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2年で生産中止になったルノーの名車、もしくは迷車?

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2年で生産中止になったルノーの名車、もしくは迷車?

ルノー アヴァンタイム、、知っていますか?


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第203回

価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?


「ルノー アヴァンタイムというクルマ、知っていますか?」、、フランス車好きにはもちろん、ラテン車好きにも愚問だろう。

いや、メルセデスやBMWに乗っている人でも、クルマ好きなら「知ってるよ、もちろん!」と返ってくるはずだ。

でも、街角で問いかけたら、「ええっ?、知りません」との答えが圧倒的だろう。

このクルマ、総生産台数は8557台、日本への正規輸入台数は206台、生産された期間は2年間、、でしかない。

だから、ほとんどの人が知らなくて当然なのだが、、一方で「熱烈なファンも多い」。

というと、限られた人向けに作られた限定生産のファンカー、、ちょっと変わったクルマ!?、、系かと思うかもしれない。、、が、それも違う。アヴァンタイムは、レッキとしたルノーの正規モデルだ。

1993年のジュネーヴ モーターショーでコンセプトカーとしてデビューしたが、その姿には驚かされた。

ルノーは「ニューコンセプト クーペ」というキャッチコピーを掲げていたが、僕には「クーペ」と呼ぶのは抵抗があった。


常識的には「ニューコンセプト クロスオーバー」といった呼び方が妥当のように思えた。でも、ドアは2枚(リアゲートを加えると3枚)だけ。カラフルな2トーンカラーは、かなり華やかな存在感をアピールしていた。

その存在感は、「一度見たら忘れない!」といった類に入ると僕には思えた。だが、その一方で「どんな人たちが乗るのだろうか?」「どんな人たちが似合うのだろうか?」といった問いの答えが見つからなかった。

もし、ドアが4枚あれば、スンナリ受け入れられたかとも思う。だが、大柄なボディにドアが2枚となると、、思考は前に進まなくなってしまったのだ。

そんなアヴァンタイムに初めて乗ったのは2002年。場所はベルリン。東西の壁がなくなり、世界でもっとも新しいものが溢れ、活気に満ちた街をベースにした試乗会だった。

その時の試乗メモが出てきたので、思い出の断片と付き合わせながら書くことにした。

粋な2トーンカラーを纏ったアヴァンタイムは、すごくユニークで華やかで、飛び抜けて目立った。

でも、アヴァンタイムに向けるベルリンの人たちの眼差しは、驚き、戸惑い、好奇心、、だけではなかった。好感とか憧れといったものも多分に入っているように感じられた。

さらに、ベルリンでのあれこれを見、感じている内に、僕の中では、ルノーが掲げた「ニューコンセプト クーペ」というキャッチコピーへの抵抗感がどんどん薄れていった。

と同時に、僕はいつの間にか、50~60年代のアメリカン 2ドアハードトップ クーペのイメージを重ね合わせていた。


これ見よがしにテールフィンを突き上げ、カラフルな2トーンカラーを纏い、人の心を明るくハッピーな世界に誘う、、そんなイメージがピッタリ重なり合ったのだ。

アヴァンタイムを企画しデザインした人たちの多くは、きっと50~60年代のアメリカン 2ドアハードトップ クーペが好きに違いない。
、、そんな想いが頭を過った。

僕が好きなアヴァンタイムのボディカラーは、赤白や青白の2トーンだが、これもまた佳き時代のアメリカン 2ドアハードトップのイメージに重なる。

2トーンカラーのアヴァントをLAで走らせたら似合うだろうな。サンタモニカ、ベニスビーチ、メルローズアヴェニュー、サンセットプラザ、、どこでも多くの視線に囲まれるだろうな。、、ベルリンの人たちの視線を浴びながら、僕の想いはLAに飛んでいた。

強く傾斜した大きなフロントウィンドウ、センターピラーのない広いサイドウィンドウ、そして、これまた思いっきり大きいガラスサンルーフ、、、開放感の塊のようなキャビン感覚の心地よさにまず強く惹かれた。

ベルリン市内では窓もガラスサンルーフも閉めて走ったが、緑多いカントリーロードに入ると、窓もガラスサンルーフも全開にして走った。

風はキャビンで容赦なく暴れ回ったが、とても気持ちがよかった。ここでもまた、テールフィン時代のアメリカン コンバーチブルを思い出した。

ルノーは、アヴァンタイムに心を向けるだろう人たちのイメージサンプルとして、公式には次のようなクルマを挙げた。


プジョー 406クーペ、ボルボ C70、メルセデス ML、BMW X5、グランドチェロキー、アッパークラスのカブリオレ、、、こういったクルマに乗っている、あるいは興味を持っている人たちなら、アヴァンタイムにも興味を持ってもらえるはず、、ということだ。

現実的にはそうなのかもしれない。でも、僕としては、もう少し、、いや、もっと夢のある、もっとハッピーな気持ちになれるような一項を加えてほしかった。

アヴァンタイムは超個性的なのに、引き合いに出されたのは真っ当なクルマばかり。僕が頷けたのは、唯一、「アッパークラスのカブリオレ」だけだった。

僕としては、上記したような、「佳き時代のアメリカ車の香りが好きなような人たち」という一項を加えてほしかった。

そうすれば、クルマ好きの人たちのイマジネーションを大きく膨らませ、夢のある視点から眺めることをも促せたように思うのだ。

ちょっとマニアックにすぎる視点だといわれるかもしれない。でも、トライしてみる価値は十分にあった、、今でもそう思っている。

ここで、ざっと主要スペックをピックアップしておこう。

4642×1826×1627mmのスリーサイズに、エンジンは3ℓ V6 DOHCを積む。ベルリンで乗った試乗車には、6速MTが組み合わされていた(日本仕様車は5速AT)。

近くで見ると大きいが、少し離れると、、とくに街で見るとそうでもなかった。その理由は、SUVやミニバンより全高が低く、伸びやかなプロポーションのせいだろう。

キャビンは快適。開放感の高さは天下一品といっていい。キャビン感覚を言葉にすると、「空や街と一体になって走っている」、、そんな表現がいちばんふさわしいだろう。前後席シートも、共に長時間ドライブをまったく苦にさせない。


インテリアのデザインも気に入った。色使いもいいし、アルミや革の使い方もいい。「トレビアン!」な仕上がりだった。

センターピラーレスの2ドア、、これが、デザイン面でも、キャビン感覚面でも、他に比べるもののない個性を生み出していたのだが、同時に大きな問題も生み出していた。

アヴァンタイムのドアは、長さが1.4m、重さは55kgもある。ダブルヒンジの採用で開閉角度を抑えてはいるものの、1826mmの全幅とも相まって、並のスペースでの乗降はきつい。

スペースにゆとりのない駐車場では、慎重な開閉動作とともに、そうとう柔軟な身のこなしをも要求された。

3ℓV6と6速MTの組み合わせがもたらす走りは余裕十分。トルクで引っ張る感覚は、街走りではとくに心地よかった。加えて、アウトバーンの180km/hクルージングでもストレスはなかった。

操作系は全体に軽く躾られていて、大きく重いクルマを操っているといった感覚はない。

ボディ剛性を含めて、「センターピラーレスの2ドア対策」は、かなりやったとルノーはコメントしていた。だが、十分ではなかった。とくに、不整路面での乗り心地や音には合格点をつけることはできなかった。

そんなアヴァンタイムだったが、一部の人たちには熱狂的な支持を受けた。だが、強すぎる個性ゆえに一般ウケは厳しかった。

僕もかなり「その気になった」のだが、最終的には諦めた。アヴァンタイムを借り出し、日常的に使っている駐車場に行ってあれこれ試してみたが、、答えは「ノー」だった。

「至らない点!?」も多かった。それでも僕は、「セクシー!」とさえ言えるアヴァンタイムの容姿に、今でも強く心惹かれている。


● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

名古屋の自動車アート専門ギャラリー、「アウトガレリアルーチェ」にて、本連載でおなじみの溝呂木先生を含む自動車アート10人の作家たちが、木工、切り絵、模型作品、イラストレーション水彩画、フルスクラッチモデルなどで自動車の美を表現します。

さらに、シトロエンや旧車の集う喫茶店、犬山のカフェプラスアルファでは溝呂木先生の水彩画展が開催。ドミニクドゥーセのクロワッサンやカヌレ、パンオショコラ、京都嵐山のブランドコーヒーを味わいながら原画に触れられます。

昨年夏のルマンクラシックや、7月のパリの女性たち、さらに普段行っているクロッキードローイングの水彩画を展示販売、2/1から2/5までは模型作品も展示販売。2/5 9-18時にはカフェに在廊して、水彩画デモンストレーションも行われ、合わせて水彩画の受注会も。この機会にぜひ溝呂木先生の世界に触れてみてください。

EXHIBITION OF AUTOMOBILE ART 2 in Luce」
~10人の自動車アートinアウトガレリアルーチェ~

会場/アウトガレリアルーチェ 
住所/名古屋市名東区極楽1-5 オリエンタルビル極楽NORTH 2F
TEL/052-705-6789
HP/http://www.luce-nagoya.jp/Top.html
会期/2023年2月1日(水)~4月16日(日)12時~18時(祝祭日を除く月、火曜日休)入場無料

溝呂木陽水彩展「Parisの女性とルマンクラシック in カフェ+α」
会場/カフェ+α(プラスアルファ)
場所/愛知県犬山市塔野地中ノ切18-4
HP/https://www.facebook.com/profile.php?id=100086790212665
TEL/0568-90-8883
期間/2023年2月1日(水)~2月28日(火)祝祭日を除く月曜休 9時~21時(火~木、日、祝)、9時~22時(金、土)


名古屋と犬山市で溝呂木先生の水彩画展が同時開催!

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みんなのコメント

5件
  • ルノーは昔から珍車が多いよね
  • まあ、ベースと成ったエスパスの移管の兼ね合いで生産担当のマトラが辞めたのが2年で終了の原因だけど
    ソレが無くても余り長期の生産は無理だっただろうね。。。
    デザイン(特にリヤ周りは)メガーヌと共通性持たせてイメージリーダーの役割は果たした、のかな…?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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