースポーツの現場でもいまもなお多く見られる車種だ。
モータースポーツで人気のオープンカーにはロードスター以外にも、軽自動車だとコペンやS660、そしてビートにカプチーノ、国産ではS2000、MR-S、輸入車系では、ポルシェボクスター、BMW Z4/Z3、ロータスエリーゼ、アバルト124スパイダーなどが挙げられる。
ロードスターだと「筑波TC2000」で1秒近く違うことも
さて、オープンカーで屋根を開けた時と閉めている時、サーキットではどちらが速いのか? ロードスターに詳しい東京都町田市にある「TCR JAPAN(ロードスター専門ショップ)」の加藤彰彬代表に聞いてみた。加藤さんは、ロードスターのパーティレースで数え切れないほど優勝し、シリーズチャンピオンにも輝いたこともあるレーシングドライバーでもある。
加藤さんは「文句なしに屋根は閉めたほうが速いです」と即答。「筑波サーキットのような比較的短いサーキットであっても0.7秒ぐらいの違いは出ます」とのこと。あらためて検証するまでもなく、ロードスター乗りの間ではすでにデータとして明らかになっていたのだ。
この1秒近い差は何なのか? 屋根を閉めた状態で重量物が上にあったとしても、屋根を開けた状態よりも明らかに「空力」が優れているからだという。走行中の空気は、前方よりバンパー→ボンネット→フロントガラスに沿って流れるが、フロントガラス直後で室内に巻き込むように乱気流が発生し、車体にブレーキがかかってしまうのが原因とのこと。
これはロードスターに限ったことではなく、ダイハツのコペンなどでも同様で、ストレートの長いスピード(100km/h)の出るコース(サーキット)であれば、もし、操縦性が悪くなったとしても、閉めたほうが断然に速い傾向にあることは間違いないようだ。
「オープン派」「クローズ派」どちらもいるジムカーナ
速度の出るサーキットでは屋根を閉めて走るほうが断然に速いということが分かったが、ジムカーナのようなスピードが低く設定されている競技ではどうだろうか。
前出TCR JAPANの加藤さんは「ジムカーナでは屋根を開けたほうが操縦性は良いと思いますが、セッティングによりけりだと思います」とコメント。スピードがあまり出ない競技では「オープン」でも「クローズ」でも大きな差にはならないようだ。
一方、昨年、全日本ジムカーナにコペンで出場したダイハツ工業の殿村さん(というより選手)にも聞いてみた。「サーキットでも筑波TC1000のようなミニコースでは屋根の開閉でのタイム差はほとんどありません。屋根を開けたときに感じるのは、ボディ剛性が少し弱まり、コーナーで曲がりやすくなります」。
さらにコペンに関していうと、屋根を開けたほうが前後の重量配分が50:50に近づくことも特筆すべき点だそうで、そして、屋根が上からトランクに収納されることで重心が下がり、先述したボディ剛性とのマッチングで曲がりやすい&運転しやすいと殿村選手は感じているようだ。
「ジムカーナ競技ではコペンとロードスターが同じクラスになるのですが、ロードスター勢は6~7割の選手が屋根を閉めて走っていますね。少なくともジムカーナでは、せっかくオープンカーなのに屋根を閉めて走るなんてもったいない(笑)と思っちゃいます」と話す殿村選手だった。
サーキットの「オープンカー規定」について
最後に、オープンカーでサーキットを走る場合や競技に出場する場合。それぞれの規則で「オープンカー規定」があるので、事前に調査したり、場合によっては必要なものを用意しておかないと走行会あるいは競技に出場できなくなるので注意が必要だ。
ズバリ申し上げると、もっとも厳しいケースになると、オープンカーは4点式以上のロールケージが装着されていないと走行できないサーキットもあるということ。逆のケースでは、フルフェイスヘルメットを前提に幌以上を装着していれば走れる走行会もある。
いずれにしても、オープン状態で走ることは、ドライバーの頭部がむき出しになってしまうので、横転時に守るものが何もなく非常に危険であるということ。主催者によって推奨や義務などの見解が分かれるが、オープンカーが走れる条件を抜き出すと以下のような項目が挙げられる。
◆屋根は必ず閉めること(幌以上)◆ハードトップが望ましい◆フルフェイスヘルメットを被ること◆4点式のシートベルトが必要◆純正電動ハードトップのクローズ状態はオープンカーと見なさない◆屋根を開けて走る場合は4点式以上のロールケージが必要◆屋根を閉めても4点式以上のロールケージが必要
以上のように、サーキットや主催によってオープンカー規定が違う。不明点があれば事前に問い合わせるのが間違いがない。
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