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ホンダ ZR-V X&e:HEV Z 4WDで山々に囲まれた秘境と駿河湾を望む絶景ドライブ「日本自動車紀行2023」

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ホンダ ZR-V X&e:HEV Z 4WDで山々に囲まれた秘境と駿河湾を望む絶景ドライブ「日本自動車紀行2023」

ホンダのミドルサイズSUV、ZR-Vにはガソリンターボとハイブリッドというふたつのパワートレーンが用意される。今回はガソリンモデルのX(FF)と最上級グレードのe:HEV Z(4WD)の2台を借り出し、モータージャーナリストの大谷達也氏とともに南アルプスの麓、奥静岡までドライブ。往復約650kmにおよぶロングドライブで、それぞれの良さをじっくりと体感してきた。(Motor Magazine 2023年12月号より)

パワートレーンの違う2台のZR-Vでロングドライブへ
「長く乗れば乗るほど、より正確な試乗記が書ける」というのが自動車メディア界では常識となっているし、私もそうだと信じている。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

だから、編集部から「ロングドライブに行きましょう」と誘われれば万難を排して参加するのだけれど、そうした職業的価値観を別にしても、やっぱりロングドライブが好きだ。移りゆく景色を眺めるだけでも楽しいし、日ごろはゆっくりと考えることがない遠い将来のこと、もしくは遠い過去のことに思いを馳せるのも興味深い。やっぱり、ロングドライブは私にとって何ものにも代えがたい体験なのだと思う。

さて、今回編集部から提案されたのはホンダの最新SUV、ZR-Vの乗り比べである。

ZR-Vは全長およそ4.6mのスタイリッシュなSUVで、パワートレーンは1.5L直4ターボエンジンのほか、2L直4エンジンとシリーズハイブリッドシステムを組み合わせた最新のe:HEVをラインナップ。どちらのパワートレーンにもFFと4WDが用意されるが、今回はガソリンエンジンモデルのベーシックグレードであるX(FF)と、e:HEVの上級グレードであるe:HEV Z(4WD)の2台で大井川の中流を目指すことにした。

まずは1.5L直4ターボエンジンを搭載するモデルから試乗
先に試乗したのは1.5LターボのX。一般道から高速道路に乗り入れると、車速を上げてもボディがしっかりとフラットに保たれる足まわりであることに気づく。人によっては「心地いい硬さ」と感じる乗り心地だろう。

この「心地いい硬さ」を実現するのは自動車メーカーにとって大変な作業である。「柔らかい足まわり」だったら、快適さや心地よさを演出するのはより簡単かもしれない。でも「やや硬めの足まわり」で心地良さを生み出すには、なによりもボディ剛性がしっかりとしていなければいけないし、ダンパーを中心とする足まわりにしても質の高いパーツを使わなければぎこちない動きになって快適とは感じられないはず。どちらも手間とコストのかかる仕事だが、それらをしっかりこなしたからこそ、この「心地いい硬さ」を実現できたのだろう。

では、「心地いい硬さ」に具体的にどんなメリットがあるのか? 高速走行でも姿勢が安定しているので乗員の上半身が揺さぶられにくく、長距離走っても疲れにくいのは、「心地いい硬さ」の足まわりがもたらす重要なポイント。ZR-V Xの場合もこれを満喫できるが、新静岡で新東名を降り、大井川上流に向かうワインディングロードを走るうち、この足まわりがハンドリング面でも重要な役割を担っていることに気づいた。

一般的にいって、FFモデルでは左右前輪の接地性が不均一になると駆動力のバランスが崩れ、ハンドリング特性も不安定になりがち。そこで左右の接地性をできるだけ均一に整えることが望ましいのだが、ZR-V Xは4輪の接地性が安定しているため、積極的にコーナリングを試してもハンドリング特性が急変することなく、実に安心してハンドルを握っていられた。これも「心地いい硬さ」の足まわりがもたらすメリットのひとつといっていいだろう。

178psと240Nmを生み出す1.5Lターボエンジンは、レスポンスが良好なうえ、エンジン回転数にかかわらずトルク特性がフラットなため、ドライバーにとっては反応が予測しやすく、とても扱いやすい。6500rpmのトップエンドまで気持ちよく吹き上がり、高回転域でもエンジン音が安っぽくならない点も、このパワーユニットの魅力といえる。

▶▶▶次ページ:気がつけば、取材班は笠張峠を越えて井川ダムに到着していた。

最初の目的地・奥静岡の井川ダムに到着
1957(昭和32)年に完成した日本初の中空重力式コンクリートダムは、堤高が103mと高く、下から眺めているだけでも足がすくんでしまいそうな気がする。堤頂から下を覗き込んだら、どんな気持ちになるのだろうか。私は、とても試してみたいとは思わなかったが……。

鉄道好きのカメラマンが、近くを走る大井川鐵道井川線を見に行こうという。この路線では、日本で唯一のアプト式列車が走っているらしい。急勾配を上るために考案されたアプト式の鉄道は子供のころ何かの本で読んだ記憶があるが、実際に目にするとは思わなかった。これも旅の醍醐味である。

ところで、撮影や休憩で何回かZR-Vを停車させるうち、私は意外なことに気づいた。このクルマ、なんとなく停めたつもりでも駐車場の枠にまっすぐと収まってくれるのだ。近年、ホンダは「クリーンな視界の確保」に熱心で、ボディとガラスエリアの境目をなるべく直線的に仕上げようとしている。

その結果、ボディの見切りも改善されているのだが、こうした努力により、クルマと駐車枠の位置関係が把握しやすくなり、比較的簡単に「まっすぐ停められる」ようになったのだろう。ZR-Vの長所として挙げておきたい。

お約束の「ダムカレー」を食してから、もう1台のe:HEV Zに乗り換える。こちらは上級グレードだけあって、インテリアは本革シートとなり、カラーもブラックとマルーンの2トーンとなる。ブラック一色のXもスポーティで魅力的だが、マルーンの室内は華やかさもあって、もともと高精度な作りのZR-Vのインテリアがより際立つように思えた。

ガソリンFFモデルとe:HEV 4WDモデルの違い
走り出してみると、Xとは足まわりのセッティングが微妙に異なっているように感じられた。これがハイブリッド化に伴うものなのか、それとも駆動方式の違い(試乗したe:HEV Zは4WD)によるものなのかはわからなかったが、私には4WDゆえに許される足まわりのように思える。FFと違って4WDでは駆動力が4輪に配分されるため、接地性を厳しく管理する必要性はFFよりも低いと推測されるからだ。

おかげでe:HEV Zの乗り味は鷹揚で懐が深い。それでいながら、ワインディングロードではXと遜色のない良好なステアリングレスポンスを実現しているほか、節度あるフラット感を保っているので高速走行も苦にならない。快適性とハンドリングのバランスが、Xよりもさらに一段、上のレベルで成立しているように思えたのである。

そうした足まわりの感触と並んで、いやそれ以上に鮮烈な印象を残したのが、e:HEVの仕上がりだった。現行型シビックでデビューした最新のe:HEVは、新開発された2Lエンジンが生み出すパフォーマンスを生かすことで、ノイズやバイブレーションのレベルが格段に低くなったほか、その静けさを保ったまま力強い加速感を示してくれる。とりわけ、アクセルペダルを踏み込んだ直後の、トルクの立ち上がり方が俊敏なことには驚かされた。前述のとおり、1.5Lエンジンのレスポンスも良好だったが、e:HEVはそのさらに上をいく感じだ。

ハンドルに伝わってくるパワートレーンのバイブレーションがエンジン車よりも一段と抑えられている点も印象的だったが、それと並んで驚きだったのは、エンジン走行モードとなっても、まったくといっていいほどハンドルからバイブレーションが感じられなかったことにある。

ホンダ独自のe:HEVは、一般的なシリーズハイブリッドとは異なり、高速走行時にはエンジンと前輪をメカニカルに接続して効率をさらに高める点に特徴がある。これがエンジン走行モードだが、エンジンと前輪がつながれば、エンジンの振動が前輪経由でハンドルまで伝わってきたとしても不思議ではない。ところが、これが実質的に皆無なのだ。

つまり、レスポンスの良さだけでなく、静粛性やバイブレーションの小ささでもe:HEVには見逃せないメリットがあるのだ。

▶▶▶次ページ:総走行距離650kmのロングドライブで感じたことは……。

身体の一部のようになってくれるSUV
e:HEV Zのハンドルを握りながら次に目指したのは、駿河湾に鋭く突き出た御前崎の、とある駐車場。ここで美しい夕景を堪能したあと、取材班は静岡市中心部のホテルに移動した。静岡県下で有名な“あの”レストランで、肉汁たっぷりのハンバーグに舌鼓を打ったのである。

翌日は東名高速を使って一路、都内へと向かったのだが、総走行距離650kmにも及ぶロングツーリングを通じて、私にはZR-Vのキャラクターがより明確になったように思えた。それをひと言で説明すれば、「足にぴったりとフィットする良質なランニングシューズのようなSUV」となる。

車高が高く、着座位置も高めなSUVは、ドライバーとクルマの距離感が遠くになりがちである。しかし、ZR-Vは“やや硬めだけれど心地のいい足まわり”を採用することにより、クルマとドライバーの距離をぐっと縮めることに成功。あたかも、足にぴったりフィットするランニングシューズのような感覚をドライバーに与えてくれるのだ。

そして、このフィット感が、ロングドライブでも疲れにくいキャラクターにも結びついているのだろう。というわけで、ZR-Vは「身体の一部のようになってくれるSUV」をお探しの方にはお勧めの1台である。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

ホンダ ZR-V X FF 主要諸元
●全長×全幅×全高:4570×1840×1620mm
●ホイールベース:2655mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1496cc
●最高出力:131kW(178ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1700-4500rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・57L
●WLTCモード燃費:14.6km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):304万9200円

ホンダ ZR-V e:HEV Z 4WD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4570×1840×1620mm
●ホイールベース:2655mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●総排気量:1993cc
●最高出力:104kW(141ps)/6000rpm
●最大トルク:182Nm(18.6kgm)/4500rpm
●モーター最高出力:135kW(184ps)/5000-6000rpm
●モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・57L
●WLTCモード燃費:21.5km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):421万9600円

[ アルバム : ホンダZR-Vで行く日本自動車紀行2023 はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Motor Magazine編集部
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