現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則408】2代目スマートは先代の弱点を修正、扱いやすさが大きく向上していた

ここから本文です

【ヒットの法則408】2代目スマートは先代の弱点を修正、扱いやすさが大きく向上していた

掲載 更新
【ヒットの法則408】2代目スマートは先代の弱点を修正、扱いやすさが大きく向上していた

2007年10月、2代目となる新型スマートフォーツーが日本に上陸している。早過ぎたとも言われる初代の誕生から8年、世界的に見れば思うようには販売が伸びなかった先代からどこがどう変わったのか。Motor Magazine誌では、メルセデス・ベンツ特集の中で、スマートに託された狙いに着目しながら試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

内外装のデザインもサイズもより「フツー」になった
スマートフォーツーが7年ぶりに新しくなった。全体のイメージはキープコンセプトながら、ボディもエンジンも大きくなったのがポイント。バリエーションは先代と同じく、クーペとカブリオのふたつが用意される。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

先に言っておかなければならない。私は先代スマートフォーツーのオーナーである。惹かれたのは、それまでのクルマ造りの概念を覆した発想にあった。2人乗りと割り切り、全長わずか2.5mという超コンパクトなボディに、RR方式も含め、機能をギュッと凝縮して詰め込んでいたからである。他にはないこのサイズ感は、駐車も含め日々の使用に便利この上ない。

ソフタッチ6速シーケンシャルシフトをバイク感覚で操れば、十分流れをリードでき、高速走行もまったく問題ない。それでいて低燃費なのだから、「言うことなし」なのだ。クルマは複数所有しているが、取り回しが楽なので専ら普段の「足」としてスマートを愛用している。

まずはボディサイズのチェックから。全長は180mm拡大している。その内訳は、ホイールベースで55mm、前/後のオーバーハングで65/60mmとなっている。

前者は走行安定性向上のため、後者はクラッシュボックスの増設によるものだ。先代はオーバーハングがゼロに近かったから、ようやくクルマらしいルックスになったと言えるのかも知れない。

全幅は45mm拡大され、全高は10mm低くなった。先代の全高1550mmはタワーパーキング不可のケースもあったから朗報かも。新型は大きくなったとは言え、全長はまだ2.7mでしかなく、全幅も1.6mを切っているから、他にはないスマートならではの超コンパクト感は健在だ。

デザイン的に見れば、フロントは愛嬌ある顔も含め先代の雰囲気を色濃く残し、誰の目にもスマートと映るはず。サイドはリアクォーターウインドウを廃したものの、骨格であるシルバーのトリディオンセルを踏襲するため、やはり先代風。大きく変わったのはリアスタイルで、フェンダーをボディと一体化してボリュームアップ。斜め後ろから見るとそれが一層強調されるが、ちょっと「フツー」になった感じだ。

横バーとなったドアハンドルを引いてインテリアを見る。メーターやシフトなど基本的には先代と同じ配置ながら、S字曲線を描いていたダッシュボードは直線的に変更され、ここも「フツー」になっている。先代のポップな感じは影を潜め、Aセグメントへ昇格したような感じだ。

仔細に見れば、助手席がリクライニング可能になり、ワンタッチ機能が付いたパワーウインドウのスイッチが助手席分も含め備わり、ミラーが電動調整式になり、グローブボックスが新設されるなど、「フツー」になったことによる恩恵は数多い。

リアゲートはオープナーを介さずとも「フツー」に外から開けられるようになった。便利なゲートの上下2分割に変わりはないが、下側に物入れを内蔵したのはアイデアだ。

ラゲッジスペースは約50%増量の220Lを確保。トノカバーまでの高さに変化はないから、奥行きが10cm増えたことも含めボディ拡大の効果だ。広いとは言いがたいが、ボディサイズを考えれば「頑張った」と言える。助手席のシートバックを前に倒せば、大きな荷物も収納できるのは先代と同様である。

一方、カブリオは先代と同じく電動で開閉し、3パターンのオープン感覚「トライトップ」を楽しめる。サイドのルーフフレームは外してリアゲートに収納できるのも同じ。トップにはインシュレーターが加わり、先代のペラペラ感がなくなったのはニュース。閉じた際の静粛性は格段にアップしている。トップの開閉は走行中でも可能だ。

ひと通りチェックが済んだところでクルマに乗り込むと、まずドアを閉める音の変化に気付かされた。バシッという感じで重厚になっている。これはアルミからスチールへの素材変更によるものだろう。

ポジションを決めようとすると、シートのリクライニングがダイヤル式から、フランス車的なレバーに変更されていた。正面のスピードメーターは140から160km/hスケールにグレードアップしている。高速走行の自信の現れかもしれない。

後方を確認しようとアウターミラーを見ると、視界の広さに驚かされた。センターにあるキーを捻ると、後方から3気筒らしい軽快なサウンドが響く。このエンジンはNAの1Lで、三菱 i(アイ)用の発展版である。先代のメルセデス・ベンツ製の700ccターボと比べると、パワーで10psアップし、トルクは0.3kgmダウンしている。走り出すとスペック以上に軽快なことを知らされる。

NAならではのスムーズさと、トルク重視のフレキシブルさを合わせ持っているのだ。さらに、高回転を楽しむ余裕も生まれた。やはり「排気量アップに勝るチューンはない」だった。

使い慣れたソフタッチは、相変わらずシーケンシャルパターンのマニュアルモードのほうがキビキビと走る。オートモードに切り替えると、確かに先代よりはスムーズな変速をみせるものの、やはりギクシャク感は否めない。ただ、キックダウン機能が備わったため素早い加速が得られるようになったことと、何速で走っているかが表示されるようになったのは嬉しい変更だ。

乗り心地は先代よりしっとり感が出て、落ち着いたものになっている。先代にあった、ひょこひょこした感じがなくなっているのは、ダンパーの設定が効を奏しているのだろう。さらにステアリングを切ったときの感触までもしっとりとしていて、インフォメーションもしっかりと伝わってくる。これは電動パワステの設定変更だけでなく、フロントタイヤが10mmワイドになったことやトレッドが広がったことによる相乗効果だ。先に述べたエンジンも含め、ドライブ感覚はスマートとは思えないほど「フツー」になっていた。

高速道路に持ち込むと、先代とは打って変わって余裕を感じさせた。短いホイールベースのためピッチングは出るものの先代より確実に抑えられ、落ち着いたサスセッティングと相まって、高速での安定感は「フツー」のクルマに変身していた。フロント周りで発生するバサバサという風切り音も低減していて、合わせて静粛性も手にしている。100km/h巡航は、3/4/5速で5000/3800/3000rpm。NAらしく、この回転域からのピックアップはいい。ちなみに先代は6速で2500rpmだったから、5速化でちょっと回すようになった。

メルセデス・ベンツがスマートに与えている存在意義
今度のスマートはすべてにわたって、これまでの「大きなオモチャ」的な特殊性を取り除いている。カッコこそ特殊ながら、乗れば「フツー」のクルマと何ら変わらなくなっているのだ。

これは、より多くのユーザーを掴む上では好ましい進化である。一方で、残念なのが価格のアップ。加えて、先代で標準装備だったもの、たとえばアルミホイールやサブメーターなどがオプション扱いとなっている。クーペの乗り出し価格が約200万円というのは、サイズからみれば「高い」と感じる人が多いのではないだろうか。

思えばスマートは一時、メルセデス・ベンツの非採算部門ということで「次期モデルはないのでは⋯⋯」とも噂された。確かに、他車種に流用がきかない専用部品だらけなのに加え、ESPをはじめとした安全装備の充実など、サイズの割にはコストがかかっていた。年間30万台が採算分岐点とも言われ、そこに達していなかったため継続が危ぶまれていた。だが、こうして2代目が誕生した背景には、CO2の「140g/km」規制があったからに他ならない。メルセデス・ベンツにとっては高級乗用車のSクラスを販売するには、相対として、燃費の良いスマートの存在が欠かせないのである。

かくして生まれた新型スマートは、基本レイアウトは変えずに、エンジンにかつて関係があった三菱自動車製を採用するなどしてコスト負担を減らしている。小排気量をターボで補ってきたエンジンをNA主体にしたのは、コスト面のみならず、アメリカでの販売開始という一面があったからだろう。

スマートはローマやパリといった駐車難のヨーロッパ都市部で人気を博している。それは納得いく話だが、果たして広大なアメリカで小さなスマートは成功するのだろうか。まずは1.3万台の受注という好スタートを切ったが、これが継続性を持つか否かが、メルセデス・ベンツにとって大きな課題になるだろう。今回のあらゆる面で「フツー」になったスマートの背景には、こうしたグローバル化への対応があったに違いない。(文:河原良雄/Motor Magazine 2008年4月号より)



スマート フォーツークーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:2720×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:810kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:999cc
●最高出力:71ps/5800rpm
●最大トルク:92Nm/4500rpm
●駆動方式:RR
●トランスミッション:5速AMT
●車両価格:176万円(2008年)

スマート フォーツーカブリオ 主要諸元
●全長×全幅×全高:2720×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:830kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:999cc
●最高出力:71ps/5800rpm
●最大トルク:92Nm/4500rpm
●駆動方式:RR
●トランスミッション:5速AMT
●車両価格:205万円(2008年)

[ アルバム : 2代目スマートフォーツー はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
レスポンス
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
Auto Messe Web
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
WEB CARTOP
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
motorsport.com 日本版
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
motorsport.com 日本版
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
レスポンス
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
WEB CARTOP
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
WEB CARTOP
女性チームのアイアン・デイムスがポルシェにスイッチ。LMGT3初年度はランボルギーニを使用
女性チームのアイアン・デイムスがポルシェにスイッチ。LMGT3初年度はランボルギーニを使用
AUTOSPORT web
角田裕毅、ラスベガスで躍動し予選7番手「ミスター・ガスリーには離されたけど……アタックには満足。良いフィードバックもできている」
角田裕毅、ラスベガスで躍動し予選7番手「ミスター・ガスリーには離されたけど……アタックには満足。良いフィードバックもできている」
motorsport.com 日本版
まるで「“ミニ”フェアレディZ」!? 全長4.1mの日産「コンパクトクーペ」が斬新すぎる! 短命に終わった「NXクーペ」とは?
まるで「“ミニ”フェアレディZ」!? 全長4.1mの日産「コンパクトクーペ」が斬新すぎる! 短命に終わった「NXクーペ」とは?
くるまのニュース
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
レスポンス
「日産 GT-R  プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
「日産 GT-R プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
Webモーターマガジン
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?
THE EV TIMES
ヤマハがNetflixアニメ用に未来のレースマシン「Y/AI」をデザイン、実物大モデルも
ヤマハがNetflixアニメ用に未来のレースマシン「Y/AI」をデザイン、実物大モデルも
レスポンス
”第2の波”を生んだ挑戦者、それはレズニー傘下で喘ぐamtだった…!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第39回
”第2の波”を生んだ挑戦者、それはレズニー傘下で喘ぐamtだった…!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第39回
LE VOLANT CARSMEET WEB
今週、話題になったクルマのニュース4選(2024.11.23)
今週、話題になったクルマのニュース4選(2024.11.23)
@DIME
レッドブルのペレス、今季6度目の予選Q1敗退。3戦続けてRBの角田&ローソンに敗れる「マシンに根本的な問題がある」
レッドブルのペレス、今季6度目の予選Q1敗退。3戦続けてRBの角田&ローソンに敗れる「マシンに根本的な問題がある」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

199.0409.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.6383.0万円

中古車を検索
フォーツー クーペの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

199.0409.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.6383.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村