鬼に金棒、オフロードタイヤにホワイトレター
スポーツ性能の高いハイグリップタイヤ、静かで乗り心地の良いコンフォートタイヤ、燃費を重視したエコタイヤに、雪道用のスタッドレスタイヤなど。タイヤにはさまざまな種類がある。では、「ホワイトレタータイヤ」はご存じだろうか。
「アゲ」と「タイヤ変更」でクルマ激変! いま大人気コンパクトSUVの「野生化」の波がきてる
「ホワイトレター」は、タイヤの横面(サイドウォールという)にあしらわれた白いロゴのことだ。大抵のタイヤのサイドウォールにはメーカー名(YOKOHAMAやBRIDGESTONEなど)やブランド名(GRANDTREKやOPEN COUNTRYなど)などのロゴが刻印されている。それが普通なら黒(ブラックレターという)のところ、白になっているモノをホワイトレタータイヤと呼ぶ。なのでタイヤの種類の1つというよりは、デザインの1つといえる。
「60~70年代にアメリカで流行したホワイトレターですが、やがて日本にも入ってきて定着しました。アメ車、スポーツカー、SUVといった趣味性の高いクルマたちに好まれ、特に四駆系のカスタマイズでは定番アイテムになっています」と、広島県のカスタムショップ・エススタイルの菅原さん。
ということで昔からホワイトレターはオフロードタイヤに多いのだが、サイズは外径750ミリ以上のデカいヤツがほとんどだった。しかし、ここ数年のSUVブームに伴いラインナップが拡大中。ランクルなど大型SUV向けのサイズだけでなく、ミドル・コンパクトクラスのSUVや、ジムニーなど軽自動車に装着できる商品も増えた。身近な車種でもホワイトレターを楽しめるようになってきたのだ。 「オフロードタイヤはその名の通り、未舗装路を走るためのものですが、そのワイルドな見た目も大きな魅力。実際にオフロードに行く機会は少なくとも、履くだけで『それっぽい雰囲気』を出せます。さらにホワイトレターならアピール度が倍増。リフトアップなどカスタムしたクルマに合うのはもちろん、フルノーマル車に合わせても見映えはガラリと変わってくる。流行のSUVでお洒落にキャンプを楽しみたい、という人にもピッタリだと思います」。
ホワイトレターの先駆者といえば「BFグッドリッチ」
それでは注目のホワイトレタータイヤを紹介していこう。一番手は大本命・BFグッドリッチだ。4WDファンならずとも多くの人に愛される有名ブランドで、創立は1870年と非常に古い歴史を持つ。現在国内では全4シリーズを展開。
中でも広く人気を集めているのが、「オールテレーンT/A KO2」。対応リム幅は15・16・17・18・20インチ。20インチはブラックレターのみだが、他のサイズは大部分がホワイトレター仕様となる。215/70R16や225/70R16、225/75R16といった小さめのSUVに履けそうなサイズも多い。 「文字の大きさ、長さのバランスが良く、そして『BFGoodrich』のロゴはやっぱり見映えがいい。ホワイトレターはメーカーやブランド名がドーンと前面に押し出されるわけですから、高いステイタス性を誇るグッドリッチはひときわ目を引きます」と菅原さん。
BFグッドリッチではオールテレーンT/A KO2のほか、マッドテレーンT/A KM2、オンロード系ながらラジアルT/Aにもホワイトレターの設定もある。
オン/オフのバランスが良い「オープンカントリーR/T」
A/Tタイヤ(オールテレーン=全地形)とM/Tタイヤ(マッドテレーン=泥地形)、2つの性質を組み合わせた、トーヨータイヤ独自のR/T(ラギッドテレーン)パターンが特徴の「オープンカントリーR/T」。ほどよくゴツゴツ感がありながら、オンロードでの乗り心地や静粛性も考慮された人気シリーズだ。
「A/Tでは見た目が物足りない、M/Tはゴツゴツ過ぎてちょっと不安、というユーザーに支持されています。オフロードタイヤとしては静かで乗り心地も良いため、ビギナーでもあまりストレスに感じることはないと思います」。
以前はブラックレターしかなかったが、昨年からホワイトレター仕様の新サイズが4本追加されている。
「185/85R16はジムニー向け。215/65R16はハイエース、235/70R16と225/60R18はジムニーシエラ、デリカD:5、RAV4あたりが履けそうです。またオープンカントリーブランドでは、M/Tも225/75R16のみホワイトレターになってます」。
ゴツさよりオン性能重視なら「ジオランダーA/T G015」
4×4業界ではBFグッドリッチに並ぶ知名度を誇るヨコハマ・ジオランダー。サイドウォールに浮かび上がる「GEOLANDAR」のロゴに憧れを持つファンも多い。このブランドのホワイトレターといえば、オールテレーンの「ジオランダーA/T G015」だ。
「A/T G015の見た目は、普通のタイヤよりはトレッドパターンが粗めかな~という程度で、正直デコボコ感は少ない。それでもサイドウォールのデザインは迫力があるし、オフロード性能はキャンプなどで使うには十分なレベルです。オンロードでのウェット性能、静粛性、耐摩耗性(減りにくさ)を気にする人にも向いています」と菅原さん。
またこのタイヤのホワイトレターは正確には「アウトラインホワイトレター」。文字のフチだけが白く、内側は黒いデザインとなる。ベタ塗りの白文字とどちらがいいかは好み次第だが、白の面積が少ない分、印象としては若干落ち着いた感じだろうか。
対応サイズは15・16を中心に豊富に用意。タイヤ幅はミドルクラス以下も履きやすい215・225・235もひと通り揃う。ただブラックレター仕様のサイズも多いので、購入の際はWEBサイト等でしっかり確認した方がいいだろう。
「ジオランダーといえばマッドパターンのM/T G003が人気ですが、残念ながらホワイトレター設定はなし。その他、A/T G015よりさらにオンロード寄りのジオランダーH/T G056というタイヤもあって、195/80R15のみホワイトレターになってます。これはジムニーシエラの純正サイズですね」。
名門ブリヂストン「デューラー」はサイズ少なめ
30年以上の歴史を持つブリヂストンのSUVタイヤブランド・デューラー。ホワイトレターは「デューラーA/T001」「デューラーM/T674」に設定があり、いずれもアウトラインホワイトレターとなる。
「これもA/T001の方はあまりデコボコしていませんが、トレッドパターンが独特なのでけっこうインパクトがあります。しかしホワイトレターは大型SUV向けが多く、履ける車種は限られます。最もタイヤ幅&外径の小さなサイズが225/70R16(外径722ミリ)で、あとは軒並みタイヤ幅は245以上、外径は750ミリ以上しかないです」。
M/T674の方も似たような状況で、ミドルクラス以下向けは215/75R15、225/75R16くらい。ブラックレターならジムニーにドンピシャの185/85R16があるので惜しいところ。
ダンロップ「グラントレック」はオールテレーンが狙い
ダンロップのSUV向けブランドはグラントレック。シリーズはオンロード重視の「PT3」、オン/オフ両立の「AT3」、オフロード特化の「MT2」の3つを展開している。この内、ホワイトレターがあるのがAT3とMT2。
「グラントレックもアウトラインホワイトレターです。ミドルクラス以下向けはAT3なら215/75R15や215/80R15、225/75R16など。MT2は225/75R16くらいでしょうか。195R16あたりもホワイトレター化して欲しいところ。サイドウォールがレコードっぽい昔ながらのデザインなので、レトロ系のイジりに似合いそうなんです」と菅原さん。
軽自動車が履けるサイズも揃うナンカン「マッドスター」
アジアンブランドのナンカンは「ラジアルA/T」「ラジアルM/T」の2シリーズをSUV向けに展開中。大手国産メーカーはラインナップしていないニッチなサイズを多数用意し、しかもすべてホワイトレターというのが強み。
「ナンカンは他にもFT-7.OWLやFT-9.RWL、N889M/T.OWLといったオフロード系ホワイトレタータイヤのシリーズもいろいろ展開しています。いずれも小さめサイズが豊富&価格も低めに設定されていることもあり、軽自動車を中心に人気が高いです」。
ラジアルA/Tは145/80R12と軽トラ・軽バンの純正サイズから設定あり。155/65R14という一般的な軽自動車の純正サイズや、それより少し大きめの165/65R14、165/60R15、ハイエース向けの215/65R16もある。ラジアルM/Tも軽トラ・軽バン純正サイズこそないが、ヴェゼル、C-HR、RAV4、デリカD:5などの純正サイズをひと通り揃える。
マッド系に強い「マキシス」もホワイトレター多し
こちらもアジア系タイヤブランド「マキシス」。ATV(オールテレーンビークル=全地形対応車)のタイヤも扱うだけあり、オフロードタイヤにはめっぽう強い。ダートトライアル向けの本格的なM/Tタイヤも作っている。
「そうしたタイヤは見た目の迫力はたっぷりなのですが、普段使いには向かない。安易に選ばない方がいいでしょう。そもそも外径は800ミリ超え、900ミリ超えも当たり前なので、普通の街乗りSUVではなかなか履けませんけどね」。
もちろん現実的なオフロードもあり、ホワイトレターで人気のMTタイヤは「MT-754バックショットマッダー」「MT-753ブラボー」あたり。AT系だと「AT-771ブラボー」はミドルクラス以下が履きやすいサイズが揃っている。
ハイエースのキャンパーに人気のホワイトレターも
トレッドがデコボコしたオフロードタイヤではないが、他にもホワイトレターはある。最近増えているのがビジネスバン用向けのシリーズで、具体的にはヨコハマの「パラダPA03」、トーヨータイヤの「H20」、ファルケンの「W11」など。
「ハイエースとキャラバン向けですね。飾り気のない商用バンでも、ホワイトレタータイヤを履くことで一気に垢抜けて見える。アウトドア系のカスタムをしたクルマにも人気で、これもキャンプ場映えする部類でしょう。パラダPA03は軽トラ・軽バンが履けそうな165/55R14も近日追加されるようです」と菅原さん。
ロゴがホワイトレターになっているだけでなく、H20のファイヤーパターンのような柄入りデザインが多いのも特徴。オフロードタイヤのホワイトレタータイヤよりもドレスアップ要素が高めだ。
「合わせるホイールも重要。いわゆる『デイトナホイール』が王道ですが、オリジナリティを出すため、いろいろと自分なりに考えてみるのも面白いと思います」。
【取材協力】エススタイル
◆広島県広島市西区中広町3-19-26◆tel.082-548-9602◆営業時間:10時~19時◆定休日:イベント参加日
シャコタンからリフトアップまでさまざまなカスタムを手掛けるプロショップ。代表の菅原さんは元タイヤメーカー社員で、タイヤ&ホイール全般に豊富な知識を持つ。
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みんなのコメント
多分、今クロカンに乗ってたらやはりホワイトレターは裏にすると思います。
最近は見かけなくなりましたが新品時ホワイトレター部分を洗わなくて青いまま乗っている残念な人が多かった。
当時はどうやってもホイールバランスが取れなくて苦労しましたが今は高速もスイスイなんでしょうね