2023年4月24日、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長「お別れの会」が、トヨタグループ17社合同主催にて、都内で実施された。豊田章一郎氏は1952年に父である喜一郎氏の死を受けてトヨタ自動車工業に入社、1982年にトヨタ自動車販売との「工販合併」を成し遂げ、トヨタ自動車社長に就任、トヨタのアメリカ進出と発展、その後の日米自動車摩擦の解消に尽力し、1994年からは自動車界出身者として初めての経団連会長を務めた。「工学」の博士号を持つ技術者社長でもあった。
文/ベストカーWeb編集部、写真/TOYOTA
故・豊田章一郎氏「お別れの会」実施、遺族代表として章男氏挨拶「障子を上げてみよう、外は広いぞ」
■「きみたちは燃費1.5倍に逃げているのではないか」
2023年2月14日に、満97歳で亡くなった豊田章一郎氏。本日(4月24日)東京、名古屋、豊田の三カ所で「お別れの会」を実施。式典は9:30-10:30に開催され、弔辞はトヨタ自動車代表取締役内山田竹志氏が、親族代表挨拶は同社代表取締役会長の豊田章男氏が務めた。一般献花は14:30-16:30に受け付けるとのこと。
会場では故人をしのぶ映像が流され、章一郎氏と章男氏との親子対談では、
「自宅前で(章男氏が運転する)クルマが横転してひっくり返ってね、大変だと病院へ行ったら、居ないんですよ。もしかして死んだんじゃないかと思ったら、もう自宅に帰ってケロッとしていてね。事情を聞いたら、外国車に抜かれて悔しかったので追いかけて抜き返そうとしたらひっくり返ったというので、これはひっくり返らないクルマを作らなきゃいけないな、と思ったものです。」
と、章男氏18歳時のエピソードを章一郎氏が語っていた。
また、内山田氏は弔辞のなかで、
「特に思い出深いのは、初代プリウス開発の際にいただいた、多くのアドバイス、ご指導でした。当初、ハイブリッドシステムと並行して、燃費1.5倍の従来技術改良版(純ガソリン車)との2本立てで開発していましたが、名誉会長から"きみたちは1.5倍システムに逃げようとしているのではないか、そんなことではハイブリッドシステムを完成させることはできないぞ"と言われ、プリウスはハイブリッド専用車になりました。」
と、歴史的な偉業となった世界初の量産型ハイブリッドカー発売(1997年)開発時のエピソードを披露してくれた。以下、親族代表として挨拶した豊田章男氏の挨拶文を全文引用する。
初代プリウスのチーフエンジニアを務めた内山田代表取締役。深い親交のあった豊田章一郎氏を悼んだ
■「時間を忘れて熱中する瞬間が楽しい」
(「お別れの会」親族代表豊田章男氏挨拶全文引用ここから)
豊田章男でございます。遺族を代表いたしまして、ご挨拶を申し上げます。
本日は、父、章一郎のお別れの会を開催いただき、ありがとうございます。また、多くの方にご参列いただき、誠にありがたく、恐縮の至りでございます。
父は生前、「トヨタグループに支えられ、鍛えられて、発展してきたのがトヨタ自動車だ」と申しておりました。父にとっては、グループそのものがトヨタでしたので、 17社合同でこうした場を設けていただいたことを、何よりも喜んでいると思います。
お別れの会、副委員長の皆様をはじめ、準備から本日まで運営にご尽力いただきました。皆様には大変お世話になり、厚く御礼申し上げます。ただいいま、弊社内山田代表取締役により、お心のこもった弔辞を賜りました。心より感謝申し上げます。
父はいつも仕事で忙しく動き回っておりましたが、家族との時間は大切にしてくれました。最期も「博子に一緒にいてほしい」、その言葉通り、母が看取り、苦しまずに逝きました。
父が亡くなった2月14日は、偶然にも尊敬する(トヨタグループ創始者)豊田佐吉の誕生日でした。佐吉には8人の孫がいて、みんな仲が良く、「いとこ会」と称してよく集まっておりました。
父がこの世に残された最後の1人でしたので、これからはみんなでその続きを楽しむのではないかと思います。
父も、2人の子供、5人の孫、9人のひ孫に恵まれ、ひとりひとりに愛情を注いでくれました。みんなが仲良くいることが、父の一番の望みだと思っております。
父は、27歳で父親の喜一郎を亡くし、取締役としてトヨタに入社いたしました。つねに責任者としての重責を果たしながら、「障子を上げてみよう、外は広いぞ」という佐吉の言葉通り、まさに障子を上げて、日本のトヨタから世界のトヨタへ、その礎を築いたと思います。
父は、人を信頼し、人の輪を大切にする人でした。
その自伝を読みましても、国内産官学、多くの方のお名前が出てまいります。いつもこう申しておりました。
「何事も、ひとりでやろうとしてはいけない、みんなでやるようにしなければならない。」
そんな父だからこそ、多くの人が集まり、支えてくださったのだと思います。
そして、何よりも、喜一郎の夢と、志と、心を実践し続けた人でした。
父は、「日本を豊かな国にしたい」という喜一郎の想いを受け継ぎ、さらに発展させ、世界の人々が平和で豊かに暮らせる社会にしたいという思いを強く持っておりました。
その根底にあったのは、「現地現物」、「品質は工程で作り込む」、「価格は市場で決まる」、「絶えざるイノベーションへの挑戦」、そして すべてを支える「人材の育成」という経営理念です。
忘れられない父の言葉があります。
「新しいものを作るために知恵を絞り、汗をかき、時間を忘れて熱中する、その瞬間が極めて楽しい、 苦心した末にものが出来上がった時、それを誰かが使って喜んだり、助かったりした時、 この上ない喜びと感動に包まれる。だから、もっと勉強し、働いて、もっと良いものを作ろうと思う。」
この言葉を胸に、トヨタは、グループ全員でもっと勉強し、働いて、もっと良いものを追求する。トヨタのものづくりと、人づくりを継承していくことを誓います。
最後に、これまで公私にわたり、父をお支えくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
(「お別れの会」親族代表豊田章男氏挨拶全文引用ここまで)
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みんなのコメント
奥田碩・和田明広コンビのプッシュが決め手。こんな歴史を知らない持ち上げ方は
かえって故人に失礼だと思うが、トヨタの首脳自身がそういう態度なのだから
こんな記事になるのも仕方ないか。