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ラインナップが充実したDS 3 クロスバック、そのベストバイは電気かガソリンか? 判断基準は「走り味」にあった

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ラインナップが充実したDS 3 クロスバック、そのベストバイは電気かガソリンか? 判断基準は「走り味」にあった

DS 3 CROSSBACK

DS 3 クロスバック

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DSブランド「らしさ」が満載された2台のDS 3

「DS」ブランドにとって一番必要なものはピュアEVだと、常々思っていた。それは単なる、エミッションへの対応ではない。シトロエンのアバンギャルドなDNAを受け継ぎ、遂には独立したハイブランドとなったDSオートモービルズ。フランス車然とした独特でしなやかな乗り味と、恐ろしく奇抜なデザインを併せ持つそのキャラクターにこそ、モーターライドのシームレスな加速感と静粛性が、一番似合うと感じていたからである。

そして筆者は今回、遂にDSブランドのピュアEV第一弾となる「DS 3 クロスバック E-TENSE」(イーテンス)を公道試乗することができた。その登場は2019年10月と一年以上前のことだったが、ようやくこれが日本上陸を果たしたというわけである。

「ガソリンと変わらぬラゲッジ容量と、優れた低重心をもたらすCMP」

改めて紹介するとDS 3 クロスバックは、PSAグループが次世代の電動化をも見据えて開発したBセグメントのコンパクトSUVである。

その土台となるのは「eCMP」プラットフォーム。これはガソリン/バッテリーEV(BEV)両方に使えるB/Cセグメント専用のプラットフォームであり、eは「electric」、CMPは「Common Modular Platform」を意味している。そしてこのeCPMの最大の特徴は、センタートンネル及び前後シート下にバッテリーを搭載すること。これによってE-TENSEは、ガソリン仕様と変わらぬ350リットル(シートを倒せば最大で1050リットル)のトランク容量を確保できている。

「急速充電に対応し、約400kmの一充電走行距離を実現」

モーターの最高出力は100kW(136ps)、最大トルクは260Nm。リチウムイオンバッテリーの容量は50kWhで、一充電当たりの走行距離はJC08モードでは398km。より現実的な高速走行を含むWLTCモードだと320kmと公表されている。

充電時間の目安は、3kW/200Vで18時間。6kW/200Vで9時間。CHAdeMOにも対応する急速充電を使うと、50分ほどでバッテリー容量の約80%まで回復することができる。ヨーロッパでは一日あたりの平均走行距離が40kmと言われており、これに照らし合わせると1週間に1回満充電すれば十分に日常をカバーできる計算となる。

「誤解を恐れず言えば、あまりに普通なDS 3の乗り味」

さてそんなDS 3クロスバック E-TENSEを走らせた印象はというと、これが極めて違和感のない仕上がりであることにまず感心した。誤解を恐れず言えば、あまりに普通。あたかも最初からBEVがラインナップされていたかのように、みなとみらいの街中を走り出すのであった。

そこに最も大きく影響しているのは、床下のバッテリーだ。ちなみにE-TENSEは、ガソリンエンジン車(1.2リッターターボ)と比較して、なんと300kgも重たい。ただその重量増が、乗り味に対してはむしろ良い方向に影響していたのが何とも興味深かった。バッテリーを敷き詰めたフロア剛性の高さと、重心の低さ。そして重たさ。これらがE-TENSEの乗り味に、どっしり感を与えている。BEV用に高められた遮音性と相まって、ひとクラス上の上質感を演出しているのである。

対して運動性能には、少なからず重さの影響が出ていた。BEVといえば全開加速時のロケットダッシュがひとつのアトラクションというイメージだが、たとえ出力が最大化されるSportモードを用いても、E-TENSEの加速には、驚くような速さが感じられない。最近は敢えてモーターの初期トルクを絞ることで、人の感覚に自然な制御を用いることもあるようだが、E-TENSEの場合は単純にその300kgの重さが効いている気がする。

「癒やし感よりも、プレミアム性の方が高い仕上がり」

また足まわりも硬過ぎるわけではないのだが、今までのDSからイメージするほどのしなやかさは感じ取れなかった。試乗車は632kmしか走っていない新車だったから、もう少しこれが馴染んでくれば柔軟に沈み込むのかもしれない。しかし現状ではサスペンションの、特に伸び側でのストローク感が少なく、フランス車というよりはドイツのプレミアムブランドに寄った乗り味となっている。

それもこれも、増えた重量を高荷重領域できちんと支えきるために足腰をしっかりさせたからだろう。簡単に言えば癒やし感よりも、プレミアム性の方が高い仕上がりだと筆者は感じた。

とはいえアクセルを踏み出せば、過不足ないトルクが立ち上がり、クルマは泳ぐようにスーッと進む。シフトノブを一段下げれば「B」モードで回生ブレーキが強まり、おおむねアクセル操作だけで加減速をコントロールすることができる。今回はロングドライブをこなしてはいないが、普通に走る限り高速巡航でも非力さを感じさせられる場面はなかった。

また硬いと言ってもその乗り心地にはカドがなく、ステア特性を穏やかにまとめているのはDSならではである。BEVは前述した重心の低さと重量配分の良さから、ステアリングレスポンスがリニアになりがちだが、E-TENSEの場合はその初期応答性がほどよく抑えられており、その身のこなしにまろやかさがある。これが意図的なセッティングだとしたら、なかなかの奥深さだ。

「ガソリンモデルは300kg軽い車体により単純明快に快活な走りを披露」

それだけにE-TENSEから、比較試乗用に用意された1.2ターボ(グレードはGrand Chic)に乗り換えたときは、そのギャップ、いや個性の違いが際立った。

この3気筒ターボは、本当に元気がいい。己が3気筒であることを全く隠そうとせず、アクセルを踏み込めばその爆発音を丸出しにしながら、“グーン!”と力強く回りきる。ちなみにその最高出力は96kW(130ps)で、E-TENSEとほぼ同等。最大トルクも230Nmと全く同じなわけだから、これが300kg軽い車体に載れば単純明快に走りは快活である。8速ATの制御には雑な部分も多いが、細かく切られたギヤ比がもたらす加速は小気味よく、それがある種の歯ごたえや噛みごたえにすら感じられる。

サスペンションはクッション性が際立ち、乗り心地の良さとレスポンスの素早さが、実に巧みに両立されていたのだということがわかる。つまりE-TENSEの穏やかでシームレスな乗り味があるからこそ、ガソリン・ターボのキャラクターも、その良さが光る印象。両者が揃った今こそ、DS3クロスバックは選び時なのである。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

【SPECIFICATIONS】

DS 3 クロスバック E-TENSE GRAND CHIC

ボディサイズ:全長4120 全幅1790 全高1550mm

ホイールベース:2560mm

トレッド:前1540 後1550mm

車両重量:1580kg

電気モーター:交流周期電動機

最高出力:100kW(136ps)/5500rpm

最大トルク:260Nm/3000-3674rpm

トランスミッション:シングルスピード

バッテリー:リチウムイオン

バッテリー容量:50kWh

駆動方式:FWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後215/55R18

一充電走行距離(JC08モード):398km

車両本体価格(税込):534万円

DS 3 クロスバック GRAND CHIC

ボディサイズ:全長4120 全幅1790 全高1550mm

ホイールベース:2560mm

トレッド:前1540 後1550mm

車両重量:1280kg

エンジン:直列3気筒“PureTech”DOHCターボ

総排気量:1199cc

最高出力:96kW(130ps)/5500rpm

最大トルク:230Nm/1750rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:FWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後215/55R18

燃料消費率(JC08モード):20.9km/L

車両本体価格(税込):426万円

【問い合わせ】

DSコール

TEL 0120-92-6813

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