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新型エルグランドまでの継投なるか? セレナ最上級ルキシオンの実力と需要

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新型エルグランドまでの継投なるか? セレナ最上級ルキシオンの実力と需要

 多くの新型ミニバンが登場した2022年。その最後を締めくくったのが日産セレナだ。そのセレナの中でひときわ目立つのが最上級グレードのe-POWERルキシオン。これほどの価格と実力ならば、Lサイズミニバンのエルグランドにも勝てるのではないだろうか?

文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部

新型エルグランドまでの継投なるか? セレナ最上級ルキシオンの実力と需要

■2022年はミニバン豊作の年

ノア/ヴォクシーに加えて、ステップワゴン、セレナと多くの人気ミニバンの新型車が登場した2022年

 2022年は「ミニバンの年」だった。トヨタノア&ヴォクシー、ホンダステップワゴン、トヨタシエンタ、そして11月には日産セレナがフルモデルチェンジを行った。ノア&ヴォクシーやセレナなどのミドルサイズミニバンは、選ぶ価値が大幅に高まっている。

 その一方で、全長が4800mmを上まわるLサイズミニバンは、選択肢を減らした。主力車種のホンダオデッセイは、国内市場から撤退している。販売店では「2023年9月頃に中国製オデッセイを導入する可能性もあるが、メーカーから詳細な予定は聞いていない」という。

 日産エルグランドは2010年に発売されたから、既に13年近くを経過した。直列4気筒2.5LとV型6気筒3.5Lガソリンエンジンを用意するが、ハイブリッドは設定されない。ハイブリッドを用意しない国産ミニバンは、エルグランド以外では、クリーンディーゼルターボを搭載する三菱デリカD:5とトヨタグランエースのみだ。

 このような状態だから、Lサイズミニバンはトヨタアルファードの独壇場になる。ただしアルファードは2023年5月頃にフルモデルチェンジするため、2022年の中盤から受注を停止している。今は実質的に購入できない。

 大人気のアルファードが受注を停止する今、トヨタにはピンチだが、ホンダや日産はチャンスになり得る。ステップワゴンやセレナの上級グレードを充実させると、オデッセイの廃止やエルグランドの古さを補い、なおかつアルファードの需要まで奪うことも不可能ではないからだ。

 そこで2022年に発売されたステップワゴンは、最上級グレードとして、スパーダプレミアムラインを設定した。オデッセイのユーザーに、ステップワゴンスパーダプレミアムラインに乗り替えてもらうことが目的だ。

■アルファード不在を狙い撃つルキシオン

新型日産セレナの最上級グレードとして登場したe-POWERルキシオン

 セレナはe-POWERルキシオンを用意する。このグレードの外観は、エアロパーツの装着を含めてe-POWERハイウェイスターVとほぼ同じだが、内装や装備が上級化されて独自のグレード名も与えられた。

 e-POWERルキシオンには専用装備が多く、特に運転支援機能のプロパイロット2.0は注目度が高い。高速道路上では、高速域まで含めて、ステアリングホイールから手を離しても運転支援を行える。ドライバーはステアリング操作とペダル操作の両方が軽減される。

 このほかe-POWERルキシオンの専用装着として、遠隔操作で車庫入れや出庫が可能なプロパイロットリモートパーキング、ヘッドアップディスプレイ、合成皮革のシート生地などが備わる。

 ほかのグレードがオプション設定にしているSOSコール、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブLEDヘッドライト、インテリジェントアラウンドビューモニター、日産コネクトナビなども、e-POWERルキリオンは標準装着した。

 そのためにe-POWERルキシオンは価格が高く、479万8200円に達する。e-POWERハイウェイスターVの368万6100円を111万2100円上まわる。この価格差の内、約47万円がプロパイロット2.0+プロパイロットリモートパーキングの価格換算額で占められる。

 残りの約64万円が、そのほかの装備を上級化したり、内装を上質に仕上げたことの対価だ。

■上級のエルグランドにルキシオンは迫れるか

2022年11月1日に一部仕様向上を行った日産エルグランド

 セレナe-POWERルキシオンの価格は479万8200円だから、エルグランドに当てはめると、2.5Lエンジンを搭載する250ハイウェイスタープレミアムアーバンクロム(477万8400円)、あるいは3.5Lの350ハイウェイスターアーバンクロム(480万9200円)に近い。セレナe-POWERルキシオンの価格は、エルグランドの主力グレードと同等だ。

 これは意図的な設定でもある。エルグランドは前述の通り設計が古く、ハイブリッドも用意されないため、2022年の1か月平均登録台数は約190台に留まった。セレナもフルモデルチェンジの直前で、2022年の売れ行きは伸び悩んだが、1か月平均が約4800台に達している。

 エルグランドはセレナの4%だ。そこでエルグランドの乗り替え需要をカバーすべく、セレナにe-POWERルキシオンを設定した面もある。

 ちなみに初代エルグランドは1997年に発売され、翌年には、今のセレナと同等の1か月平均約4700台が登録された。

 現行エルグランドも、2011~2012年には1か月平均で約1400台が登録され、保有台数は相応に多い。この乗り替え需要が他社に逃れるのを防ぐためにも、日産としては、エルグランドからセレナe-POWERルキシオンなどに乗り替えて欲しい。

■エルグランドからの乗り換え需要は?

エルグランドの2列目キャプテンシート

 問題は実際に、エルグランドからセレナe-POWERルキシオンへの乗り替えが発生しているか否かだ。この点を販売店に尋ねると以下のように返答された。

 「セレナe-POWERの試乗車が店舗に配車されるのは、納車が始まる2023年5月頃だ。現時点ではセレナe-POWERの販売は本格化していないが、エルグランドから乗り替えるお客様も見られる。e-POWERはノイズが小さく、加速も滑らかで、エルグランドに負けない上質感を備えるからだ。

 その一方で、エルグランドとセレナでは、サイズや外観の存在感に差がある。エルグランドのすべてのお客様が、セレナe-POWERルキシオンに興味を示すわけではない」。

 それでもセレナは、設計の古いエルグランドに比べて、さまざまな機能や装備が上まわっている。特にエルグランドは、2列目のシートベルトに問題を抱える。

 セパレートタイプのキャプテンシートでも、シートベルトが背もたれではなく、ピラー(柱)から引き出す方式になるためだ。キャプテンシートはスライド量が多く、シートベルトは背もたれから引き出して、乗員の体にフィットさせるのが今では常識になっている。

 セレナもベンチシートを含めて、このタイプを採用するが、エルグランドはピラーから引き出す。古い方式だから、他メーカーのミニバン開発者も「安全性を考慮すると好ましくない」と指摘する。

 3列目の居住性も、エルグランドは床と座面の間隔が足りずに足を前へ伸ばす座り方だが、セレナなら着座姿勢に無理が生じない。シートアレンジや荷室の使い勝手もセレナが優れている。

 以上のように設計の古い現行エルグランドを購入するなら、セレナe-POWERルキシオンに乗り替えた方が、安全かつ快適に使えて満足度も高い。

 問題はボディサイズと外観の存在感で、この点だけは、セレナはエルグランドにかなわない。従って今でもエルグランドの購入を希望するユーザーもいるため、前述のシートベルトを含めて、日産はエルグランドの販売を続けるなら進化させる必要がある。

■セレナの長所とお買い得グレード

ルキシオンの3列目シートは優れた居住性を持つ

 一方、2022年に発売されたノア&ヴォクシーやステップワゴンとセレナを比べると、機能は一長一短だ。

 セレナが最も優れているのは、3列目の居住性だ。身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節した場合、3列目の膝先空間は、セレナが握りコブシ2つ半、ステップワゴンは2つ分、ノア&ヴォクシーは1つ半になる。

 座面の奥行寸法も、セレナが最も長く、次はノア&ヴォクシーで、床下格納のステップワゴンは3番目だ。

 このほかセレナはシートアレンジも多彩だ。2列目シートの中央を1列目の間までスライドさせると、収納設備として使えて、乗員が2/3列目の間を移動しやすい。

 3列目の乗員がスライドドアから乗り降りする時も便利だ。e-POWERは実用回転域の駆動力が高まって運転しやすく、e-POWERルキシオンは、前述の通りプロパイロット2.0を搭載して運転支援機能を大幅に進化させた。

 その代わりセレナにはデメリットもある。プラットフォームの設計が古いため、ライバル2車に比べて床が70~80mm高く、サイドステップ(小さな階段)を使って乗り降りする。

 床が高いために、重心も高く感じられ、ライバル2車に比べるとカーブを曲がる時にボディが大きめに傾く。タイヤの指定空気圧は、先代型と同じく280kPaに達するから、乗り心地が硬めに感じる。

 一番買い得なグレードは、セレナがe-POWERハイウェイスターV(368万6100円)、ノア&ヴォクシーはノアハイブリッドS-Z(367万円)、ステップワゴンはe:HEVスパーダ(364万1000円)とされ、全車が360万円台に集中する。ライバル同士が互いに精査しながら装備、グレード、価格を決めるため、買い得度にはほとんど差が付かない。

 納期は車種によって異なり、販売店によると、セレナはe-POWERが約9か月だ。ノア&ヴォクシーは、ノーマルエンジンは約6か月だが、ハイブリッドは1年近くになる。ステップワゴンはターボ、e:HEV(ハイブリッド)ともに約1年だから、セレナは納期が比較的短い部類に入る。

 このようなさまざまな条件を比較して、ご自分にピッタリなミニバンを選んでいただきたい。

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みんなのコメント

36件
  • ステップワゴンは無かった事にされます。
  • セレナとエルグランドの大きな違いは腹下の遮音性とボディの剛性感でここだけはどうしても埋まらない
    乗り比べると一目瞭然でバイパスや高速での音は全然違う
    扉を閉めた時の重厚感や走っている時に足元から感じるロードノイズなど別物なのよね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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