ビッグマイナーチェンジでアルファードを追撃!?
2020年11月5日にホンダ・オデッセイがマイナーチェンジを行い、翌6日から販売を開始しました。今回のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインの刷新や内外装の質感向上が図られています。Lクラス以上のミニバンといえば、現在アルファード一強状態。ひと回り小さなボディとはいえマイナーチェンジが施されたオデッセイはどんな魅力を備え、ライバルたちに挑むのでしょうか。
ホンダ・オデッセイがマイナーチェンジ! 内外装の大幅刷新と新機能の採用で魅力を高めた
フードを70mm持ち上げ押し出しが増したフロントグリルを装着
今回のビッグマイナーチェンジで多岐にわたる改良が加えられましたが、一番大きな変化はエクステリア。「スタイリッシュプレミアム」をテーマに、フロント&リヤまわりの造形に大きく手が加えられました。
フロントマスクは、ステップワゴンやインサイトなどのホンダ車に通じる薄型のヘッドライトと押し出し感がある厚めのグリルを採用。新デザイン採用のため、フードはマイナーチェンジ前より70mm持ち上げられる大幅改良となりました。ヘッドライト上部にはシーケンシャルターンランプを採用したウインカーを配置。Lクラスのミニバンに相応しい装備を身につけています。
また、リヤのコンビランプはフロント同様にフルLED化が行われ薄型化されました。ただ、グリルの大型化などデザインを大きく変えたものの、ライバルとなるトヨタ・アルファードや日産エルグランドほどの威圧感を備えてはいません。オラつきよりも大人らしさにこだわったとのことですが、このあたりは賛否が分かれそうです。
エクステリア同様に、インテリアも変更が加えられました。フロントマスクほどのデザイン変更はありませんが、インパネ上部のソフトパットの位置が変更になるなど意匠をチェンジ。
その他、メーターパネル内の液晶パネルが3.5インチから7インチに拡大したこと、運転席側の収納式ドリンクホルダーを追加、リッド付きインパネアッパーボックスの設定などが行われ、新たなボディーカラーのオブシダンブルー・パールが加わりました。
ジェスチャーコントロール・パワースライドドアを日本初採用
機能や装備の変更・追加も行われています。一番のトピックスはパワースライドドアのドアノブに触れることなく流れる光に手をかざすことで行うことができるジェスチャーコントロール・パワースライドドアの採用でしょう。日本初となるこの装備は、キーを持った状態でクルマに近づくとLEDが点灯。スライドドアのセンサー部の青い横長の光が手をスライドするように演出します。流れている青い光に手をかざし、光が全体に流れた後、光に沿って手を動かすとドアがオープン、そんな仕組みとなっています。
また、リヤテールゲートにリヤバンパーの下に足先を出し入れすると開閉が可能となるハンズフリーアクセスパワーテールゲートを追加。利便性が大きく向上しました。
その他、パワースライドドアが閉まり切るのを待たずに、ドアクローズ後の施錠が可能となる予約ロックを標準装備。先進安全装備Honda SENSINGに後方誤発進抑制機能が追加されています。
5代目オデッセイの概要をおさらい
現行オデッセイは2013年11月にガソリン車がデビュー。その後、2015年に一部改良で先進安全装備「Honda SENSING」を搭載し、2016年にハイブリッドを追加発売。さらに、今回のビッグマイナーチェンジへと至りました。
5代目となる現行型は3,4代目が採用していた立体駐車場に入る低い全高、さらに初代から受け継がれたヒンジ式リヤドアを捨て、高めの車高とスライドドアを採用し登場しました。室内スペースを優先するユーザーの要望が大きかったことがその要因ともいえますが、捨て去らなかったのが走りの良さ。室内のゆとりと走りの良さを両立すべく当時世界一薄いとされた燃料タンクや断面構造を工夫して超低床プラットフォームを開発。地上290mm~300mmのワンステップフロアとし、全高を高くしつつも重心高は先代比20mmにおさえ、低重心感覚ある走りを実現しました。
また、居住性についても全高を1695mmにまで高めたことで乗降性と居住性が大幅に向上。先代より105mm高いヘッドクリアランスとゆとりあるニースペースを備えた2列目シート、座面面積が大きく拡大し3名乗車時のゆとりも増した3列目シートとLクラスミニバンらしい快適性を備えたのです。
とくにロングスライド機構や背もたれの中折れ機構、オットマンがついた2列目シートのプレミアムクレードルシートは室内空間が拡大したからこそ採用できた特等席。乗員の身体全体を柔らかく包み込むようなホールド性を備え、最大740mmのスライド機構が備わります。
パワーユニットで特筆すべきはエンジンと2つのモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e:HEV」。145馬力を発揮する2リッターガソリンと184馬力を発揮する2つのモーターで構成する「e:HEV」は、「EVドライブモード」、「ハイブリッドドライブモード」、「エンジンドライブモード」とモーター走行を中心とした3つのモードをシーンに合わせて使い分けるのが特徴。
エンジン出力軸とつながっている発電機は常にエンジンとともに回転し、発電機とエンジンとの間には走行用モーターを配置。エンジンによって回される発電機で発生した電気はモーターに送られてタイヤを駆動するシステムです。
優れているのは走行性能だけではなく燃費性能も秀逸。JC08モードで25.2km/L、WLTCモードで20.2km/Lとアルファードのハイブリッド車(JC08モード19.2km/L)と比べ大きく上回っています。
全グレードが走行性能重視の「ABSOLUTE」に統一
パワーユニットはマイナーチェンジ前と変わらず2.4リッターガソリンと2リッターエンジン+2モーターハイブリッド「e:HEV」の2種類。2つのパワーユニットはともに、標準グレード「ABSOLUTE」と上級グレード「ABSOLUTE EX」をラインアップしています。「e:HEV ABSOLUTE EX」以外は8名乗りと7名乗りを用意しました(e:HEV ABSOLUTE EXは7人乗りのみ)。
価格はガソリン車の「ABSOLUTE」が349.5~371.5万円、「ABSOLUTE EX」は381.5~392.94万円。 ハイブリッドe:HEVは「e:HEV ABSOLUTE」が419.8~428.6万円、「e:HEV ABSOLUTE EX」は458万円です。
ライバルと比べオデッセイが備えているものと備えていないもの
オデッセイはLLクラスのトヨタ・アルファード、また日産エルグランドとは厳密に言うひとつ下のクラスに属します。ただし、購買層はこの3車種をライバルとみなしていることが多いため、今回はオデッセイとこの2車を比較してみましょう。まずはボディサイズから。
マイナーチェンジ後のオデッセイは全長4855mm、全幅1820mm、全高1695(4WDは1725mm)。そしてアルファードは全長4950mm、全幅1850mm、全高1935mm。エルグランドが全長4975mm、全幅1850mm、全高1815mm。ボディサイズで見ると、クラスが違うオデッセイの全長がやはり一番短いのがわかりますね。
室内寸法を比較するとオデッセイが室内長2935mm、室内幅1560mm、室内高1305mm。アルファードは室内長3210mm、室内幅1590mm、室内高1400mm、エルグランドは室内長3025mm、室内幅1580mm、室内高1270mmとなり、ここでもオデッセイの室内長が短くなります。
また、パワーユニットはオデッセイが前記したように2.4リッターガソリンとハイブリッド。アルファードは3.5リッターV6エンジンと2.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドの2種類、エルグランドは3.5リッターV6と2.5リッター直4と2種類のエンジンをラインアップしハイブリッドは用意されていません。
先進安全装備の比較はどうでしょう。オデッセイはHonda SENSINGを装備し、衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、渋滞追従機能付ACC(e:HEVのみ設定)、車線維持支援システム、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能を備えています。
アルファードはレーントレーシングアシスト、プリクラッシュセーフティ、インテリジェントクリアランスソナー、インテリジェントパーキングアシスト、全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール(ACC)、アダプティブハイビームシステム&オートマチックハイビーム、ロードサインアシスト(標識認識機能)、リヤクロストラフィックオートブレーキ、デジタルインナーミラー、ブラインドスポットモニター、パノラミックビューモニターと多彩な機能を装備。
エルグランドにはテレビCMなどでおなじみのプロパイロットは装備されていませんが、インテリジェントクルーズコントロール(ACC)、インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)、インテリジェント・エマージェンシーブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、ハイビームアシスト、側方運転支援、インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)+BSW(後側方車両検知警報)、標識検知機能、インテリジェント・アラウンドビューモニター、RCTA(後退時車両検知警報)を備えています。先進安全装備については渋滞追従機能付きでないACCが備わっていないなどエルグランドが一歩劣っていますね。
オデッセイはライバル2車より居住性は若干劣るものの、グレード体系を見ても優れたスポーティな走行性能と燃費性能を備えています。ただ、スポーティなイメージと相反するのがサスペンション。
先代の前後ダブルウィッシュボーンからフロントをストラット、リヤをトーションビームに変更しましたが、実際の挙動やノイズ、乗り心地はライバルと比較し劣っているとは思いませんが、スペック重視のユーザーからは避けられるケースがあるのではないでしょうか。
筆者は以前、ミニバン比率が圧倒的に高いガテン系の人たちを取材したのですが彼らは「オデッセイは(リヤサスが)トーションビームだしなぁ……」と声を揃えて酷評していたことがいまだに忘れられません。
Lクラス、LLクラスミニバンのコアユーザーである彼らのように、けして安くないクルマの確固たるイメージを持っている自動車好きは少なくありません。とくにスポーティなイメージで売るオデッセイの販売がイマイチ伸び悩んでいるのは、このあたりに要因があるのではないでしょうか。
オデッセイはマイナーチェンジで独自路線をさらに突き進んだ
エクステリアデザインの大幅刷新や内外装の質感が向上したオデッセイ。各種魅力が増しています。 今回のマイナーチェンジでアルファードやエルグランドとは違うキャラクターのミニバンであることをより明確に打ち出しましたが、このクラスのミニバンユーザーはブランドイメージを重視する保守的な層が多いことは確か。
果たしてオデッセイの魅力がそんなユーザーに伝わるかに注目です。
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