■愛すべき低グレードのモデルを振り返る
新車を購入する際に、車種が決まっていても悩みどころなのはグレード選びではないでしょうか。1車種につき複数のグレードが設定されているのが一般的で、グレードによって装備やエンジン、外観が異なる場合があります。
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そして重要なのが価格で、車種によっては上位グレードと下位グレードでは数十万円から100万円以上もの差があるため、限りある予算のなかでは、1グレード上か下かで悩むことでしょう。
そこで、かつて販売された珍しい低グレードのモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「カローラレビンJ/スプリンタートレノJ」
1966年に誕生したトヨタ初代「カローラ」は、高い実用性と品質の高さで、トヨタを代表する小型大衆車として大ヒットしました。
発売当時は2ドアセダンのみでしたが、翌年には4ドアセダンやライトバンを追加ラインナップし、1968年にはスポーティな2ドアクーペボディの「カローラスプリンター」が登場。
その後、小型大衆車にも高性能化をすすめるため、1972年には2代目カローラ/スプリンターに、「セリカ1600GT」用に開発された115馬力(ハイオク仕様)を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHCエンジン「2T-G型」を搭載する「TE27型 カローラレビン/スプリンタートレノ」を追加ラインナップ。
身近な高性能モデルとして、スポーツドライビング好きな若者を中心に大人気となりました。
このカローラレビン/スプリンタートレノには廉価グレードが存在し、モデル名は「カローラレビンJ/スプリンタートレノJ」です。
エンジンは1.6リッター直列4気筒OHVの「2T-B型」で、最高出力は105馬力(ハイオク仕様)と、2T-G型から10馬力ダウンされていました。
外観はDOHCモデルとエンブレム以外は変わらなかったものの、やはりDOHCの人気が高く、いまでは現存数が極端に少ない、激レアモデルです。また、エンジンをDOHCに換装されたモデルも多いといいます。
じつはカローラレビン/スプリンタートレノには、廉価グレードがほかの代にも設定されており、あのAE86型にもAE85型という1.5リッターSOHCエンジン車が存在しました。
●ホンダ「バラードスポーツCR-X 1.3」
1980年に、ホンダ2代目「シビック」の姉妹車として初代「バラード」が誕生。シビックに対して4ドアセダンのみと差別化されていましたが、販売的にはシビックには遠く及びませんでした。
そして1983年に、同じくシビックの姉妹車として2代目バラードが登場し、派生車としてラインナップされたのが、コンパクトスポーツカーの「バラードスポーツCR-X」です。
発売当初は1.5リッター直列4気筒SOHC(CVCC)エンジンの「1.5i」が上位グレードで、下位グレードに1.3リッター直列4気筒SOHC(CVCC)エンジンを搭載する「1.3」を設定。
1.5リッターエンジンが電子制御燃料噴射で110馬力だったのに対し、1.3リッターエンジンはキャブレター仕様で80馬力と、30馬力もの差がありました。
一方、1.3の車重は装備が簡素化されていたこともあり、わずか760kg(MT)と、現在の軽自動車よりも軽量で、価格もノーマルルーフ仕様のMTで99万3000円(東京価格)と安価でした。
外観は1.5iに比べ質素で、前後スポイラーは無く、バンパーやドアの下部は無塗装の樹脂となっています。
1.3は安価で軽量で、燃費も優れたモデルでしたが、スポーツカーとして1.5iの人気が高く、販売は低迷。いまではまずお目にかかれない激レア車です。
●日産「スカイライン GTE/GXi」
1989年に発売された日産8代目「スカイライン」(R32型)は、16年ぶりとなる「スカイラインGT-R」が復活や、すべてが一新されて大きく進化したモデルとして、いまも語り継がれる存在です。
当然ながら、スカイラインGT-Rを頂点として、2ドアクーペ、4ドアセダンをラインナップして、数多くのグレード展開がおこなわれまた。
グレードによる差は、エンジン、駆動方式、装備で大別されていましたが、あまり知られていないグレードとして、2リッター直列6気筒SOHC自然吸気エンジン「RB20E型」を搭載した「スカイライン GTE」が存在。
最高出力は125馬力と、280馬力を誇ったスカイラインGT-Rの半分以下で、7代目にも同型エンジンが搭載されていました。
そして、さらに珍しいグレードが「スカイライン GXi」で、エンジンは1.8リッター直列4気筒SOHCの「CA18i型」で、最高出力はわずか91馬力でした。
GXiでは外観も黒いドアミラーやスチール製ホイールとされるなど、当時の廉価グレードの見本のような仕様です。
じつは、こうした廉価グレードは2代目以降のスカイラインには歴代で設定されており、フロントノーズが短い4気筒エンジン車も存在しました。
9代目では4気筒エンジンは廃止されましたが、6気筒SOHCエンジンは継承され、10代目では全グレードで6気筒DOHCエンジンを搭載しています。
このGTE/GXiはR32型のなかでも、かなり異色なモデルで、その存在を知っている人も少ないのではないでしょうか。
■世界でもっとも有名なスポーツカーにも廉価版があった!?
●シボレー「カマロ スポーツクーペ」
シボレーのスポーツモデルというと、頂点に君臨する「コルベット」と、若者向けのエントリーモデルとして「カマロ」があります。
カマロは1967年に初代が誕生した2ドアクーペ(オープンもあり)で、3.8リッター直列6気筒から6.5リッターV型8気筒エンジンを搭載することで、あらゆるニーズに対応していました。
その後、コンセプトを大きく変えずに代を重ね、1993年に4代目が登場。当初のトップグレードは「Z28」で、5.7リッターV型8気筒OHVエンジンを搭載し、278馬力を発揮する新世代のマッスルカーでした。
外観はフェラーリ「エンツォ・フェラーリ」も手掛けた日本人デザイナーの奥山清行氏によるもので、ロー&ワイドな流麗なスタイルと、空気を切り裂くようなロングノーズが特徴的です。
初代と同様にダウンサイジングされたエンジンを搭載するモデルがあり、日本でも販売されたエントリーグレードの「スポーツクーペ」が廉価グレードでした。
スポーツクーペには3.4リッターV型6気筒エンジンが搭載され、最高出力は161馬力と、1.3トン強の車重と比較的軽量だったことから走りは鈍重ではありませんが、操縦性はかなりソフトな印象です。
このスポーツクーペは歴代モデルのなかでも日本でヒット作となります。その背景として円高があり、3.8リッターエンジンに換装された1995年モデルで275万円。さらに追加設定された廉価モデルの「クーペ」は238万円と、国産2リッターモデルと競合する価格帯を実現。
ちなみに1995年には1ドルが79円台となるなど、凄まじい円高でした。
こうして、ヒットした4代目カマロですが、やはりアメリカ車といえば大排気量を是とする傾向からか、販売は徐々に低迷し、本国での生産終了にともない2002年に国内販売を終了。現在の中古車市場でも現存数が少ない状況です。
●ポルシェ「912」
第二次世界大戦後にポルシェはフォルクスワーゲン「タイプ1」と同種のエンジンをチューニングして搭載した小型スポーツカー、ポルシェ「356」を開発。アメリカで大ヒットを記録します。
その後継車として1964年に初代「911」を発売。新たに開発された2リッター空冷水平対向6気筒SOHCエンジンをリアに搭載したRR駆動の2+2クーペで、その性能の高さからポルシェは今に続く輝かしい歴史を刻んでいくことになります。
しかし、911は356に比べて大幅に高価となってしまい、356で獲得したオーナーたちを失わないためにと、911のボディに最終型356に搭載していた1.6リッター空冷水平対向4気筒OHVエンジンを搭載する、廉価版の「912」を追加しました。
それまでも、「911T」といった廉価グレードがあったため、912は大胆にコストダウンした派生車という位置づけです。
912に搭載されていた4気筒OHVエンジンは最高出力90馬力で、動力性能は911の130馬力に到底及ばないものでしたが、エンジンが4気筒と軽量だったため、911よりも前後重量バランスは良かったとの評価もあります。
内装では5連メーターが3連メーターとされるなど、装備も簡素化されており、1967年にはオープンボディの「912タルガ」が登場してヒットし、1969年の生産終了までに912シリーズは3万台以上も販売されました。
なお、アメリカ向け限定で、次世代の930型(通称ビッグバンパー)にも2リッター空冷水平対向4気筒OHVエンジンを搭載した「912E」が、1975年5月から約1年間だけ販売されています。
2000年代初頭ならば、日本でも912シリーズは100万円台で中古車が販売されていましたが、いまでは空冷911の価格高騰から、300万円以上の価格となってしまいました。
※ ※ ※
昭和の頃は高額な上級グレードがもっとも売れていたといいます。現在ではコンパクトカーでは廉価グレードが売れ、軽自動車では装備と価格のバランスが良い中間グレードが人気のようです。
かつては、グレードによって外観も大きく異なることが一般的でしたが、近年はグレードによる見た目の差は少なく、廉価グレードでも装備が充実しているので、予算や使い方を最優先に考えて選ぶ時代になったといえます。
そのため、グレードも絞られており、いまではかつてほどの多彩なグレード展開は珍しくなりました。
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みんなのコメント
どちらかと言うとR32GTS4の方がレアだったと思う。