■至高のパフォーマンスを披露するFF車たち
クルマの駆動方式はFRかFF、4WDがあり、昔はオーソドックスなFRが主流でしたが、後に、FFの利点である広い室内空間が認められると、コンパクトカーを中心にFFが浸透しはじめました。
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しかし、同時にFF車は加速したときに、トラクションがかかりづらいことと操舵輪と駆動輪が共通となりステアリング特性が変わることなどの弱点が露呈し、スポーツドライブには不向きといわれた時期がありました。
その後、シャシやサスペンションの設計技術が進歩したことや、電子制御技術の向上、タイヤ性能の進化で、FFとFRの差は縮まった結果、FF車でも驚異的な加速性能と旋回性能を誇るクルマが多く出現しました。
そこで、FFながら昔では考えられないほどのハイパワーで、とんでもなく速いクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「シビック タイプR」
国民のためのクルマとして「市民の」という意味を持つ名前が与えられたホンダ「シビック」は、初代から一貫してFFを採用しています。
レースでの活躍やよってシビックはスポーツコンパクトの代名詞となり、1997年に「シビック タイプR」がデビューすると、当時の国産FF車の頂点に位置していました。
現行の5代目シビック タイプRでは、巨大なリアウイングやエアロパーツによる迫力ある外観と、専用パーツによりスポーティに演出された内装など、ただのシビックではないオーラを放っています。
また、従来のシビック タイプRが標準のシビックをベースにパフォーマンスを高めたモデルだったのに対して、現行モデルではシビックハッチバックと同時開発することで、標準グレードの走行性能の向上とタイプRの実用性向上が図られました。
エンジンは最高出力320馬力の2リッター直列4気筒ターボを搭載。組み合わされるトランスミッションは6速MTのみと、硬派なクルマに仕上がっています。
2017年4月にはドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」北コースで7分43秒のタイムを叩き出し、当時の市販FF車最速を記録。
一方で、従来からのシビック タイプRと同様に大人4人が乗車できる室内空間があり、3つのドライブモードから「コンフォート」を選べば、街なかでも快適な走りができるようになりました。
なお、シビック タイプRはまもなく販売終了とアナウンスされています。次期型については未定です。
●ルノー「メガーヌR.S. トロフィー」
1995年にデビューした初代ルノー「メガーヌ」は、3/5ドアハッチバックと4ドアセダンのボディバリエーションで、トップグレードには2リッター4気筒エンジンが搭載されていましたが、基本的にはオーソドックスな実用車のイメージでした。
しかし、2代目ではルノーのモータースポーツ部門である「ルノー・スポール」が開発を手掛け、最高出力224馬力を発揮する2リッターターボエンジンを搭載し、シャシやサスペンション、ブレーキも強化した高性能版「メガーヌR.S.」が2004年に追加され、日本でも人気車となりました。
現行モデルは2016年に登場した第4世代ですが、2018年には日本向けに「ルノー・スポール カーズ」と「ルノー・スポールレーシング」が共同開発した「メガーヌR.S.」が追加されます。
メガーヌR.S.は最高出力279馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンと「6EDC(6速DCT)」を組み合わせ、「4コントロール(4輪操舵システム)」や、ハイレベルなロードホールディングを実現した「4HCC(4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)」で高次元のコーナーリングを実現。
2019年4月には、R.S.をベースに大幅な軽量化と空力特性の見直し、足周りを強化した「メガーヌR.S. トロフィーR」が、「ニュルブルクリンク」北コースで7分40秒の市販FF車最速記録を更新しました。
このメガーヌR.S. トロフィーRのDNAを受け継いだ「メガーヌR.S.トロフィー」が、2019年10月31日に日本で発売されました。
エンジンは同じ1.8リッター直列4気筒ターボながら高度にチューニングされ、最高出力300馬力を発揮し、トランスミッションは6EDCもしくは6速MTが選択できます。
さらに強化されたサスペンション、トルセンLSDの採用、軽量化されたブレーキシステムが装備されています。
●プジョー「308GTi byプジョースポール」
2007年にプジョー「307」の後継車として登場した「308」は、3ドアハッチバック、4ドアセダン、ステーションワゴンにカブリオレと、多彩なボディバリエーションを持つクルマでした。
現行モデルは2013年に発売された2代目で、5ドアハッチバックとステーションワゴンの構成となっています。
一見大人しそうな実用車に見える308ですが、WRC、ル・マン、F1と国際格式のレースで活躍する「プジョースポール」のノウハウを注ぎ込んで、スタイルとパフォーマンスを兼ね備えた「308 GTi byプジョースポール」が設定されています。
エンジンは最高出力270馬力を誇る1.6リッター直列4気筒ターボで、ローギアード化された6速MTが組み合わされ、0-100km/h加速は1.6リッターとは思えない6秒という俊足ぶりです。
内装もアグレッシブに進化し、ヘッドアップインストルメントパネルやデジタルタッチスクリーン、スポーティなフィールを生む小径ハンドルなどで構成される「i-Cockpit」を採用。
ほぼ垂直に切り立ったフロントグリル中央に鎮座するライオンエンブレムも、オーナーの所有欲とプライドを満たすものとなっています。
■いよいよファイナルを迎えるか!? 元祖ホットハッチ
●フォルクスワーゲン「ゴルフGTI TCR」
1974年のデビュー以来、世界中で愛され続けているコンパクトカーのフォルクスワーゲン「ゴルフ」は、トヨタ「カローラ」に次いで、車種別歴代総生産台数で世界第2位となっているベストセラーカーです。
初代ゴルフには、元祖ホットハッチである「GTI」がラインナップされていましたが、日本に正規輸入はされず、2代目からGTIが正規輸入されました。
現在のゴルフは2012年に発売された7代目で、2013年に日本でも販売を開始。GTIに搭載されているエンジンは最高出力230馬力の2リッター4気筒ターボで、6速DSGとの組み合わせで伸びやかで力強い加速を実現しています。
そして、すでにゴルフは8代目の発売が決まっており、GTIも遅れて8代目になると予想されますが、7代目の最後を飾るべく限定車「ゴルフGTI TCR」が限定600台で販売されることになりました。
ゴルフGTI TCRは「WTCR(ワールド・ツーリング・カー・カップ)」に参戦するレーシングカーのストリートバージョンとして開発されたモデルで、エンジンはベースの60馬力アップの290馬力にまでチューニングされています。
7速DSGとの組み合わせにより、0-100km/h加速5.6秒を記録するなど、日本でいままでに販売したゴルフGTIのなかで史上最強のモデルです。
ほかにも電子制御油圧式LSDや大径ブレーキディスク、官能的なエキゾーストサウンドを奏でる「アクラポヴィッチ」チタンエキゾーストシステムなどの特別装備を採用し、GTIのパフォーマンスを最大限まで高めています。
●ボルボ「V40 T5 R-Design ファイナルエディション」
ボルボ「V40」は1995年に登場したステーションワゴンです。2012年にスタイリッシュなボディに生まれ変わった2代目が登場し、2013年から輸入されていましたが、残念なことに2019年モデルの在庫をもって新車販売を終了すると発表されています。
そして「V40 T5 R-Design ファイナルエディション」というホットモデルが限定50台で販売され、V40の最後を飾ります。
鋭いハンドリングとステアリングレスポンスを生む専用スポーツサスペンションと、標準仕様より剛性が高められたシャシに、最高出力245馬力を発揮する2リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。
組み合わされたギアトロニック付き8速ATをパドルシフトで操作すれば、パワフルかつ思いどおりの胸躍らせる走りを実現できます。
専用のフロントグリルやフロントバンパー、専用18インチアルミホイールとリアのテールパイプやディフューザーなどでスポーツマインドあふれる外観を演出。
内装もフロントシートヒーター付きの本革/パーフォレーテッドレザーシート、開放感をもたらすパノラマガラスルーフを特別装備するなど、ファイナルエディションに相応しく充実した装備となっています。
※ ※ ※
高性能なFF車が出始めたころは、トルクステアと戦わなければならず「じゃじゃ馬」と評されるクルマが多くありました。
現在ではテクノロジーの進歩により、危なっかしいクルマは皆無といっていいでしょう。
しかし、手懐けられたFF車よりも、昔ながらのじゃじゃ馬に乗るほうが、真のスポーツドライビングを味わえるのではないでしょうか。
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