この特集では、「iとMとX」の3つのキーワードを軸としてBMWパワーの新たな展開を見てきたが、その最終回では「iとMとX」がもたらす「新しいBMWの高級車づくりの流儀」について触れてみよう。BMWの最高級サルーンとして君臨してきた「7シリーズ」。一方、新たなラグジュアリーカーとして注目が集まる「X7」。この2台はカタチも生い立ちも異なるが、BMWの流儀はたしかに受け継がれている。(Motor Magazine 2022年4月号より)
巨大なキドニーグリルが印象的な7シリーズとX7
「7」はいわずもがなBMWのラインナップにおいて最高峰を示す数字だ。その歴史は1977年に登場したE23の7シリーズに遡り、現在のG10で6世代目となる。そこに2018年、新たに加わったのがSUVのトップエンドを担うX7だ。初代G07のX7はBMWのSUVとしては初めて3列シート構成を採る6/7人乗りのモデルとして登場した。
BMW iX xDrive50:ニュージェネレーションの大いなる挑戦【特集BMWのiとMとX(1)】
全長は5mを、ホイールベースは3mを優に超えるフルサイズ級の体躯をもって、メルセデス・ベンツ GLS、アウディ Q7はもとより、キャデラック エスカレードやレクサス LXといったライバルにも対峙する。そういう意味では今や7シリーズよりも競争が熾烈なカテゴリーへの参入となる。
現在の日本における7シリーズラインナップは、3L直6ガソリンの740iを皮切りに、従来の直4から直6ガソリンへとスペックアップを果たしたプラグインハイブリッド、直6ディーゼル、V8そしてV12ガソリンとBMWのプレミアムパワートレーンがずらりと揃えられている。一方、X7はV8ガソリン、そして新たに加えられた直6ディーゼルの48Vマイルドハイブリッドの2本立てだ。
そのうち、今回の試乗車として用意されたのは、X7の売れ筋となるだろう直6ディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッドの「40d Mスポーツ」、そして7シリーズは実質的にBMWの頂点であるM760Li xDriveだ。M760iは過日、北米でファイナルエディションが発売されたが、日本では現在もオーダー可能だ。
BMW流にはLCI(Life Cycle Impulse)ということになるであろう、大きなマイナーチェンジが施された7シリーズが日本で発表されたのは2019年6月のこと。X7との同時発表でフラッグシップの新章を印象づけたわけだが、同時に見る者にインパクトを与えたのは異様に巨大化したグリルだったのではないだろうか。
初出のX7に調子を合わせるように約4割も面積が拡大された7シリーズのキドニーグリルだが、こうして2台が並ぶと違和感も半減するから不思議なもの・・・というか、慣れの怖さを思い知る。
既存のショーファーに劣らないX7の広さと質感
まず乗り込んだのはX7の側だ。前席まわりは当然ながら、オプションとなるセンターの2座コンフォートシートの着座姿勢やホールド性、天地及びニースペース等の余裕はまさにトップレンジに相応しいもの。
この寛ぎ感があれば、7シリーズではなくこちらをショーファードリブンとして選ぶというユーザーも、とくに最大市場である米国では確実にいるはずだ。そして3列目シートも決してオマケ的なものではなく、ミニバンに近い着座環境が確保できている。同じカテゴリーのライバルと比較しても、パッケージは相当優秀だと思う。
数字で判断すると日本の路上ではさすがに持て余しそうな車格ながら、いざ走り始めてみるとサイズ感をそれほど意識させないのは、BMWらしい意のままな応答によってもたらされた副次的な効能だろう。X7は走り出しから刺々しいところがなく、速度コントロール性もナチュラルだ。
ベルトを介してアシストする48Vのスタータージェネレーターの力感はとくに1500rpm以下の極低回転域で明らかだが、そこから上へのトルク変位も、搭載エンジンの滑らかな回転フィールが奏功してまったく違和感がない。言われなければモーターアシストが働いているかさえ感じさせないほどのスムーズネスは、まさに直6の素性の良さを表している。
X7の乗り味はX5以下とは明確に一線を画していて、全域でゆったりと鷹揚だ。試乗車は21インチと大径のランフラットタイヤを履くが、そこから想像する硬さや粗さのようなものはほとんど感じられない。標準装備となるエアサスペンションの助けもあって、ふわっと包み込まれたかのような柔らかいタッチが印象的だ。
そのぶん・・・と言ってはなんだが、ハンドリングのレスポンスやアジリティといった点は、さすがにX5のような鋭さはない。このクラスのアベレージからすれば十分にスポーティに振る舞えるが、BMWというブランドに対する期待値には届いていないと感じる人がいてもおかしくはないと思う。
上級車だけにハイテク装備が満載だが走り極めては自然
この点は、程度の差こそあれM760Liも似たところがある。操舵ゲインの立ち上がりはBMWとしてみれば気持ち穏やかで、そこから切り込んでいく際の動きにもタメと放ちがある。ただし、それはいい意味で、じわじわと曲がりを強めていく間合いがとても掴みやすく、かつ舵に伝わるフィードバックも繊細で心地よい。
4WSなどの電子制御は完璧に黒子に徹し、最低限のアシストで車体の向きを心地よく変えていく。ハイテクがやたらとでしゃばることなく、たとえ4WDであっても最後は駆動輪でしっかりと旋回していく感覚を残しているあたりはいかにもBMW的だ。そして高重心の巨体であるX7でも、驚くことにこれと同質の感覚だった。
BMWの走りのイメージについては、スポーティという言葉で簡単に括られても、各人それぞれの思いがあると思う。個人的にはE39の5シリーズあたりのフィーリングがもっともしっくりくるわけだが、X7やM760iの動きには、あの頃のBMWらしいリニアリティが重なる。
決してバキバキに曲がるばかりのクルマではないということを体現しているのが、大きさや重さというハンデが幸いした部分もあるにせよ、フラッグシップというところにはある種の整合性が感じられる。メルセデスの中でもSクラスは別物と思わせる何かがある。それと同じように、BMWもここに託すのは特別なものなのだろうと想像する。
BMW最後の12気筒は味わわなければ後悔する
直接的なライバルとの比較でいえば、もっとも基本設計が古いのが現在の7シリーズだが、その走りは今も輝きを放つ。芯材にカーボンを用いるモノコックボディは未だ剛性不足も、カーボンの減衰癖も一切感じさせず、こちらも速度域を問わずしっとりと潤いのあるフィードバックをドライバーにもたらしてくれる。
特等席は運転席というところではX7にもM760Liにも違いはない。だが、運転席に座らないとなにやら猛烈に損している感じがするのは、やはりM760Liのほうだ。その独特の味わいの源泉ともいえるのは、やはり謹製と申したくなる6.6L V12ツインターボだ。
BMWとV12の関係は1980年代後半以降に遡るが、以降四世代、このM760Liに搭載されるN74に至るまで進化を続けてきた。そして2022年、恐らくその幕を閉じることになる。先述の北米市場向けファイナルエディションは、これが最後の気筒と明言されており、過去にBMWの12気筒を所有したユーザーに12台を納めるかたちになっている。日本で同種の仕様が登場するかはわからないが、ここ数カ月中には何らかのアナウンスがあると思う。
609psの最高出力と850Nmの最大トルクを発する6.6Lツインターボは、物量が織りなす豊かさをこれでもかと伝えてくる。2.3トンの車体を発進からしずしずと押し出すトルクは絹のように滑らかなタッチで、そのままエンジンを回していけばじわじわと湧き出すパワーがその粒立ちを高めていく。ともあれ始終これ以上はないという上質さを感じさせながらも、音質や高回転域の伸び感がある点に、BMWに期待する高揚感がしっかり宿っている。
N74が幕を閉じ、モーターへと置き換わる、そんな事象もいずれは世の習いと言われるのだろうし、高級車にはむしろその方が相応しいという考え方もある。でも内燃機だから醸し出せる官能性という面はモーターには担えるものではない。最上の味わいとロマンを感じさせてくれる、その荘厳なエンジンを完璧なかたちで味わわせてくれる、上品なタッチのシャシとドライブトレーンを擁したM760Liこそ、個人的にはBMWの総代に相応しいと思う。(文:渡辺敏史/写真:井上雅行)
BMW X7 xDrive40d Mスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:5165×2000×1835mm
●ホイールベース:3105mm
●車両重量:2510kg
●エンジン:直6 DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2992cc
●最高出力:250kW(340ps)/4400rpm
●最大トルク:700Nm/1750-2250rpm
●モーター最高出力:8kW(11ps)/10000rpm
●モーター最大トルク:53Nm/500rpm(原動機始動時)、35Nm/2500rpm(原動機アシスト時)
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量: 軽油・80L
●WLTCモード燃費:11.9km/L
●タイヤサイズ:285/45R21
●車両価格(税込):1305万円
BMW M760Li xDrive 主要諸元
●全長×全幅×全高:5265×1900×1485mm
●ホイールベース:3210mm
●車両重量:2320kg
エンジン:V12 DOHCツインターボ
●総排気量:6591cc
●最高出力:448kW(609ps)/5500rpm
●最大トルク:850Nm/1550-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・78L
●WLTCモード燃費:6.7km/L
●タイヤサイズ:前245/40R20、後275/35R20
●車両価格(税込):2665万円
[ アルバム : M760Li xDrive/X7 xDrive40d Mスポーツ はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント