メルセデス史上、最強&最速
路上のF1マシンとも称されるメルセデスAMGの新型ハイパーカー「ワン(One)」の生産が英国で開始された。今年後半に納車開始を予定している。
【画像】F1エンジンで「史上最速」を塗り替えた市販車【新型メルセデスAMGワンをこれまでの最速モデルと写真で比較】 全100枚
新型ワンは、最高出力1063psを発揮し、メルセデスAMGの公道向けモデルとしては最もパワフルな市販車となっている。F1用のAMG製1.6L V6エンジンの改良型に4基の電気モーターを組み合わせたハイブリッド車で、2シーター、左ハンドル仕様のみが販売される。
最高速度は352km/hに制限されているが、1997年のメルセデス・ベンツCLK GTRの344km/hを上回っており、同社史上最速の市販車である。価格は275万ドル(約3億7000万円)から。275台の限定生産だが、すでに完売しているという。
英ウェスト・ミッドランズ州コベントリーで手作業により製造され、エンジンはF1パワートレインの製造会社がブリックスワースで組み立てる予定。
メルセデスによると、50人以上のスペシャリストが16の組立ステーションで組み立てを行い、テストドライバーによる試運転を経て、ドイツ・アファルターバッハにあるメルセデスAMG本社に運ばれ、オーナーに引き渡されるという。
メルセデスAMGの会長であるフィリップ・シーマーは、次のように述べている。
「メルセデスAMGワンは、開発から生産に至るまで、当社がこれまでに手がけたプロジェクトの中で最も野心的なものです。電動ドライビング・パフォーマンスの未来に向けた、メルセデスAMGの新たな高みを示しています」
エアロダイナミクスに重点を置いた設計
新型ワンの開発には、メルセデスの市販車部門と英国に拠点を置くF1チーム、そしてAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ部門が密接に関わっている。当初は2019年の発売を予定していたが、F1用エンジンの排ガス規制や高度なエアロダイナミクス開発が難航していた。
メルセデス・ベンツのオーラ・ケレニウスCEOは最近、「(ワンの)開発を承認したとき、わたし達はきっと酔っぱらっていたのでしょう」と、冗談を飛ばしている。
車体のベースとなるのは、スチール製ロールバーを内蔵したカーボンファイバー製モノコックだ。このモノコックが、ハイブリッド・パワートレイン用の大型リアサブフレーム構造と、カーボンファイバーおよびチタン製のリアシャシーを支えている。
スタイリングは、2017年のコンセプトモデルをほぼ忠実に踏襲している。しかし、5年間の開発期間の中で、高い性能目標を達成するためにあらゆる面が刷新された。
カーボンファイバーと複合プラスチックを組み合わせたボディは、最大限のダウンフォースを発生させるために開発されたもの。また、フロントエンドの冷却ダクト、フロントフェンダー上部のルーバー、伸縮可能な2ピースのリアウィングなど、可動式エアロパーツを多数装備している。
走行中、エアロダイナミクスのレベルを3段階に調整できる。ダクトとルーバーを閉じ、リアウイングを格納した「ハイウェイ」、ダクトとルーバーを開き、リアウイングを伸ばした「レースマックス・ダウンフォース」、ダクトとルーバーを閉じ、リアウイングフラップを格納した「レースDRS(ドラッグリダクションシステム)」だ。
ノーズには大型ダクト、キャビンには弧を描くエアボックス、リアにはエンジンルームから熱気を排出する大型エクストラクターが装備され、デザイン的にも重要な役割を果たしている。
ホイールはセンターロック式で、フロント19インチ、リア20インチを採用。素材は鍛造アルミニウムが標準だが、オプションで鍛造マグネシウムも選択できる。タイヤは特注のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2R M01を装着する。
F1用V6エンジンに4基の電気モーター
縦置きに搭載されたV6は、メルセデスが8年連続でコンストラクターズタイトルを獲得したF1用エンジンの改良型だ。最高出力は574ps/9000rpmで、レッドラインは1万1000rpm。市販車の排ガス規制をクリアするため、電気加熱式触媒とガソリン微粒子フィルター、そしてチタン製のリアサイレンサーが採用された。
そして4基の電気モーターには、F1マシンの技術がふんだんに盛り込まれている。出力123psのモーターはターボチャージャーと電動コンプレッサーの間のシャフトに、163psのモーターはエンジン上に配置され、ドライブシャフトに接続。さらに163psのモーター2基がフロントアクスルに内蔵されている。
合計出力は1063psで、これまで最もパワフルな市販車であったAMG GTブラックシリーズよりも333ps高い。アストン マーティン・ヴァルキリーの1176psや、フェラーリSF90ストラダーレの1000psと近い数値である。
メルセデスAMGは、「ドライブトレインの複雑な性質上、代表的な数値を示すことができない」とし、トルクを公開していない。しかし、0-100km/hは加速2.9秒、0-200km/h加速7.0秒、0-300km/h加速15.6秒と謳っている。
トランスミッションは、油圧式、4ディスククラッチ、シフトパドル付きの新開発の7速自動AMTを採用。
サーキット走行にフォーカスした足回り
走行モードは「レースセーフ」、「レース」、「EV」、「インディビジュアル」、「レースプラス」、「ストラット2」の6種類で、最後の2つはサーキット走行専用となる。
レースセーフモードは、オンデマンドのハイブリッド駆動。レースモードでは、エンジンが常に作動し、バッテリーの充電に使用される。EVは電気のみで走行するモードだ。レースプラスモードでは、リアウイングを所定の角度で展開しダウンフォースを増加させ、サスペンションをローダウンし、パワートレインの「スペシャル・パフォーマンス・マネージメント」を行う。ストラット2(F1マシンの「ストラテジー2」モードに由来)は、エアロやサスペンションチューン、パワーマネジメントを最も過激なものとし、フルパワーを発揮する。
さらに、チャージボタンが装備されており、減速エネルギーの回収とエンジンによるバッテリー充電を補完できる。
足回りもレース仕様だ。四輪に5リンク式のプッシュロッド・サスペンション、横置きダンパー、アジャスタブルストラットを装備。ホイールにはセラミック製ボールベアリング(従来はスチール製)を採用し、フリクションを低減している。
また、電子制御トラクションコントロールシステムは、9段階以上の設定が可能だという。
レーシングカーのようなインテリア
インテリアは、合成皮革とカーボンファイバーのコンビネーション。薄型シートはモノコックのフロアに直接取り付けられており、ドライバーとパッセンジャーは非常に低い位置に座り、腰が足よりも低い姿勢になる。
F1スタイルのステアリングホイールには、シフトランプとドライビングモード、トラクションコントロール、リアウィングのコントローラーが装備され、エアバッグも内蔵されている。
エアコンと電動ウィンドウは標準装備で、デジタルバックミラーにより後方視界を確保。中央の収納スペースには、2つのUSB-Cポートが設置されている。ペダルボックスには十分な調整幅が設けられた。
荷物を運ぶための設備はないが、小さな荷物であればシートの後ろとセンターコンソールの上に収納することができる。
これまでのメルセデス最速の市販車
2021年:メルセデスAMG GTブラックシリーズ
最高速度325km/h。AMG GTの最もハードコアなモデルで、世界中のラップレコードを破壊するサーキットモンスターであり、最高出力730psのフラットプレーンクランクV8を搭載する。ワンが登場するまでAMGで最もパワフルなモデルだった。
1998年:メルセデス・ベンツCLK GTR
最高速度344km/h。CLK GTRは、GT1レースに参戦するためのホモロゲーションスペシャル・モデルである。最高出力620psの6.0L V12を搭載し、0-97km/h加速を3.8秒で駆け抜けることができた。クーペが20台、ロードスターが6台のみ生産されたため、もし路上で見ることができれば非常に幸運だ。
2009年:メルセデス・ベンツSLRマクラーレン スターリング・モス
最高速度350km/h。2000年代のメルセデスとマクラーレンのF1提携により、現代を代表するハイパーカーの1つであるSLRが誕生した。最高出力650psのスターリング・モスは最終型であり、フロントガラスがないにもかかわらず、350km/hに達したメルセデス最速のモデルである。
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