緊急事態宣言下で公営駐車場のほとんどが閉鎖状態となっているため、最近は路上駐車する車両を多く見かけるようになった。しかし都市部では、交通巡視員はもちろん、民間の違法駐車監視員などが目を光らせており、長時間路上駐車をすることは難しくなっている。
欧州では路上駐車が法的に認められている国もあるなか、日本では逆に、約15年前にその規制が厳しくなっている。
ガバっと開きすぎて怖い…どうにかなり…ません!! クルマのドアの開く角度が調整できない事情
では、現在の状況を鑑みて、日本でも路上駐車は認められるべきか? 欧州と日本の状況を比べながらその是非を考えてみたい。
文/清水草一 写真/フォッケウルフ メイン写真/Satoshi-Stock.Adobe.com
【画像ギャラリー】欧州では合法の国も!! 路上駐車は日本でも認められるべき? 15年前に激減した訳
■日本の路上から違法駐車が「消えた」理由
2006年5月まで、日本は違法駐車天国だった!?
今から15年前の2006年6月1日。道路交通法が改正・施行され、現在の民間委託を含めた違法駐車取り締まりが始まった。
それまでの日本は、言わば違法駐車天国。駐禁取り締まりは、警察官による現認に依っており、何分間駐車したかタイヤと路面にチョークで印と時間を書き込むなど、煩雑な手順が必要。人手不足もあって、実際に取り締まりを受ける確率は低かった。
運悪く取り締まりさえ受けなければ停め得だったから、都市部の道路は駐車車両がビッシリ並び、交通渋滞の原因になっていた。
その状況が、2006年6月1日を境にガラッと変わった。業務委託された交通監視員は、違法駐車の現場を写真に撮り、黄色い駐禁ステッカーをクルマに貼れば、その時点で摘発完了。手続きは猛烈に迅速になった。
06年の道交法改正によって状況が激変した。写真は激変直後の青山通り
逆にドライバー側は、反則金さえ納めれば、出頭なし・反則点数加算もなしでオッケーとはなったが、なにしろ摘発される確率がケタ外れに上昇した。
以前が1%程度だったとすると、この日以降、たとえば都内の幹線道路に止めて10分もクルマから離れれば、やられる確率は数十倍になった。運転者がクルマに乗っていれば摘発されないので、乗ったまま路肩に停めているクルマはそれなりにいるが、クルマから離れられないので、長時間止めるケースは少ない。
とにもかくにも、あの日から、ニッポンの路上から駐車車両がほぼ消滅した! これは世界的に見ても特異な風景である。
■欧州では違法駐車の取り締まりが少ない?
欧米では、路駐が公認されている道路が多い
欧米では、路肩や副道(大通りの外側に設置された通路)が、公的に認められた駐車スペースになっている。国や都市によって異なるが、駐車場を借りず、路上駐車で自家用車を保管することもできる。
そのぶん、大都市の中心部では、どこも場所の取り合いは厳しく、なかでもパリでは、少しでもすき間があると無理矢理ねじこみ、パンパーで前後のクルマを物理的に押して、自分のスペースを広げるのが名物だ。
そのためヨーロッパの都市部では、狭いすき間に止められる全長の短いクルマが重宝され、スマートやiQも、そのニーズから誕生した。路上駐車はカーライフの重要な一幕で、そこで数多くのドラマも生まれてきた。
イタリアの街角で見かけたトヨタiQも、駐車スペース確保に執念を燃やす
欧米でも、違法駐車の取り締まりは厳しいが、なにしろ駐車禁止場所が限定されている。逆に日本は、駐車が禁止されていない道路などほとんどない。
欧米では最初から、かなり多くの路肩が駐車スペースになっているが、日本には最初からそういう設計がなく、ほんの一部にパーキングメーターが設置されているだけ。その他の道路はほぼ全面駐車禁止なのだから、実に極端である。
■取り締まり強化の功罪
コインパーキングの激増によって都市部の駐車需要はおおむね満たされた。こんな場所にも!
現在の取り締まり方法については、施行直後は多くのドライバーから怨嗟の声が上がったら、何を叫んだところで容赦なく取り締まられたため、すぐ諦めに転じ、みんな路上駐車をやめた。もはや路上駐車という選択肢は、ドライバーの頭から消えている。
これは、果たして良かったのだろうか? どんな行政の変更にも功罪はあるが、私としては、功の方が大きかったと考えている。最大のメリットは、都市部の交通がスムーズになったことだ。
東京都内の一般道を例に挙げると、それまでの平均速度は20km/h弱だったが、現在は23km/h前後に上昇している。「それっぽっちかよ!」と思われるかもしれないが、実感としては断然スムーズになった。
違法駐車車両は、すべてが交通の妨げになるわけではないが、1台が邪魔な場所にあると、クルマの流れが一気に淀み、ドライバーのストレスも一気に上昇する。それが消えたのは非常に大きい。これが最大の「功」である。数値化はできないが、事故防止の効果もあっただろう。
施行直後は、「そんなこと言ったって、駐車場がないじゃないか!」というドライバーの叫びが聞かれたが、魚心あれば水心。需要があればそれに応えようとするのが市場経済で、都市部ではコインパーキングを始めとする有料駐車場が大増加した。
「こんな狭いところに!」と驚嘆するようなコインパーキングも現れて、狭い土地が有効活用されるようになった。これも小さいながらに「功」の側だ。
地方部では、もともと無料駐車場付きの店舗が当たり前だったが、駐禁取り締まりの強化が、従来型の商店街の衰退に一役買ったのは、「罪」の方に当たるだろうか。
■それでも駐車可能な道路が少なすぎる!?
東京の銀座にはこんなに料金が高いコインパーキングも!
それにしても、日本ほど駐車が許されている道路が少ない国はない。なんとかならないのだろうか?
残念ながら、きわめて難しい。日本の道路は狭い。
日本は、明治以来交通手段として鉄道に注力し、道路を後回しにしてきた。都市部は過密で土地に余裕がない。今から土地を買収して道路を広げるには、何十年という歳月が必要で、一朝一夕にできるはずもない。
日本の大都市部にも、「ここはパーキングメーターを設置してもいいんじゃないか?」という場所は少なくないが、近年は自転車が走るスペースの確保も必要になり、新設は困難になった。それ以前に、駐禁取り締まりの強化によって、日本人は路駐という選択肢そのものを考えなくなった。
東京の都心部には、目の玉が飛び出るような高いコインパーキングも少なくないが、大都市内をクルマで移動するのは贅沢なことであり、コストがかかるのは仕方ない。地方部では無料の駐車場がどこにでもあるので不便はない。なんだかんだで、15年前の道交法改正は英断だった、と言うことだろうか。
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みんなのコメント
安心安全、緊急活動の妨げになるような路駐は禁止のままで良い。
都合のいい事だけ拾い上げて認めろは通用しないんじゃないの