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ハイブリッド車の代名詞「プリウス」 その人気を押し上げたのは、なんと“ハリウッドスター”だった!

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ハイブリッド車の代名詞「プリウス」 その人気を押し上げたのは、なんと“ハリウッドスター”だった!

初代プリウスの苦戦

 欧州が火付け役になり、米国や中国が追随した形の電気自動車(EV)シフトが一段落している。今後再び盛り返すのか、あるいはこのまま収束するのかはわからないが、現時点ではハイブリッド車(HV)に再び注目が集まっている。

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 でも歴史を振り返れば、HVをいち早く評価したのは生まれ故郷の日本より、むしろ米国だったことを覚えている人もいるだろう。

 HVのパイオニアはもちろん、1997(平成9)年に「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに登場したトヨタ自動車「プリウス」だ。

 しかし初代プリウスは当初、販売が伸び悩んだ。筆者(森口将之、モビリティジャーナリスト)も何度か試乗したことがあったが、ハイブリッドシステムは力不足が目立ったし、セダンながら背が高く前後の短いフォルムは万人向けではなかった。

 一部の新し物好きからは評価された。でも多くの日本人は新しいモノものやコトに対して慎重であり、かつ最初から完璧を求めるという考えの持ち主なので、ヒットには結びつかなかった。

ハリウッド注目、環境保護の象徴化

 そんななか、米国で初代プリウスに注目した人たちがいた。2003年のアカデミー賞の授賞式に、多くのハリウッドスターがプリウスで乗りつけたのだ。

・トム・ハンクス
・ジュリア・ロバーツ
・レオナルド・ディカプリオ
・キャメロン・ディアス

など、そうそうたる顔ぶれだった。

 実はこれ、グローバル・グリーンUSAという環境保護団体の仕掛けだった。アカデミー賞授賞式に参加するハリウッドスターたちに、当時もっとも地球環境に優しいクルマであったプリウスを貸し出すと呼びかけたのだ。

 もちろん受けるか否かは個人の自由だ。しかし環境問題に敏感なハリウッドスターたちは興味を示し、プリウスで会場に向かった。それだけでなく、プリウスが環境に優しいクルマであることを説明までしたという。

 ディカプリオのように、実際にプリウスを所有していた人もいるが、プロモーションの一環にもなるので、そのような展開になったのだろう。でも一番の宣伝になったのは、間違いなくプリウスだった。

トヨタの成功戦略

 環境保護団体が自腹を切ってプリウスを買ったわけはないので、トヨタがスポンサーになっていたことは容易に想像できるが、結果は予想以上だった。

 プリウスは同じ年の後半に2代目にモデルチェンジするのだが、発表の場として選ばれたのはニューヨークだったのだ。その席で当時のトヨタ社長・張富士夫氏は、

「俳優のレオナルド・ディカプリオさんにも乗っていただいている」

とコメントした。その席では初代が6年間で12万台販売されたことも明かされた。2023年日本国内だけで約10万台売れたことを考えれば、低迷していたことがわかるはずだ。

 トヨタもそれはわかっていて、2代目では5ナンバー枠に収まっていたボディサイズを拡大するとともに、

「トライアングルシルエット」

と呼ばれたスタイリッシュなフォルム、進化したハイブリッドシステム「THSII」を与えるなど、世界を見据えた内容に仕立てていた。

欧州の道路を席巻

 アカデミー賞での環境保護団体のアクションはその後もしばらく続き、2代目プリウスは日本に先駆けて、まず米国で火がついた。そして欧州でも動きがあった。主要都市のタクシーにプリウスが増え始めたのだ。

 例えばフランスのパリでは、HVをはじめとするエコカーをタクシーに使うときに補助金が用意されたこともあり、プリウスのタクシーが目立つようになった。大手タクシー会社G7は、欧州初のエコタクシーブランドである「G7グリーン」を導入して環境対策をアピールするほどだった。

 イタリアも同様だった。新しい排出ガス規制にパスしていない車両は旧市街へ乗り入れを制限する一方で、タクシーとしてHVを購入する際には補助金が出された。よって多くの都市でプリウスのタクシーが見られるようになった。そしてドイツでも、似たような流れが出てきた。

 ドイツのタクシーといえばディーゼルエンジンを積んだメルセデス・ベンツが多い。メルセデスは欧州では、装備を最小限にした代わりに料金メーターなどを装備したタクシー専用車両の販売も行っている。耐久性や信頼性を含めて考えれば、他社のクルマを購入してタクシーに仕立てるより、コストが抑えられる。

 それなのにプリウスが増えたのは、欧州ではディーゼルに使う軽油の価格がもともとガソリンとほぼ同じで、タクシーのように都市内移動が多いタクシーではHVのほうが燃料代が抑えられるうえに、車両価格も安いことが理由らしい。

政治とクルマ、求められる利用者視点

 その流れは、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、エネルギー価格が大幅に上昇したなか、2022年以降も続いているという。

 政治目線で日本生まれのHVをけしからんと思い、形勢逆転を狙ってEVシフトを仕掛けても、欧米でここまで支持されている以上、現在のような結果になるのは当然だろう。

 クルマのよしあしは、

「実際にクルマを使っている人」

が一番よく理解している。これを機会に利用者に寄り添った政策にシフトしていくことを望みたい。

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みんなのコメント

14件
  • zoo********
    いい車なんだけど、日本ではどうしてもD Q Nの乗り物として見てしまいますね。
    自己中で危険な運転してるなと思うとプリウスである確率が異常なほど高い。
  • azu********
    トヨタ・TSSは役立たずと何件も実証している。 国交相と組んで、13年経過後の重加算税を免除したのは汚い。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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