ロールス・ロイスは、10月28日(現地時間)、新型ゴーストに「ブラック・バッジ」モデルを追加すると発表、受注を開始した。同モデルは、ポスト・オピュレンス(脱贅沢)のデザインをブラックで表現したロールス・ロイス史上、最もピュアなブラック・バッジ・モデルとしている。
ロールス・ロイスには、顧客との間に独特の理解がある。ロールス・ロイス・が顧客ひとりひとりと親密な関係を築くことで、極めて高い地位に立つこうした顧客の審美眼、妥協なきライフスタイルへの欲求、変化する味覚のパターンといった事柄に関する深い理解を得ることができる。このような理解と、ロールス・ロイスの「ラグジュアリー・インテリジェンス・ユニット(高級品調査部門)」が提供するブリーフィングがあって初めて、ブランドとして適格な製品を生み出す能力が得られる。ブラック・バッジは、まさにその一例である。
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ロールス・ロイスは、破壊者つまり、ルールを破り、リスクを冒し、古い因習に挑んで成功を収めた、反逆の精神を持つ方々を、常に魅了してきた。2020年代のこうした顧客たちは、自身の意志で「ラグジュアリー」を定義している。スーツではなくストリート・ウェアを身に付け、銀行ではなくブロックチェーンを利用し、デジタルを駆使してアナログの世界に影響を及ぼしている。このように生きることで、自分の感性に共鳴する新たなラグジュアリーの基準を生み出している。その新しい基準とは、ダークな美学、主張するキャラクター、大胆なデザインである。
ブラック・バッジは、ロールス・ロイスの分身として大きな成功を収めており、現在、世界のロールス・ロイスの受注に占める割合は27パーセントを超えている。ブラック・バッジッジは、このクルマのインテリアに見られる無限の可能性をあらわす数学記号に象徴されている。「レムニスケート」とも呼ばれるこの図形は、かつてマルコム・キャンベル卿がロールス・ロイス・エンジンを搭載して水上速度記録を樹立したモーターボート「ブルーバード 」に掲げられたシンボルであり、ロールス・ロイスのデザイナーは、自分たちのあくなきパワーの追求を反映させるために、このマークをブラック・バッジ・モデルに採用したのである。
ロールス・ロイスは、2016年にブラック・バッジ・モデルとして「レイス」と「ゴースト」をデビューさせ、続く2017年には「ドーン」を、さらに2019年には「カリナン」を発表した。本日、新しいポスト・オピュレントの表現としてのブラック・バッジがその家族に加わった。最も純粋で、最高にピュアで、最も技術的に進化したブラック・バッジ・モデル、それが「ブラック・バッジ・ゴースト」である。
ポスト・オピュレンスのダーク・サイド
新型ゴーストは、「俊敏で、控えめで、接続性が高く、余分なデザインのないロールス・ロイス」という顧客の要望に応えて開発されたクルマであり、技術的に最も進んだロールス・ロイスであるばかりか、審美的にも最もピュアなモデルである。このクルマは、発売から12か月間で世界中から3500台以上の受注を獲得し、ロールス・ロイス史上最も飛躍的なスピードで販売された製品のひとつになった。
このクルマは、ミニマリズムと純粋さを徹底的に追求することで、新たなデザインとの対話を始めた。ロールス・ロイスのデザイナーによって「ポスト・オピュレンス(脱贅沢)」と名付けられたこの美しさの追求は、リダクション(削減・縮小)とサブスタンス(実質)を特徴としている。そのために優れた素材を厳選して使用し、控えめながらも知性を感じさせるデザインとなっている。
しかしながら、ミニマリズムを愛し、素材自体を重んじる顧客の中には、こうしたことに反発する集団が存在し、色としての分類について議論が交わされるほどの純粋なブラックでゴーストを永遠に覆い隠すことで、ゴーストの破壊的な側面を引き出そうとした。ブラック・バッジ・ゴーストは、このような顧客たちの要望を反映したクルマなのである。このクルマはポスト・オピュレンスのダーク・サイドに立つ、極限状態のミニマリズムを表現している。
エクステリア
顧客は44000色ものカラー・パターンの中から自由に色を選ぶことができ、また自分だけのオリジナルの色を作ることもできる。しかし、ゴーストにダークな表現を求めた顧客の圧倒的多数は、シグネチャー・カラーのブラックを選択した。自動車業界で最もダークなブラックを作るため、45キログラムもの塗料を霧状にしてホワイト・ボディに電着塗装し、オーブン内で乾燥させる。その後、2層のクリア・コートを施し、 4名の職人たちによって手作業で磨き上げられ、ゴーストの特徴であるハイグロス・ピアノフィニッシュを実現している。
3時間から5時間を要するこの作業は大量生産のクルマには決して行われない手法であり、自動車業界ではロールス・ロイス以外に実現することができないほど強烈な印象をもたらす。この深みのあるブラックは、顧客の希望でハイ・コントラストな手塗りのコーチラインを描くための完璧なキャンバスとしての役割を担っており、ブラック・バッジの「ブラック・アンド・ネオン」という美学は、このロールス・ロイス・モーター・カーズ・ファミリーの鮮やかさを特徴づけるものとなっている。
このドラマチックなコーチワークに合わせるように、ロールス・ロイスのデザイナー、エンジニア、職人からなるビスポーク・コレクティブが協力し合い、全面的にカスタマイズ可能なプロセスを開発した。その結果、磨き上げられたスピリット・オブ・エクスタシーやパンテオングリルなど、ロールス・ロイスの特徴的な部分でさえも覆すことができるようになった。
これらのパーツは単に塗装を重ねるのではなく、もともとのクロームメッキ工程に特殊なクローム電解液を導入し、ステンレス・スチール製の下地に共析させてダーク仕上げとしている。表面の最終的な厚さは髪の毛の100分の1の太さに相当する1マイクロメートルである。この製法で作られたパーツを手作業で精密に研磨し、ミラー・ブラック・クローム・フィニッシュとしてブラック・バッジ・モデルに搭載される。
エクステリアの仕上げに、ビスポーク21インチ・コンポジット・ホイール・セットが装着される。ブラック・バッジ・ゴースト専用にブラック・バッジ・ハウス・スタイルのデザインが施されたホイールは、そのバレル部分には22層のカーボン・ファイバーを3方向に交差させて配置したものを使用しており、リムの外周で折り返すことにより合計44層のカーボン・ファイバーとなって強度を高めている。
3D鍛造アルミニウム製ハブは、航空宇宙産業で使用するグレードのチタン製ファスナーでリムに固定され、ダブルRのモノグラムが常に直立するロールス・ロイスの特徴的なフローティング・ハブ・キャップを取り付けて完成される。素材の特性と表面効果を生かすため、薄く着色したラッカーで表面を保護しながらこのホイール独自のカーボン・ファイバー構造が見えるようにして、技術的な複雑さを表現している。
インテリア
先進の高級素材を使って丹念に作り込まれたインテリアは、スイートと呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出している。その素材はブラック・バッジ・ゴーストのドラマチックでメカニカルな意匠を想起させるが、その一方、ゴーストのポスト・オピュレンスというデザイン哲学に忠実な素材でもある。これは決してあからさまな主張ではなく、本物であることと素材の本質によって定義されている。この精神に基づき、カーボン・ファイバーとメタリック・ファイバーを使った深みのあるダイヤモンド・パターンの複雑かつ繊細な生地が、ロールス・ロイスの職人たちの手によって生み出された。
インテリア・パーツのベース部分に複数のウッド・レイヤーを圧着させ、ベース層の最上部にはブラックのボリバル・ベニアを使用している。これは、その後に加工されるテクニカル・ファイバーの層のための暗色の基盤となる。レジン・コーティングされたカーボン・ファイバーと、それとは対照的にメタル・コーティングされた糸をダイヤモンド・パターンで織り込んだ生地を、手作業で部品との位置を合わせて貼り付け、立体感を演出している。この極めて特殊なベニヤを固定するため、各部品を100度の温度下で1時間圧着して硬化させる。その後、サンド・ブラストを使用して、6層のラッカーの鍵となる面に手作業でサンディングとポリッシュを行ったのち、車両に組み込まれる。
顧客の注文に応じて、個別型リヤ・シートのテクニカル・ファイバー製「ウォーターフォール」部分には、ブラック・バッジ・ファミリーのモチーフである無限の可能性をあらわす数学記号「レムニスケート」があしらわれる。ブラック・バッジ・ゴーストのシャンパン・クーラーのリッドには航空宇宙グレードのアルミニウムを使用しており、ここに描かれるシンボルは淡く着色されたラッカーを6層重ねたうちの3層目と4層目の間に挟み込まれており、テクニカル・ファイバー・ベニアの上で記号が浮かんでいるような錯覚を招く。
ブラック・バッジ・ゴーストのノワールな雰囲気をさらに高めるため、デザインチームは金属光沢の部品を減らす選択をした。ダッシュボードや後部座席のエア吹き出し口のサラウンドは、経年劣化や反復使用によって部品が変色したり変質したりしない数少ない金属着色法のひとつである物理蒸着法(PVD)を使って暗色化されている。
ポスト・オピュレンスの原則であるシンプルさは、ブラック・バッジ・ゴーストの時計のデザインにも生かされている。車載時計の指針の先端と12時、3時、6時、9時のアワー・マークだけが落ち着いたクローム仕上げになっており、驚くほどミニマルな時計に仕上がっている。ブラック・バッジ・ゴーストには、顧客の審美眼に合わせてこの他にも時計をご用意している。
この時計の脇には、「ゴースト」と共にデビューを果たした世界初のビスポーク・イノベーションである「イルミネーテッド・フェイシア」がある。このフェイシアには850個を超える星に囲まれたレムニスケートが幽玄に輝いている。ダッシュボードの助手席側に配置されたこの星座とモチーフは、ルームライトが点灯していないときは見えないようになっている。
「ゴースト」と同じく、このレムニスケート・モチーフのイルミネーションはフェイシアの上部と下部に取り付けられた152個のLEDからなり、それぞれが発する色はキャビンの時計や計器盤の照明に合わせて念入りに調整されている。レムニスケートを均等に照らすため、厚さ2ミリのライトガイドを使用しており、その表面には9万個を超えるドットがレーザー・エッチング加工されている。これにより光が均等に分散されるだけではなく、フェイシアに沿って視線を動かしたときに、光がきらめいて見える効果があり、シューティングスター・スターライト・ヘッドライナーの繊細な輝きが反映されている。
エンジニアリング
ブラック・バッジは単に美しいだけではなく、経験である。このクルマを依頼した顧客は、ブラック・バッジ・ゴーストのビスポークへの対応を、デザイン・ルームからエンジニアリング部門にまで広げることを求めた。ロールス・ロイス・ブランドが持つリラックスできる乗り心地や徹底した音響環境を損なうことなく、ブラック・バッジ・ゴーストの意図した外観に似合う鮮やかなドライバーの個性を創り出すため、デザイナー、エンジニア、職人からなるビスポーク・コレクティブが協力して取り組んだのである。
力強いキャラクターの鍵を握るのは、ファントムで初採用となった、ロールス・ロイス独自の「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」と呼ぶオールアルミ製スペースフレーム構造である。この下部構造は、極めて高いボディ剛性を実現しているだけでなく、その柔軟性と拡張性によって、ゴーストに四輪駆動システムや四輪操舵システム、また受賞歴のある「プラナー・サスペンション・システム」を搭載することを可能にする。ブラック・バッジに搭載するにあたり、これらのエンジニアリング・クオリティを全面的に見直し、より容量の大きなエア・サスペンションを組み合わせることで、激しいコーナリングの際にもボディのロールを抑える。
ロールス・ロイスのツイン・ターボ付き6.45リッターV12エンジンの能力は十分であると判断した。しかし、この高名なパワー・ユニットの柔軟性を活かしてさらに29PSを上乗せし、最高出力600PSを実現した。加えてトルクも50Nm上乗せして900Nmとすることで、途切れることのないシングル・ギヤのような走行感覚を強調している。
また、パワートレインは、トランスミッションとスロットルの特性にも手を加え、エンジンの増大されたパワー・リザーブをさらに活かすようにビスポークに調整している。ZF製8速ギヤ・ボックスと、フロントおよびリヤ共に操舵システムを備えたアクスルが協調して動作することで、スロットル操作やステアリング操作に応じたドライバーへのフィードバックのレベルを調整する。
他のブラック・バッジ・モデルと同様に、ギヤ・セレクト・レバーにある「Low(ロー)」ボタンを押すと、ブラック・バッジ・ゴーストの一連のテクノロジーが全面解除される。これにより、まったく新しいエグゾースト・システムを介してエンジンの秘められたパワーをさりげなくアピールする。最大トルク900Nmは、わずか1700rpmという低エンジン回転域から発生する。また、ロー・モードで走行中にアクセルを90パーセントまで踏み込むと、変速の速さが50パーセント増しとなり、ブラック・バッジ・ゴーストの豊かなパワーを瞬時に引き出すことができるようになる。
ブラック・バッジ・ゴーストの能力を引き出す際の信頼性を高めるため、ブレーキの作動ポイントを高めにしてペダル・ストロークを減らしている。従来の新型ゴーストは、このブラック・バッジの分身の出力が増大していることを考慮しても、過酷な状況下で十分な制動力を発揮できる強固なブレーキ・ハードウェア・パッケージを搭載している。しかしながら、いずれ確実に起きるブラック・バッジ・ゴーストへのさらなる期待に応えるため、ブレーキ・キャリパーの塗色を新たに開発し、激しいブレ―キングによる高温にも対応している。
この新型ブラック・バッジ・ゴーストは、先行予約を受け付けている。
関連情報:https://www.rolls-roycemotorcars.com/
構成/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
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