アルファロメオのFRセダン「ジュリア」がアップデートされた。同車に触れた河西啓介がレポートする。
アルファ75以来のFRセダンとしてデビュー
アルファ・ロメオのセダン「ジュリア」が一部改良された。エクステリアではフロントグリルとテールランプのデザイン変更、フルLEDマトリクスヘッドライトの採用。インテリアではメーターがアナログから12.3インチのデジタルクラスターメーターとなった。車体まわりやエンジンなどにはとくに変更はないという。
という比較的地味な変更を受けたジュリアだが、イタリア本国でのデビューは2015年だからもう8年前のこと。当時は「1992年に生産終了した『75』以来のFR(後輪駆動)セダン!」と世のクルマ好きから注目されたが、近ごろではその存在感はだいぶ薄れている。
もとよりジュリアが属する「Dセグメント」(主に欧州における自動車のカテゴリー分けによる呼び方)は、メルセデス・ベンツ「Cクラス」、BMW「3シリーズ」、アウディ「A4」などの超メジャーモデルがひしめく激戦クラスなのだ。
ちなみにCクラスは2021年、3シリーズは2019年に現行モデルが登場している。登場から8年を経たジュリアの存在感が薄くなるのもやむなし、である。
2.0 ターボ・ヴェローチェ一択にしかし小変更とはいえちょっぴりリフレッシュしたとの報を聞けば、「ジュリア、どんな感じだったかな…」と、あらためて乗ってみたくなる。そこで現行ジュリアのラインナップを調べたてみたところ、少々驚いた。
デビュー時は「ジュリア」「スーパー」「ヴェローチェ」「クワドリフォリオ」の4グレードがあり、途中でディーゼルモデルも追加されたはずが、2023年6月時点ではなんと「2.0 ターボ・ヴェローチェ」一択となっているではないか。
むー、「売れないから絞った」のだろうが、あまりにもあからさまな“リストラ”ではある。
2021年にFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とPSA(プジョー シトロエン)が合併し、日本においても8ブランドを抱える「ステランティス・ジャパン」となったことから、大幅なラインナップ整理がおこなわれているのは想像に難くない。さらにステランティスは次世代戦略として「アルファ・ロメオのラインナップを2025年には完全電動化する」と発表している。
ん……、待てよ? ということは現行ジュリア、もしかすると名門アルファ・ロメオが送り出す最後の内燃機関によるFRセダンになる可能性もある? なんて考えると、アルフィスタとしては(筆者はアルファ・ロメオ・スパイダーを所有している)にわかに貴重なモデルという気もしてくる。
ドライバーをその気にさせる兎に角、ジュリア・ヴェローチェに試乗してみよう。借り出した車両のボディカラーは「ヴェズヴィオ グレー」。その名はナポリのヴェスヴィオ火山の名に由来する深い光沢のあるグレーだ。個人的にはアルファのイメージカラーといえる「ロッソ」よりもモノトーンのほうが好み。
外観はシックで、ドアを開けると一転して華やかなインテリアが広がる、というギャップが好きなのだが、果たして試乗車はその通りの仕様だった。室内は真っ赤なレザーシートがムンムンの色香を放っている。
ジュリア2.0 ターボ・ヴェローチェに搭載されるエンジンは2.0リッター直列4気筒ターボ。軽量なアルミ製で最高出力280ps/5250rpm、最大トルク400Nm/2250rpmを発揮する。
かつての「156」世代までは、2.0リッター4気筒NAの「ツインスパーク」と呼ばれるキレッキレのエンジンがあった。現在の「マルチエア」は環境対応型エンジンであり、まわすほど気持ちいいというより、低回転域から厚いトルクを紡ぎ出していく実直さが売りだ。
とはいえ280psのパワーは十分に力強い。8速ATとの組み合わせも良好で、どの速度域でも痛痒のない加速が得られる。
「さすがアルファ! 」と思わされたのは、センターコンソールのダイヤル式セレクター「アルファD.N.A.ドライブモード」で「Dynamic」を選んだとき。エキゾーストノートが明らかにワントーン上がり、エンジンおよびトランスミッションがせわしく、いやイキイキと反応し始める。途端にスポーツセダンへと変貌を遂げ、ドライバーを「さあ、走るぞ! 」という気にさせてくれる。
いっぽうエコモードにあたる「Advanced Efficiency」ではアクセル操作に対する反応がワンテンポ遅く、モワ~と加速する感じ。モードによる変化が分かりやすくあからさまなのも「イタリア車らしいなぁ」と、思わせる。通常はノーマルモードの「Natural」を選んで走るのがいいだろう。
美しく気持ちよくコーナーを曲がるこれまでジュリアの試乗記には誰もが100%書いてきたコトではあるが、やはりハンドリングについては言及せざるを得ない。クイックなステアリングのギア比と操舵感の軽い電動パワーステアリングの組み合わせは、走り出して最初のカーブで「おっと! 」とハンドルを戻してしまうほどのシャープさだ。ハンドルをコブシ1個分動かすだけで、クルマの鼻先がクッと向きを変える。
むろん単にキュッと曲がる、というだけではない。しなやかでロールの少ない足まわり、前後重量配分50:50にこだわったレイアウトにより、丁寧にハンドル操作すれば、ごく少ない舵角で美しく気持ちよくコーナーをトレースすることができる。たとえ街なかの交差点であれ、アルファ・ロメオがこのジュリアにおいて、なによりこのハンドリングの気持ちよさを重視しているのだと実感することができる。
ひとつ付け加えるなら、現行ジュリアはADAS(予防安全・運転支援システム)面についてはしっかりアップデートされている。ボタンを押せばアダプティブ・クルーズコントロールが作動し、レーンキーピングアシストが聞いて直進安定性が保たれる。また今回の仕様変更で12.3インチのデジタルクラスターメーターを搭載するなどインフォテイメントの充実も図っている。ドイツ勢ほどの“おもてなし”はないが、現代のクルマとして装備面に不足はない。
じっさいにイタリアに行き、街を歩いてみればわかるが、イタリア人は決して“新しいモノ好き”ではない。むしろコンサバで伝統的なやりかたを好む。このジュリアも従来的なクルマの価値観に則って作られていて、急速に“電化”が進むクルマの世界においては目新しさを感じないどころか、古ささえ感じる。
だが見方を変えれば、この時代においてもブレることなく、コンベンショナルなクルマの魅力を追求しているFRスポーツセダン、ジュリアは僕のような守旧派クルマ好きにとっては貴重な存在にも思えるのだ。
文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
ラクで速いなら他にいくらでもあるので。