近年、直列3気筒エンジン搭載車が増えている。BMWなどの欧州プレミアム・ブランドも採用する理由とは?
3気筒のメリット
近年、4気筒から置き換える格好で、3気筒ガソリンエンジン搭載車が増えている。火付け役になったのは欧州勢だ。2011年にフォルクスワーゲン(VW)が1.0リッターを出し、2012年にフォードが1.0リッター、PSA(プジョー・シトロエン)が1.2リッターを出した。2014年にはBMWが1.5リッターを1シリーズに搭載し(後に3シリーズにも搭載)、2018年にはボルボが1.5リッターを投入。2019年にはルノーとダイムラーが共同で1.3リッターを開発した(ルーテシアとAクラス、GLA/GLBが搭載)。すべて、ターボエンジンだ。
4気筒ではなく3気筒を選択するのは、開発コストや生産上の都合と、熱効率の観点からである。たとえば、単気筒500ccのモジュールを設計しておき、これを3つ組み合わせれば1.5リッター・3気筒、4つ組み合わせれば2.0リッター・4気筒、6つ組み合わせれば3.0リッター・6気筒になる。BMWがまさにこの方式でエンジンを展開している。ボルボの3/4気筒も共通設計で、3気筒は4気筒の1気筒切り落とし版だ。
モジュール設計を採用すれば、単気筒あたりの排気量はおなじで、ボア/ストロークもおなじだから、燃焼設計を共有できて、開発コストを低減できる。ピストンやバルブにコンロッドなど、多くの部品を共用できるので部品コストの低減にもつながる。4気筒の排気量違いを設定する場合はボア/ストロークが変わってしまうので、燃焼設計にひと手間必要だ。単気筒あたりの排気量はおなじにして気筒数だけ変える方が合理的である。
排気量が1.5リッター以下の場合、4気筒よりも3気筒のほうが熱効率を高くしやすい。逆にいうと、3気筒より4気筒のほうが冷却損失は大きく、熱効率は低くなる傾向だ。S/V比と呼ぶ指標が影響する。S/V比とは、燃焼室の表面積(S=Surface)と容積(V=Volume)の比率のことだ。燃焼室の壁面から熱が逃げると、逃げた熱が持つエネルギーはクルマを動かすことには使われず、無駄になってしまう(熱効率は下がる)。
熱を逃がさないようにするにはS/V比を小さくしたい(容積に対する表面積を小さくしたい)。そこで、おなじ排気量なら、4気筒より3気筒のほうが単室容積は大きくなるため、S/V比を小さくすることができる。これが、熱効率面で考えた場合の、3気筒を選択したくなる理由だ。シリンダーの数を4つから3つに減らすと、摺動部が減ってそのぶんフリクションが減るのも、3気筒の4気筒に対する利点だ。
また、排気干渉が少ないのも、3気筒の4気筒に対するアドバンテージである。4気筒は点火間隔が180度なので、排気バルブが閉じる前に吸気バルブを開けるバルブオーバーラップのところで前の気筒の排気圧力波が伝わって排気が逆流するため、掃気(排気を外に押し出すこと)がうまくできず、吸い込む空気の体積効率が低下する。また、残留ガスが残って筒内の温度が高くなるため、ノッキングが厳しくなる。
3気筒は点火間隔が240度なので、前の気筒の排気圧力波の影響を受けず、空気がたくさん入るバルブタイミングにセットできる。掃気が充分にできて筒内温度が下がるためノッキング限界が高まり、最適な点火タイミングで点火することができる。そのため、4気筒に比べてとくに低回転域で高いトルクを出しやすい。
かつての3気筒とは大きく異なる
余談になるが、トヨタが2018年から2020年にかけてル・マン24時間レースを3連覇したTS050ハイブリッドは、2.4リッター・V6ツインターボエンジンを積んでいた。公称最高出力は500psである。しかし開発当初は直列3気筒を検討したという。「3気筒エンジンを積んだル・マンカーなんて、なんと夢がある」と、考えるのは筆者だけだろうか。
3気筒を本気で検討したのは、量産車が3気筒を選択するのとおなじで、気筒数が減ることでフリクションが下がるし、S/V比が小さくなって冷却損失は減り、排気干渉が少なくて出力が出しやすいからだ。検討を進めた結果、3気筒では大きな負荷に耐えられないことがわかり、4気筒を飛ばして(ポルシェがV型4気筒を採用していたので、真似するみたいでイヤだったそう)6気筒に落ち着いた経緯がある。
国産メーカーでは、日産がマーチ(2010年)やノート(2012年)に1.2リッター・3気筒を投入したが、欧州勢に押されて目立った存在にはならなかった。潮目を変えるきっかけになりそうなのは、トヨタが2020年にヤリスやヤリス・クロスに投入した1.5リッター・3気筒だ。それまでの1.5リッターは4気筒だったが、新型は3気筒にした。乱暴にいえば、レクサスUXが積む2.0リッター・4気筒の1気筒切り落とし版である(3気筒独自の技術も満載だが)。
3気筒を選んだ理由はやはり、「排気干渉が小さく、低回転から高いトルクを発生できること」と、開発にあたった技術者は説明している。それだけではない。全長を短くできるのも、3気筒を選んだ理由だ。重量バランスを左右均等に近づけ、走りを良くするためである。
「ラリーで勝つクルマ」にするために開発されたGRヤリスには、ひとつ上のCセグメントの競合を打ち負かす目標を達成するため、専用エンジンを開発した。ゼロベースで開発した結果生まれたのが、1.6リッター・3気筒ターボである。4気筒ではなく3気筒を選択したのは1.5リッター版と同様で、「排気干渉が少なく、競技で多用する中低速域でトルクを上げることができるから」との説明だ。
開発コストや生産合理性だけでなく、熱効率や性能の観点から1.0リッター~1.6リッタークラスは4気筒ではなく、3気筒が選ばれるようになっている。3気筒の4気筒に対する最大の弱点は、3気筒特有のトルク変動と往復・回転運動にともなうアイドル~低回転での振動だ。
欧州勢はブルブルとした振動を感じるエンジンが多いが、国産勢はさすがに手当が行き届いており、振動をうまく抑え込んでいる。もはや、かつての3気筒とは大きく異なるのだ。
文・世良耕太
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みんなのコメント
低回転域のトルクが出るにしたがって6気筒(NA)⇒4気筒⇒3気筒が順番に可能となりました。
ただし2気筒は元々の振動がとても大きいので採用がほとんどない。
別に開発したわけでもないのに偉そうなこと言ってますが。