2017年7月27日、ホンダは10代目となる新型シビック、セダン/ハッチバック/タイプRを発表した。発売は9月29日から。日本では2012年以降シビックはフェードアウトしているため、5年振りの再デビューとなる。
10代目シビックは、言うまでもなくホンダのグローバルカーであり、フィットとともにホンダを支える基幹車種である。世界170以上の国、地域で販売され、ホンダの世界生産累計1億台のうち、シビックは累計2400万台を数え、いかに重要な車種であるかがわかる。
■ホンダの抱いた危機感とは?
しかしホンダは今回の10代目を開発するにあたって、大いなる危機感の下でプロジェクトはスタートしたという。開発がキックオフしたのは2011年の東日本大震災の直後で、開発のベースとなる栃木研究所も地震により機能停止状態となるほど大きな被害を受けていた。開発メンバー全員がこれからどうなるのだろう、どんな時代になるのだろうという不安を感じていたという。
もうひとつの危機感もあった。ホンダ栃木研究所のエンジニアは、グローバルでのCセグメントが意味する概念が変わり、飛躍的に進化を遂げていることを実感していた。これまでのシビックは保守的で、グローバルCセグメントの中で取り残されているという危機感を強く抱いていたというのだ。
また日本ではホンダのDNAを象徴する基幹車種が存在しないこともあって、ブランド形成するうえでも、ホンダのブランドのイメージが変質している実感も危機感として存在した。したがって新型シビックはグローバルCセグメントカーのトップの性能を目指し、日本においてはホンダ・ブランドを再構築するという大きな使命を担う役割が与えられ、そしてゼロからの開発が行なわれることになったのだ。
■クルマの根本から一新する
ホンダ・ブランドとは何か?それは操る喜び、カッコいいデザイン、優れたパッケージングによる広い室内&ラゲッジスペースだという。Cセグメント・トップレベルの、高次元な操る喜びを達成するには並大抵では実現不可能だと予測され、クルマの根本から一新することが必要と考えられた。
その結果、先行研究されていた新世代グローバル・プラットフォームを採用することが決定された。ちなみに多くの自動車メーカは新世代のプラットフォームにそれぞれ名称をつけているが、ホンダの場合は特別な名称を使っていない。また、この新世代グローバル・プラットフォームの開発着手の時期は、トヨタのTNGAとほぼ同時期であった。
また、新型シビックの開発当初は搭載エンジンも既存の自然吸気エンジンが想定されていた。が、しかし操る喜びを徹底追求するために、新開発の1.5Lダウンサイジング・ターボが採用されることが決定した。
このように、新型シビックはプラットフォーム、エンジンを含め、ゼロから開発がスタートした。また従来モデルとは異なり、グローバル展開を前提に、シビック史上初となるセダン、ハッチバック、タイプRを同時に開発することにもなった。さらに世界各地の生産工場で、新世代プラットフォーム、インナーフレーム骨格式ボディなど、従来とは造り方がまったく異なる生産ラインを導入する必要もあり、ホンダとしては空前の開発体制と大きな投資が行なわれたことも画期的というべきだろう。
こうして開発された10代目新型シビックのグローバル展開は、2015年のニューヨーク国際オートショーでコンセプトカーを発表し、同年秋に北米工場製のセダンを発売した。翌2016年春に中国工場で生産されたセダンを中国市場で発売。そして秋にはイギリス工場製のハッチバックをアメリカで発売している。こうした道程を経て、満を持して2017年9月から日本でセダン、ハッチバック、タイプRを発売する。
日本で販売されるシビックは、セダンを寄居工場で生産、ハッチバック、タイプRはイギリス工場製の逆輸入車で、タイプR用の2.0Lターボエンジンだけはアメリカのオハイオ州にあるアンナ・エンジン工場のスペシャルエンジン工房で生産される。そしてイギリス工場に送られてアッセンブリーされ、国内に導入される。
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