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天然ガスパイプラインが支える欧州エネルギー事情の泣き所

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天然ガスパイプラインが支える欧州エネルギー事情の泣き所

 ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する経済制裁が進んでいる。その中で最大の焦点になっているのが天然ガスだ。ロシアは現在、主に3つのパイプラインを使って天然ガスを西欧諸国に供給している。

 これらすべてが停止すると、欧州は深刻なエネルギー不足に陥る。EU(欧州連合)は「ロシアからエネルギーを買わない」ことで各国の足並みをそろえようとしている。
 
 5月に開催されたVW(フォルクスワーゲン)グループの2022年第1四半期決算発表でヘルベルト・ディースCEO(最高経営責任者)は「ロシアからの石油と天然ガスの調達停止に備え、再生可能エネルギー利用拡大と石炭火力発電の改良に取り組む」と語った。「われわれの車両工場では、エネルギー消費の多くが塗装工程で消費されている」ことも明らかにした。

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 ディースCEOの発言は、石炭火力発電の利用を拡大するという意味ではない。太陽光など再生可能エネルギーは24時間365日、つねにフルで利用できるものではなく、利用できないときには他の手段を使わなければならない。

 欧州では、その再エネ・バッファー(補完手段)が天然ガス火力である。しかし、ロシアからの天然ガス購入を停止した場合には、EU域内でまなかえる「褐炭」を使った火力発電を使う状況を迎えるが、その発電効率を改善する、という意味だ。

 欧州での統計を見ると、産業用エネルギーのほとんどを天然ガス火力発電に頼っている現状が示されている。自動車の生産は、得られる利益に対しエネルギー消費コストはそれほど大きくなく、同時に再エネ導入も進んでいる。たとえばジンデルフィンゲンにあるメルセデス・ベンツの工場では、エネルギー需要の45~50%を再エネが担っている。

 その一方で、ドイツ環境庁のデータによると、2020年のドイツの全産業でのエネルギー消費量の50%以上は天然ガスまたは石炭によるものであり、その多くはロシアから供給されたことがわかる。

 これを再エネで代替することは極めて難しい。必ずバッファーが必要な再エネ発電の設備よりも、火力を常時稼働させるか原子力を動員するほうが、当面のコストは抑えられる。

 本来、ドイツはロシアからの天然ガス供給量を増やす予定だった。昨年6月と9月に完成したバルト海の海底を走るパイプライン、ノルドストリーム2は、2012年までに完成したノルドストリーム1と同量の年間550億立方メートルをロシアからドイツに運ぶはずだったが、ロシアによるウクライナ侵攻準備が始まった2月下旬にドイツのオラフ・ショルツ首相は、ノルドストリーム2の認証作業を停止した。

 ロシアから欧州への天然ガス輸出は、すべてパイプラインで行われる。ウクライナ国内を経由する通称ウクライナ・コリドーは年間1700億立方メートルの移送量を持つが、ロシアとウクライナとの間にはガス料金交渉の決裂や料金未払い、勝手なガス採取といった揉め事が絶えなかった。

 そこで西欧諸国は「ウクライナを通らないルート」のガスパイプラインを望んでいた。これにロシア国営のガス会社、ガスプロムなども賛同し、ノルドストリーム構想が持ち上がったといわれている。

 もうひとつ、ベラルーシを通過するルートも年間1000億立方メートル以上を運んでいる。

 一方、ガス産出国のノルウェーからは、海底パイプラインでイギリス、ベルギー、フランスなどにLNG(液化天然ガス)を船で輸入する設備がない。とくにドイツにはLNG受け入れ設備は皆無で、遠方から船で輸入するという選択肢がない。

 欧州の自動車産業は当面、半導体とエネルギー、両方の「不足」に耐えなければならない。ピンチをチャンスに変えるヒントはないか。

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