こんにちは。編集長の高橋 明です。ある日突然トヨタ広報部から電話があり「エコカーカップに出ませんか?新型プリウスを用意できますけど」というお誘いの電話がリンリン。 リンリンって・・・レース一週間前の金曜の夜でした。
<レポート:高橋 明/Akria Takahashi>
「興味はあるが、出場となると・・・」と思いつつ「ありがとうございます!出ます!」と即答。そこからメンバー集めが始まった。
急な招集で、当然メンバー集めは大変。まずは出場するには何が必要か?調べてみる。場所はWECやスーパーGTも開催される、あの富士スピードウエイ!もちろん、フルコースを使ってのレース。
「こりゃ、ひるむ人もいるだろうなぁ」と思いつつ、ネットで調べてみると、ライセンス不要、免許さえあればOK。要装備はヘルメット。以上!「すんげ~、ハードルが低いじゃん」。ヘルメットも耳が隠れる形であればOKでバイク用もOK。それに長袖、長ズボンがあれば問題なしというのだ。
大人なので、半ズボンしか持っていない、という人もいないのでヘルメットさえあれば、なんとかなることが分かった。あとはグローブも必要だけど軍手でもいいか。滑り止めのついた軍手なら上出来だ!(きちんとしたものを推奨します)
それで、レースのやり方を調べると、レースは常に2人乗車。直線での最高速度は100km/h程度らしい。気になるラップタイムは3分15秒を切ってはいけない!というルール。どれほどの速さなのか?見当が付きにくいが去年のWECでポルシェLMP1が1分22秒台だから、その半分の速度で走っても2分44秒・・・よくわからん。
集まったメンバーをご紹介。高橋はレース取材の経験は数十年あるものの、出場経験はないのでエントラントとしての時間の流れをよく知らない。サーキット走行の経験は試乗会や企画などでそれなりにあるが、タイムアタックやレースの経験はない。そこで知人のチームに助っ人を依頼。というか、おんぶにだっこ。
「面倒見てください」というお願いをしたのが「Team Car World」。ここは往年のレジェンド&現役モータージャーナリスト津々見友彦さんのチームで、助っ人としてAutoProveのプリウス号の介護をお願いした。
津々見さんもチーム代表の渡辺さんも快く引き受けてくれて、たいへんありがたい。人間できているというのか、後光が見えます。渡辺さんは体も丸いけど心も丸い方で、思わず拝んでしまうようなご尊顔を拝し恐悦至極。
次いで紅一点。連載コラムを執筆する吉田由美様。出場交渉した金曜の夜から週明けにかけて、由美様はイタリアに渡航中。Facebookで交渉を重ねた結果、参戦の承諾にこぎつけた。うらやましいだろう、ダイレクトに連絡できるのは立場を使った既得権。ざまぁみろ。誰に自慢しているのか・・・当日、由美様はビシッとレーシングスーツにオリジナルカラーのフルフェイス姿で登場!殺伐としたレース界に咲く、一輪の華。その姿をみるや太陽に照らされたように明るくなるピット内。ありがたや。ありがたや。おおお、歯が浮いてきた・・・
ボッシュの廉太郎さん。以前はレース界に身を置いていたことがあるので一安心。FSWもレースカーで走行したことがあるそう。不安要素はない。そして由美様にしずしずと歩み寄り、二人で楽しくゼッケンを貼る姿は、後ろからでもにやけている顔が見える。
いいぞ!鳥飼!そしてGT-R専門店「565」を営む五十嵐さん。元ニスモなのでこちらも不安なし。若いころはだいぶやんちゃもしたらしいので・・・。そして無類の女好き。関係ないか。トリは鳥飼ヒカル。AutoProveのWebエンジニアでクルマの知識は一般人レベル。もちろんサーキット走行の経験などない。それどころか「サーキット」という場所に来たことが初体験。今回一番の注目株だ。何かおもしろいことでもやってほしいと、期待で胸が膨らむ。
これで面子は揃い、あとはレースのやり方を勉強。これはCar Worldチームからレクチャーを受け、走り方を伝授してもらう。
結局、燃費よくいかに速く長距離を走るか?という勝負。でも3分15秒の壁があるので速さと距離には限界がある。1周195秒で3時間走るのが最長距離で最速ということになり、その際のガソリンはどんだけ使ったか?というのが勝負の分かれ道。だからナビ役がいて一周のペースをドライバーに伝えながら走るのだ。
呑み込めたような、混乱しているような状況で時は過ぎていく。予選は若いころ爆走しまくったらしい五十嵐さんにお願いして、タイムアタック。これは純粋なタイムアタック。エントリー80台中55位。
さて出場のクルマは何か?当初はハイブリッドモデルに限定したエコカーカップも、いまは、「低燃費技術の搭載されたモデル」ということで、旧車ぢゃなければOKか?というゆる~いかんじ。したがって車種は多種多様。今回ポールポジションはアウディRS3!アウディワークスの「audi ultra」が参戦していました!「本物か? ロッテラーとか乗ってないよな?」 その中で55位はいいんじゃないでしょうか。
レースは30分ごとにドライバー交代する作戦で、スターティングドライバーは当然五十嵐さんにお願いして、エンジニア鳥飼ナビという展開。暴走経験豊富な五十嵐さんは3分15秒を切る快走を見せ、10ポイントのペナルティという見せ場も作ってくれた。
30分後由美様ドライブで、廉太郎さんナビ。まるでドライブデートの様相。由美様は経験も豊富なので、安定感がある。スピードレースのようにピリピリしていないのが楽しいとおっしゃる。3分15秒はさすがに余裕しゃくしゃくで、オンタイムに合わせるテクニックまで駆使。「このレースは飛ばせる人だと余ってしまうほど、のんびりしている。ホントにだれでも参戦できますね」と由美様も好印象の様子。
あっという間の由美様スティントが終わり高橋に交代。ナビは廉太郎さんがそのまま連続でやってくれた。「ねえねえ、由美ちゃんと何話してたんですか?」「いやいや、ちゃんとナビしてましよ。どんくらいの速度だとちょうどいいとか考えながらだと30分あっという間でしたね」と夢心地だった様子。きっと、妄想と現実が混在して気づいたら終わってたというパターンか。
チョー初心者鳥飼が何かしでかすか?ちょっと期待していたのだが、何事もなく鳥飼も担当のスティントを消化。
レース後の鳥飼コメント「最初はドキドキでどこを走っていいのかわからないけど、まわりにクルマがいるんで、ついていきました。めっちゃ楽しいですね。テレビで見るレース観戦も見方がまるっきり変わりますよ。『あ~あのコーナーか、難しいんだよな』なんちゃって」と完全にハマっている。
さて、レース結果です。総合27位/80台。クラス9位/16台でした。総合優勝、2位はなんとマツダデミオ・ディーゼル。3位がアクアです。
デミオは250km走行し、平均17.4km/L。レース順位は11位という成績。2位のデミオは243.6kmで平均20.0km/L、レース順位は38位。燃費よく走ると距離と速さが犠牲になるというわかりやすい結果。
AutoProveチームは244kmでトップより6kmも短い。平均燃費は15.9km/L、レース順位は54位という成績で、全体にゆるく、なんだかな~の結果。6km短くて、燃費がそれほどよくもなく、レースも遅いという内容。
おなじプリウス50型が16台参戦し、クラス優勝は同業の媒体社、Car トップチーム。こちらは245kmで平均17.1km/L、レース順位は12位でした。Carトップの結果と比較するとAutoProveはレース順位が遅くて燃費が悪い、ついでに頭も悪いか。ということで奥が深いことがわかります。
一方の津々見さん率いるCWチームは、243.8km平均11.3km/L。総合19位でありながらレース総合1位でもちろんクラス優勝という好成績でした。往年のレーサーは1番が大好きです。
レース後わかったことは、参戦するには非常に敷居が低く、つまずくものがないほど誰でも参加できる。だけど、奥が深い。ず~っと奥座敷まで続く大奥のごとく複雑怪奇な作戦が作れるということと、いかにアクセルを踏まないか。踏むときはゆっくり開ける。トルク要求型であることをしっかり理解しつつ、ステアブレーキも有効活用していくという屁理屈を覚えた初参戦でした。どうです?みなさんも参加されてみては?
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