【ボクらの時代録】1989年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。トヨタ・セルシオ（UCF10／11型）の静かなる世界

圧倒的な作りこみと静粛性。走りは感動をもたらす

　セルシオ（=レクサスLS）が、高級車として何をボクたちにもたらしてくれるのか、具体的に報告しよう。まず外観。鉄板をプレスして作った車体としてセルシオのボディはひとつの究極である。鏡のように平滑で、磨き抜いた曲面を持つパネル。ギリギリまで攻めたパネル同士のギャップ。驚くほど鮮やかな塗装。セルシオを目の前にして、少しでもクルマに目が利く人なら、この職人芸ともいえる徹底した作りの美しさに、心を奪われるだろう。

　ドアを閉めた次の一瞬に訪れる静寂も素晴らしい。シンと静まり返った雰囲気に閉ざされるこの感じが、ボクは好きだ。高級車である、という事実を手っ取り早く納得させてくれる。がっちりとしたキーが、キーシリンダーに吸い込まれていく精度感に満足しながらキーを回す。正面のブラックアウトしたメーターパネルに、白い指針と文字盤が浮かび上がり、エアコンが音もなく空気を送り出し始める。さらにキーを回す。低くスターターの音が聞こえ、スルッとエンジンが始動した。再び静寂が戻る。もうエンジンはかかっている。

　クルマが静粛であるということは、外界の音が遮断されているということだ。外界と人間とが、ある距離をへだてるまでに完全に切り離されること、これがセリシオのもたらす特徴的な“高級さ”である。

Comments

[エガちゃんねらー]

これと初代NSXは世界中のメーカーを焦らせた
(絶対に認めないけどね)

[kan********]

「源流主義」を標榜し、徹底的に作りこんだこのモデル、実は現行のレクサスLSよりも空力性能の指標であるCD値が優れているんですよね。
4リッターV8エンジンにしては異様に燃費も良かったですね。街乗り7～8ｋｍ/L、高速主体だと10ｋｍ/Lに迫る値は、当時の数ある高級車の中でも抜きんでてました。