どんどん様変わりする自動車業界。企業の動きやクルマの評価など、気になることがたくさん出てくる。ならばその道のプロ・アマに聞いてみよう! というワケで7人の自動車評論家に400字でスパッと説明してもらった。クルマのこと、メーカーのこと、自動車業界のこと、教えてください!
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これぞ隠れた名車!! トヨタ アベンシス 欧州仕込みの実力と悲哀 【偉大な生産終了車】
※本稿は2019年11月のものです
解説する人:国沢光宏、岡本幸一郎、鈴木直也、渡辺陽一郎、竹岡圭、桃田健史、高山正寛/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年12月10日号
■EVなんてどれも同じような気が…… 走りの個性や楽しさは主張できるのですか?
(説明する人/国沢光宏)
今まで数多くの電気自動車に試乗してきたけれど、興味深いことに個性や味は相当違う。もっと言えば、日産の同じ現行リーフですら、バッテリー容量40kWhのタイプと62kWhのタイプでずいぶん違います。
ましてやテスラのモデル3やモデルS、ジャガーIペースなど、キャラクターから走りの質感に至るまで普通のガソリン車と同じくらいの差があるのだった。パワーユニットより車体技術やサスペンションで味は出る?
考えてみたらガソリン車だってユックリ走っていれば、エンジンの音や振動の相違点などほとんど感じ取れないレベルだと思う。
どこで違いを感じているかといえば、ステアリングフィールやシートの座り心地、サスペンション起因の乗り心地かと。はたまた航続距離や絶対的な動力性能の差も潜在的な個性になっている。
私がEVレースに使っているリーフ、サスペンションを全面的に変更したら別のクルマになりましたよ。
今年1月に追加された「+」も好評な日産リーフ
■トヨタは仲間づくりに余念がありませんが、その本当の狙いはなんなのでしょう?
(説明する人/桃田健史)
日本の自動車メーカー各社は、クルマの開発と製造コストの低減で「トヨタと組むのが得策」と考えている。
自動車産業はいまだに、大量生産大量商品というビジネスモデルであり、株式市場における企業としての評価も、販売台数における総売り上げ高が直結する。
そのうえで日系メーカーの場合、新車価格が100万~400万円程度がボリュームゾーンに集中しているなか、近年は衝突安全技術や高度運転支援システムなどコストアップ要因が増えているにもかかわらず、大幅な価格上昇が設定できず、利益が圧迫される状況にある。
そうなると、おのずと日系最大手のトヨタが事実上の標準化であるデファクトスタンダードを狙いやすくなる、という産業構造変革が進む。
そうしたクルマという母体を軸に、電動化、コネクティビティ、自動化、シェアリングという次世代自動車産業としての連携でも、トヨタ中心の図式が組みやすくなる。
■豊田章男社長が宣言する「トヨタはクルマを売るだけの企業でなくなる」。その具体的な中身を教えてください
(説明する人/鈴木直也)
MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という言葉がある。字面どおり解釈すれば「移動をサービスとして提供する」だから、電車やバスなどの公共交通機関を思い浮かべる。
しかし、この新語の意味するところは「自動車メーカーもいずれクルマを売るのではなく移動サービスを提供する会社になる」という予言だ。
手軽なカーシェアリング、ウーバーなどのシェアライド、自動運転車による新サービスなど、クルマの新しい使い方が広がってくれば、新車を買ってくれるユーザーは確実に減るだろう。
電動化だけが「100年に一度の変革」ではない。クルマの使い方そのものが大きく変わろうとしている時代にトヨタがどう対応するか。
自動運転EVである“e-Pallet”の開発や、ウーバーへの10億ドル出資、ソフトバンクと組んだコネクテッドのインフラづくり“MONET”など、急ピッチで進む新事業にトヨタの危機感が表われている。
前項の内容もMaaSに関連したものであることは疑いようがない。性急な感も受けるが…
■モーターショーではどこもEVをアピールしていたのに、スバルは今もボクサーエンジンがウリで大丈夫?
(説明する人/桃田健史)
スバルとしては、EVについて「いま、自分たちが発言するタイミングではない」と考えているはずだ。
背景にあるのが、トヨタが主導して日系自動車メーカー各社が共同で企画開発を進めているEVプラットフォームだ。スバルは軽自動車部門の廃止など、開発リソースを絞る戦略のなかで、EVはプラグインハイブリッド車など電動化技術についてはトヨタとの連携をベースとする動きに転換した。
スバルにとって電動化は、世界市場で最も販売台数が多い北米での、カリフォルニア州を中核とするゼロ・エミッション・ヴィークル(ZEV)規制法への対応が最優先となる。そこに、ほかのメーカー同様に欧州でのCO2総量規制対応が控えている。
こうした電動化技術をトヨタ協業で徹底することで、限られた開発リソースを当面はスバルの真骨頂であるボクサーエンジンに注ぎ、スバルというブランド価値の維持に務めることになる。
東京モーターショーでは次期レヴォーグが主役でEVはアピールしなかったスバル
■日産の新体制でルノーとの提携は強化される? それとも、その逆?
(説明する人/国沢光宏)
日産としちゃ少しでもルノーと離れたいところ。一方、ルノーからすれば日産の技術と、日産の稼ぎがナニより重要。今や技術も収益もルノー単独だと生きていけない状況なのだった。
当然ながらルノー側は日産をコントロールすべく全力で根回ししようとしている。そして日産はルノーの影響力をなくしたいと考えていることだろう。落としドコロは家庭内別居か。距離を置き、お互いメリットあることだけで、付き合えばよい。
本来なら政治力あるのはルノーのほうなのだけれど、興味深いことに「お家騒動」という点で日産と同じくらいダメダメだったりして……。
ゴーンさん抜けたら、ルノー内部とフランス政府でグダグダの足の引っ張り合いになってしまっている。日産を攻めるどころじゃない。
ということで、日産からすれば「時間稼ぎ」になってます。この間に日産も内部紛争を終わらせ、盤石な体制を作るべきだ。ルノーの影響力低下が実現できるか?
今月12月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に正式就任した日産の内田誠氏
■クルマのコネクテッド機能。どういうことができるのか? 5Gでどうなる?
(説明する人/高山正寛)
総務省の定義でも「ICT(情報通信技術)端末としての機能を有する自動車」と記載されているが、クルマと外部が繋がることが基本的なコネクテッドの考え方だ。
これまでも通信を活用して渋滞情報をはじめ、ニュースや天気予報などを得ることは可能だったわけだが、これからは「双方向で大容量のデータを活用する」がキーワードになってくる。
自分の走行情報などをクラウドに集めて、そこからAIなどを活用し分析、数多くの車両に配信することで今まで以上に緻密なデータが取得できる。
この技術自体は将来的には自動運転にも活用できるもので、その鍵を握るのが今後日本でも急速に発達するであろう次世代通信規格である「5G」だ。
5Gはどうしてもその速度の速さだけがクローズアップされがちだが、データが遅延せず同時接続が可能な点もポイント。
車両のほかにも乗員の生命を守るセキュリティ機能の進化もコネクテッドの大きな役割なのである。
■結局のところ、緊急自動ブレーキはどこの自動車会社のものがいいですか?
(説明する人/国沢光宏)
今や自動ブレーキは当たり前の装備になっているけれど、依然としてけっこうな性能差がある。特に違うのがクルマの陰から出てくる歩行者に対して止まれる速度と、夜間の歩行者認識性能です。
今まで「ユーロNキャップ」や日本の「Nキャップ」が行った試験結果を見ると、安定していいリザルトを残しているのはモービルアイの最新システム使った車種であります。このメーカーのシステム、常時進化しているのだった。
ひとつのカメラでシステムを構築しているのだが、2013年くらいまではアイサイトに勝てなかった。されど最新のトリカム(3眼カメラ)を使ったシステムは圧倒的に優位。
そんなモービルアイに一目置かれているのが日産だ。ということで、モービルアイ使ってる日産とマツダ(ホンダも新型フィットからモービルアイです)が優位。
大いに頑張っているのはトヨタの新世代システムである。結論、現状の日本車なら日産とマツダから選べば安心です。
「現状、日産とマツダが優位!」と国沢氏。日産スカイラインにも最新装備が備わっている
■あおり運転に遭わない運転(方法)。端的に400字でまとめて教えてください!
(説明する人/渡辺陽一郎)
あおり運転に遭わない方法は、後方を頻繁に確認することだ。
高速道路の追い越し車線を走行中に速いクルマが来たら、なるべく早く道を譲る。左車線が混んでいたら、追い越し車線を走りながら左側の方向指示器を点滅させ、道を譲る意思を示す。気の短い後続車両のドライバーを、イライラさせなければよい。
一般道路や渋滞で割り込んでしまった時は、手を上げて「ごめんね」と合図したり、ハザードランプを1~2回点滅させる。
通常の速度で走る時に点滅させると、誤解を生んで危険だが、低速走行中に1~2回点滅させる程度なら問題ないと思う。それで後続ドライバーの気が収まり、無理な運転をさせないですめば明らかに安全性が高まる。
要は自分のクルマだけでなく、周囲のクルマの流れまで滑らかにする運転を心がければ、“危険因子を持つドライバー”などの反感を買わず、自分のクルマの周辺の安全まで高められる。
■ズバリ、今一番走りが楽しいクルマは何? なぜそう思うのかの理由とともに教えてください
(説明する人/岡本幸一郎)
なかなか、これだ! という1台に絞り込めないけど、最近乗ったなかでは、BMWの8シリーズが抜群にヨカッタ!
でも、これでは価格がお高いので、アルピーヌA110を。約800万円から……。これも正直、お高いですよね。
では、ぐっと価格を下げた日本車ということで、458.4万円のシビックタイプRを僕は推したい。日本車にしては高いけど、このクルマを推したい理由があります。
とにかくこのクルマ、エンジンもハンドリングも超絶スバラシイのですよ。レスポンスがよくてパワフルなエンジンも、それを引きだす6MTのシフトフィールも最高! サウンドもイイ!
岡本氏推し! 一番走りが楽しい日本車はシビックタイプR。こりゃもう乗って試すしかない!?
さらに、本来後輪駆動好きの筆者でも感心するほどハンドリングも楽しい。空力もいかにも効いていそうで、グリップ感が高くて意のままに操れます。
しかもこのクルマ、高性能車でありながらシビックの一員らしくコンパクトカー的な手の内で操れるような一体感も。
まもなく販売終了というのが、残念でなりません……。
■今時、女のコにモテるクルマなんて存在するのかなぁ?どう思います?
(説明する人/竹岡圭)
女のコに聞いた話です。
「クルマを熱く語る男は正直キモいですよねぇ。特にスポーツカーとか、意味わかんない。でも私がスポーツカー乗るのはいいんですよ。映えるし。でもデートとか行くならやっぱSUVかな。
周りもよく見えるし、広いから居心地いいし、嫌味もないし。男友達だったらミニバンですね。いっぱい乗れるし、荷物載るしで、やっぱ便利」とのこと。
さらに聞くと
「古いクルマとかもオシャレでカッコイイけど、それって私が乗るのが基準なんですよねー。乗せてもらうなら新しくてキレイなほうが、やっぱ快適~」だそうです。
パワートレイン的には「正直よくわかんないからどっちでもいいけど、燃費よくて静かなほうがいいかなー。あと臭くないやつ」らしいので、EVやHVのSUVっていうのが結論でしょうか。
EVのSUVというと東京モーターショーで発表されたマツダMX-30も“モテグルマ”なのかッ!?
ちなみに装備的には「シートヒーターはマストですね。あとは足伸ばせたらとかー、えっ⁈ マッサージとかもあるんだ。それは嬉しいかもー。あとスマホ充電したいです」。
なるほど! 男性諸君頑張ってください!
■来年秋開催のラリージャパン。今回のラグビーのように「興味なかった人」にも浸透する可能性はありますか?
(説明する人/国沢光宏)
日本勢が大活躍するまでラグビー熱は“ほぼ”なかったといっていい。けれど勝ち続けるやドンドン盛り上がっていった。負けたら急速にトーンダウンするあたりに寂しさを感じますが。まぁ、ニワカの皆さんはそんなモンです。
おっとWRCですね。日本開催が決まった現在も、あまり盛り上がっていない。おそらく来年11月の開催までこんな感じだと思う。しかし、始まるや愛知と岐阜でさまざまなことが起きるだろう。
皆さん考えているよりWRCファンって多い。開催地についちゃお祭りになる。加えて広域を走り回るラリーは多くの人の関心を引く。初回終わってみたら「けっこう人気あるのね!」。
ラグビーのワールドカップと違い、少なくとも3年連続して日本で行われるため、徐々に盛り上がっていくことだろう。3年後は大賑わいするはず。そして10年間くらいは続く可能性大。
日本は、世界有数の素晴らしいWRC開催地になると予想します。
ラグビーの次はラリーブームだ! すくなくとも3年連続で日本開催されるので大盛り上がり確実!
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