アルファードや新型ノア/ヴォクシーなどミニバンは2列目シートまでは超快適な仕様となっているモデルがほとんど。アームレストはもちろんオットマンなど挙げれば切りがないほど。だが、3列目シートが超豪華なクルマって案外少ないモノ。一体なぜか!?
文:青山尚暉/写真:TOYOTA
2列目までは超快適なのに…アルファードですら3列目がイマイチなワケ
3列目シートはアルファードでも質素! ミニバンの目玉は2列にアリ
ミニバンの特等席はあくまで2列目席だ。国産ミニバン最上級、ハイエンドなアルファードはもちろん、今ではファミリーユーザー向けのMクラスボックス型ミニバンのノア&ヴォクシーやステップワゴンにさえ、豪華すぎるキャプテンシート、オットマンまで装備するようになっている。
が、多くのミニバンの2列目席、それもキャプテンシートのシートの豪華さやロングスライドによる最大600mmにもなる足元空間。シートまわりの飛行機のアッパークラス、新幹線のグランクラスを思わせる装備の充実度に感動ものである。だが、ミニバンならではの3列目席に座ってみると、あれれ、けっこう質素なシートじゃないか?と、その差に愕然としたりする。
ボディがデカけりゃイケるが……3列目を豪華にすると荷室が犠牲に
グランエースの最上級グレードの3列目はさすが超豪華。アルファードもマネをすれば…と思うがグランエースのボディサイズはアルファードの比にならないのだ
一方で、ハイエースをベースに”上級送迎車”として開発された日本専用車のグランエースともなれば、話は違う。6人乗りのプレミアムグレードの場合、2/3列目席の4座にセパレートタイプかつ本革張りのエグゼクティブパワーシートが分け隔てなく奢られているのだ。つまり、2/3列目席の豪華さ、居住感覚に差がないというわけだ。
ちなみに一般ユーザーにさらに縁のない8人乗りGグレードは2列目席がプレミアムグレードと同じエグゼクティブパワーシート、3列目席はアルファードの7人乗りベーシック仕様と同じリラックスキャプテンシートが備わり、4列目席だけが格納可能な簡易チップアップシートとなる。
つまり、グランエースに対して、アルファードは2列目席こそエグゼクティブラウンジシート、エグゼクティブパワーシート、リラックスキャプテンシートといったキャプテンシートが選べるものの、3列目席は一気に左右ハネ上げ式格納前提の5:5分割シートのみになる。2/3列目席の居住感覚に大きな差があると言っていい。
それは全長、ホイールベース、室内長に理由がある。アルファードの全長、ホイールベース、室内長はそれぞれ4945mm(一部グレードは4950mm)、3000mm、3210mm。対してグランエースは同5300mm、3210mm、3290mm(プレミアム)。何もかもが長いのである。
そのおかげで、3列目席にも、アルファード自慢のエグゼクティブパワーシートが移植できたことになる。よって、アルファードの3列目席にエグゼクティブパワーシートを持ってくるのは、寸法上、困難ということになる。
いやいや、オットマンぐらいは付けられるでしょ、と思うかもしれないが、例え付けたとしても、2列目席のスライド位置によっては、あっても出せない・・・ことになるはずだ(ラゲッジスペースを無視してシートをセットすれば可能かも知れないが)。
使用頻度が少ないのに優先するのは……ある種の割り切りが重要
そしてミニバンの考え方として、すでに述べた、2列目席が特等席というパッケージングから、3列目席はラゲッジルーム拡大のための格納前提となる、具体的には子供や秘書、付き人、そしてペット専用席的な座席なのである。
だから見た目も、アームレストを含む装備も簡素であって当然ということだろう。豪華なキャプテンシートを格納することなど不可能だ。
また、開発におけるミニバン最大の敵(苦心すべき点)は重心、重量と言われている。仮に3列目席に豪華なシートを奢るとしたら、どんどんクルマは重くなり、めったに使われないであろう(日本の乗用車の平均乗車人数は1・5人)3列目席が走行面、乗り心地などで足を引っ張ることになってしまう。
そしてもちろん、車両価格もさらにUPしてしまうため、商品として成立しにくいことになる。まぁ、全席ファーストクラスの通常運行航空機がないのと同じことだろうか。
一転アルファードは3列目が一番快適!? 振動も座り心地も文句ナシのデキ
が、アルファードの、2列目キャプテンシートに対してショボく見える3列目席のかけ心地を侮ってはいけない。たしかにオットマンもなければアームレストも細いものがある程度なのだが、実はシート振動という点では、エグゼクティブラウンジシート、エグゼクティブパワーシートより上だったりするのだ。
具体的には、上級パワーシートは重く、重心が高く、加えてロングスライド機構を備えている。そのため、シート本体に振動吸収のためのダンパーが”こっそり”入っているため振動は抑えられているものの、蓋付のアームレストに関しては、路面によってブルブルとして微振動が発生しやすい。
かつて、仕事でアルファード(現行初期型)を運転し、東京~大阪間を、後部座席にスタッフ2名を乗せて走ったことがある。後部座席のスタッフは仕事熱心で、移動中もノートパソコンを開き、仕事をしていたのだが、気づくと2列目キャプテンシートに座っていたはずのスタッフとの会話が遠い・・・。
そう、いつの間にか2人とも、2列目席と比べフツーのシートになる3列目席に移動していたのだった。あとで理由を聞くと、やはり、2列目席だと微振動によって仕事がしにくかったとのこと(あくまでひじ掛けに肘を乗せた状態/最新モデルは改善されている)。3列目席はシート自体が軽く、重心も低く、”ロングな”スライド機構を持たないため、シート振動面では有利になるということだ。
【アルファード後席比較】3列目の座り心地は微振動の少なさで快適性◎
ここでアルファードの2/3列目席のシートサイズを紹介すると、グランエースにも採用されるアルファードのエグゼクティブパワーシートはシート座面長525mm、座面幅505mm、シートバック高645mm。対して全グレード共通の3列目席はシート座面長460mm、座面幅560mm×2、シートバック高600mm。それだけを見ると、座面長、シートバック高は比較にならないと思いがちだ。
今回アルファードの後席を比較するのはなんと、イヌ!! 筆者の愛犬であるラブラドールレトリーバーのマリアとジャックラッセルのララを乗せて検証した
見方を変えて、着座感、着座性、立ち上がり性にかかわる、フロアからシート前端までの高さ=ヒール段差では、エグゼクティブパワーシート350mm、3列目席330mmと大きく違わないことが分かる。
微振動のなさとそのおかげで、3列目席もなかなかかけ心地がよいと感じさせてくれる理由だ。アルファードともなれば、見た目はともかく、3列目席のかけ心地にも、格納性とのせめぎあいの中で意外なほどしっかりと造られていて、快適に座っていられるということもまた事実なのである。
微振動のなさとヒール段差のおかげで3列目の乗り心地もいいため、マリアとララをドライブに連れていくと途端に寝てしまうという
実際、わが家の自称自動車評論犬!?であるラブラドールレトリーバーのマリアとジャックラッセルのララは、乗り心地が悪いクルマだと、ドライブに連れて行ってもいつまでも落ち着かず、起きているのだが、アルファードの3列目席に乗せると(大型犬はキャプテンシートに乗せられないため)、空調を含め快適なのか、途端に寝てしまうのだ……。
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みんなのコメント
自ら運転して楽しい車と単純比較は出来ない。
アルファードのライバルはクラウンだとよく言われるが、クラウンは自ら運転して楽しい車に変わっている。
ハンドルを握る立場にこだわるなら、チョイスはアルファードではないだろう