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モトグッツィ「V85TTトラベル」 伝統の「スモールブロック」はシリーズ最新&最強仕様となる!!

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モトグッツィ「V85TTトラベル」 伝統の「スモールブロック」はシリーズ最新&最強仕様となる!!

既存のモデルとは、一線を画する運動性能

 書き出しからちょっと妙な表現になりますが、2023年からモトグッツィが発売を開始した「V100マンデッロ」が全面新設計車であるのに対して、2019年にデビューした「V85TT」は、パワーユニット以外を新設計した車両です。

バイクの「排気量」による区分はけっこう複雑!?

 もっとも、パワーユニットも大改革が行なわれているのですが(当初の最高出力は80psで、2021年型以降は76ps。ちなみに開発ベースになった「V9」の2021年型は55psだった)、基本構成は1977年型「V50」に端を発する「スモールブロック」の発展型です。

 言ってみれば「V85TT」は、モトグッツィ伝統の空冷OHV2バルブ縦置き90度Vツイン車の最新&最強仕様にして、近年の厳しい排出ガス・騒音規制を考えると、最終進化形……になるのかもしれません。

 そんな「V85TT」はアドベンチャーツアラーとして開発されたモデルで、タイヤサイズはフロント19/リア17インチ、ホイールトラベルは前後とも170mmを確保しています。とはいえ、このモデルでモトグッツィが最も重視したのは、既存の「V7」系や「V9」系とは一線を画する運動性や快適性の実現だったのではないか、と私(筆者:中村友彦)は感じています。

 その一番の理由は、既存の「V7」系や「V9」系から転用せず、ダイヤモンドタイプのフレーム+アルミスイングアームを新規開発したことですが、エンジンの扱いやすさに貢献する電子制御式スロットルやライディングモードも(登場時はロード/レイン/オフロードの3種だったが、2021年以降はスポーツとカスタムを加えた5種)、当時のモトグッツィにとっては新しい機構でした。

 なお同社の最新作である「V100マンデッロ」のシャシーや電装系には、「V85TT」のノウハウが活かされているように思います。

 デビュー時はスタンダードのみだった「V85TT」ですが、2020年からは多種多様な純正アクセサリー、パニアケース、大型ウインドスクリーン、グリップヒーター、LEDフォグランプ(※2023年型では装備なし)などを装備する「V85TTトラベル」が併売されています。価格(消費税10%込み)は、スタンダードが165万円、「トラベル」が182万6000円で、今回の試乗では「トラベル」を使用しました。

穏やかで優しく、ホッとしてしまう

 やっぱりこのモデルは、現行車では唯一無二の世界を堪能させてくれるなあ……と、久しぶりに「V85TT」を体験した私は、しみじみそう思いました。

 近年のアドベンチャーツアラーの多くが、パワフルさや悪路走破性を強調しているのに対して、「V85TT」のキャラクターはとにかく穏やかで優しく、乗車中にホッとしてしまうのです。そのフィーリングは1980~1990年代に販売されたアドベンチャーツアラー、BMW Motorradの2バルブ「GS」や、ホンダ「XRV650/750アフリカツイン」、そしてモトグッツィ自身の「V65TT」や「クォータ1100」などに通じるところがあります。

 もちろんそういった旧車とは異なり、現代ならではの上質なサスペンションやブレーキ、黒子としてライダーをサポートするABSやトラクションコントロールなどを装備していますから、運動性や快適性は段違いに良好です。

 縦置きクランクならではのトルクリアクションや、シャフトドライブ特有のテールの上下動は依然として存在しても(ただし一昔前のモトグッツィと比べれば、ほとんど気にならないレベル)、この特性なら初めてのモトグッツィという人でも気軽に乗れるはずです。

 ではどうして、「V85TT」に乗った私が往年の旧車を思い出したのかと言うと、原因はやっぱりエンジンです。

 前述したように、搭載する縦置き90度Vツインは大改革を受けているのですが、乗り手の操作に対するレスポンスや吹け上がりのスピードには、良い意味でも悪い意味でも基本設計の古さを感じます。例えば排気量が700~900cc前後の最新アドベンチャーツアラーを集めてどこかで競争するとなったら、舞台がオンでもオフでも「V85TT」は苦戦を強いられることになるでしょう。

 逆に考えると、だからこそ、スモールブロックの最新&最強仕様でもライバル勢と同等の速さが実現できなかったからこそ、モトグッツィは全面新設計車の「V100マンデッロ」を生み出したのかもしれません。「V100マンデッロ」は前後17インチのロードタイヤを履くスポーツツアラーですが、現在の同社は派生機種として、アドベンチャーツアラー仕様を開発しているようです。

一生付き合う、価値がある?

 さて、ここまでの文章を読むと、私が基本設計の古さにガッカリしたと感じる人がいそうな気がしますが、まったくそんなことはありません。単独で走っていれば、あるいは、絶対的な速さを追求しなければ、「V85TT」は最高に楽しくてフレンドリーで快適なモデルなのですから。

 ちなみに、前述した“良い意味でも悪い意味でも基本設計の古さを感じます”は、私にとっては実は良い意味で、穏やかなレスポンスと吹け上がりのスピードは、自分の普段のツーリングにはぴったりだと思いました。

 また、現代のアドベンチャーツアラーの基準で考えると、シート高が低めであること(830mm)、燃料タンク容量が21Lと多いこと、ミドルクラスでは唯一にして頻繁なメンテナンスを必要としないシャフトドライブを採用していることにも、個人的には好感触を抱いています。

 それらに加えて長く付き合えそうなことも、このモデルの美点かもしれません。と言うのも他のアドベンチャーツアラーの場合は、仕様変更後の進化や兄貴分・上級仕様の存在が気になるのが普通ですが、伝統の空冷OHV2バルブ縦置き90度Vツイン車の最新&最強仕様として生まれた「V85TT」のオーナーになったら、そういう要素はほとんど気にならないんじゃないか、と思えるのです。

 もちろんそのあたりの考え方は人それぞれで、「V85TT」オーナーの中にもさらなる進化を期待する人や、「V100マンデッロ」のアドベンチャーツアラーバージョンが登場したら乗り換えたい人がいるでしょう。でも私自身は、このモデルには一生付き合う価値がある、と感じました。

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