直6もV12もエンジンの信頼性は高い
ジャガーXJ6の直列6気筒エンジンと、XJ12のV型12気筒エンジンは、正しくメンテナンスし定期的に乗っていれば信頼性は高い。寿命を伸ばすため、ラジエタークーラントは腐食防止剤を含む高品質なものを使用し、定期的に交換したい。
【画像】当時世界最高のサルーン ジャガーXJ6/XJ12 Mk2とMkX、Eタイプ 21世紀のXJも 全110枚
年間の走行距離が短いとしても、定期的なオイル交換も必須といえる。クーラントもオイルも、古いものは良くない影響を及ぼすことが多い。長期間放置されてきたような例にも注意したい。
直6でもV12でも、エンジンブロックの後ろ側からオイル漏れしていないか、しっかり確かめたい。駐車している場所の路面が、不自然に黒ずんでいる場合は喜ばしくない兆候といえる。
リア側のクランクシールが弱点で、ここからオイル漏れしている場合は、エンジンを下ろす必要がある。分解してシールを交換することになり、かなりの高額が請求されるはず。付随して違う不具合も発見されれば、そのぶん作業もコストも増えるが。
特に直列6気筒のXKユニットでは、エンジンオイルが滲んでいるのは珍しくない。それでも、漏れている量によって健康状態は異なる。排気ガスが青白く煙っているなら、エンジン内部の摩耗が進行していることを示すことが多い。
後期型ほどメカニズムの複雑さが増す
過度な振動や機械的な異音は、フロント側のタイミングチェーンが原因という例が珍しくない。若干のノイズは許容範囲だが、ひどい場合は早めに交換したい。テンショナーが故障すると、深刻なダメージをエンジンに与えてしまう可能性がある。
カムのタペットシムは調整が難しいが、異音や振動の原因の1つになる。オイル交換を怠ると、カムシャフトが急速に摩耗してしまう。山が減ると、パワーが大幅に落ちる。
既に最終年式でも、生産から約30年が経過している。タイヤの製造年や銘柄、ひび割れなどの状態にも注意したい。
初期のシリーズ1やシリーズ2に適合する、ダンロップSPスポーツ・アクアジェットは、新品でもさほど高くない。もっとお手頃な銘柄も沢山出回っているものの、ジャガーのサルーンには適さない。
XJシリーズは新しい年式になるほど、電気系統などメカニズムの複雑さが増していく。不具合を解決するための費用も、相応に高くなってしまう。
ボディサイズが大きいため、自宅の駐車場に収まるかも事前に確かめたい。ちなみに、デイムラー版もブランド違いの兄弟モデルとして存在していた。
購入時に気をつけたいポイント
ボディとシャシー
バンパー裏のバランスパネル、ラジエターのクロスメンバー、ボンネットの縁やヒンジ、ヘッドライト周辺、フェンダー、サイドシル、フロアパン、シャシーレッグ、ドアの底部などが弱点。燃料タンクやクロームメッキ部品の状態も確かめたい。
サイドシルのサビが悪化したり、補修が充分でない場合は、リア・トレーリングアーム・マウントの取付部分も弱くなる。最悪、完全に外れてしまう。サンルーフやフロントガラスの縁もチェックポイント。
エンジン
傑作といえるV型12気筒エンジンは、直列6気筒と並んで静かで滑らか。完璧にメンテナンスされていれば、リビルドまで24万km以上は耐える。排気ガスの曇り具合や、ガスケットの状態、オーバーヒートの痕跡も確かめたい。
燃料系やバキュームシステムは複雑。整備記録を確かめ、オイル漏れや異常な振動がないか観察する。
トランスミッション
滑らかに変速できるか、異音が出ていないか、試乗で確認したい。キックダウンが正常か、フルードが黒ずんでいないかも確かめる。
初期のボルグワーナー社製ユニットは、そもそも変速がぎこちなく、10万km程度でリビルドが必要になることも。後期型のV型12気筒に組まれた、GM社製のGM400ユニットは堅牢。
インテリア
XJシリーズをちゃんと味わうなら、完璧なインテリアが望ましい。レザーやウッドパネルの状態、スイッチ類などの欠損がないか確かめる。内装のリフレッシュを依頼すると、数1000ポンド(数10万円)は求められる。状態の良い例を選んだ方が得策だろう。
年式が新しくなるほど、電気系統は複雑になる。エアコンやパワーウインドウ、サンルーフなど、すべてが正常に動作するか確かめたい。
サスペンションとブレーキ
リアブレーキとハンドブレーキの調子を確認する。長時間放置されていると固着する場合がある。リビルド費用は安くない。
フロント側はそうでもないが、リアサスペンションのリビルドも高価。すべてのマウントやブッシュ類、ユニバーサルジョイントの状態と異音がないかも調べたい。
ジャガーXJ6/XJ12のまとめ
英国では、XJシリーズの熱心なオーナーズクラブが存在し、部品供給も滞りがない。最も手頃な費用で所有できる、クラシック・スポーツサルーンの1台といっていいだろう。
ただし、ボディやエンジンに目立った不具合を抱えている場合は、高額な出費が必要になる。いつものことだが、状態の良い車両を見つけ、適切なメンテナンスを怠らないことが大切といえる。
良いトコロ
殆どの部品を、英国では安価に入手できる。一般的な維持費用は、そこまで高額にはならない。エレガントなスタイリングは、今でも注目を集める。乗り心地は素晴らしい。
良くないトコロ
中古車での取引価格が低調だったため、少なくない例が長期間放置された状態にあった。それに気付かず購入すると、不具合の連鎖に悩まされることも。燃費は悪い。部品の品質にはばらつきがあるようだ。
ジャガーXJ6/XJ12(1968~1992年/英国仕様)のスペック
英国価格:1万4495~2万5995ポンド(1984年時)
生産数:9万8227台(シリーズ1)/9万1227台(シリーズ1)/13万2952台(シリーズ3)
全長:4813-4959mm
全幅:1765-1770mm
全高:1359-1372mm
最高速度:188-218km/h
0-97km/h加速:7.4~11.2秒
燃費:4.2-8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1537-1920kg
パワートレイン:直列6気筒2792・3442・4235cc自然吸気/V型12気筒5343cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/5150rpm-303ps/5500rpm
最大トルク:20.7kg-m/4250rpm-43.8kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル/3速オートマティック(後輪駆動)
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