サブミッションで登坂力23度!! 本格派アウトドアレジャーバイクの誕生
バイクブームがピークとなる1980年代に入ると、排気量50ccクラスの原付バイクの販売台数は、国内だけでも200万台に迫る勢いとなります。スポーツモデルやスクーターなどのファミリー車に加え、原付ならではのレジャーバイクと呼ばれるモデルもたくさん販売されていました。その中でもたいへんユニークなモデルがホンダ「MOTRA(モトラ)」です。
【画像】「えっ…!」これが本格アウトドアレジャーバイクのホンダ「モトラ」です(11枚)
1980年代から1990年代は第1次アウトドアブームであり、現在を上回る人数のキャンプ愛好家が野山や自然を楽しんでいました。週休2日制の導入や、当時のRVや4駆(今で言うSUV)の流行にも後押しされて、国民的レジャーとなっていました。
そんなアウトドアブームの兆しをいち早く察知したホンダから、1982年に「モトラ」が登場します。
車体の外側を覆うパイプフレームとパネルは前後の大型キャリアと一体となって、まるで4輪駆動車を超えて建設機械の重機のような雰囲気です。このヘビーデューティ(頑丈な道具で実用的な物)なデザインは、原付バイクにも関わらず「モトラ」の本物感を表しています。
ひと目で分かる大型キャリアの高い積載性は、好みの道具を積み込んでアウトドアへと走り出す自分を想像できたはずです。またブロックパターンのワイドタイヤと踏ん張りが効いた前後サスペンションが、楽しいオフロード走行へと誘います。
嬉しいことに「モトラ」が持っている本当の魅力は、外観のデザインだけではありませんでした。フロントキャリアは荷物を積んでも安定した操縦性を得られるフレームマウントで、さらに大きなリアキャリアに荷物を満載しても、レベライザー付きのリアサスペンションで常に一定した車体姿勢をキープできます。
さらに、前側にマウントされたセンタースタンドは後輪着地式で、重たい荷物の積み下ろしがラクになるよう配慮されています。
最高出力4.5ps/7500rpmを発揮する空冷4ストローク単気筒エンジンは、通常の3速に加えて低速の3速をプラスした3×2のサブミッション式です。粘り強いエンジンと相まって、約23度の上り坂をグイグイ登る実力を持っています。出かけた先が楽しいだけでなく、途中の道も楽しいレジャーバイクでした。
当時のカタログでは、自ら「おもしろバイクの珍種」と名乗っていますが、その装備を見ると、むしろ「ガチ過ぎる本格的アウトドアレジャー50ccバイク」という趣です。
なにより「モト(Moto)」+「トラック(Truck)」で「モトラ(MOTRA)」というネーミングセンスも抜群でした。
しかし1982年6月に「モトラ」が発売になった時点で、ホンダの50ccレジャーバイクは7機種となっていました。ヒットモデルはスクーターや2ストロークスポーツモデルであり、バイクのアウトドアブームは排気量125ccや250ccクラスのオフロードバイクによる林道ツーリングが主流でした。
ちなみに、2004年には「モトラ」と同じ感覚を持った250ccクラスのスクーター、ホンダ「PS250」が発売されました。「モトラ」同様に車体の外側に極太のパイプフレームを配した特徴的なデザインで、可倒式リアシートによる快適性と積載性の両立なども、ユニークな装備のひとつでした。
「モトラ」も「PS250」も、当時勢いがあったヒット作と比べると生産台数は少ないものですが、現在でも他にはない魅力を感じたファンに支持されています。
ホンダ「モトラ」(1982年)の当時の販売価格は16万5000円です。
■ホンダ「モトラ」(1982年型)主要諸元エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ総排気量:49cc最高出力:4.5ps/7500rpm最大トルク:0.46kg-m/5500rpm全長×全幅×全高:1650×740×975mm始動方式:キックシート高:720mm車両重量:81kg燃料タンク容量:4.5Lフレーム形式:バックボーンタイヤサイズ(前後とも):5,40-10-4 PR
【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
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みんなのコメント
アニメータの大塚康男氏やアニメック編集長の小牧雅伸氏の影響で
125cc版が出たら買うのになあ
それともなければ、ハンターカブのミッションを
Hi/Lo切り替えつきMTに交換するキットなんか
あったらイイなぁ~