この記事をまとめると
■愛媛県で日本初の完全無人運転バスの営業運行がはじまった
全国のアチコチで「自動運転」の実証実験! いったい何が行われているのか?
■自動運転タクシーの実証実験は世界的にも盛んだが完全自動運転バスの実証実験は珍しい
■海外ではタクシーが無人化するメリットが大きい
愛媛県で日本初の完全無人運転バスの営業運行を開始
路線バスにおいて、全国各所で完全自動運転バスの実証実験が行われている。本稿を執筆しているときに、愛媛県で日本初となる完全無人運転バスの営業運行がはじまったことをメディアが伝えていた。世界的にもタクシーの完全自動運転に関する営業運行や実証実験は積極的に行われているが、大型路線バスの完全自動運転に関して積極的な姿勢を見せているという話はあまり聞かないこともあり、この分野では日本の存在感を強く感じる。
公共交通機関の完全自動運転化については世界的に取り組みに熱心になっているのが実状。ただし、諸外国では、とくにタクシーではいままでの運転士が運転する運行の場合は運転士から犯罪に遭うことも十分あるというなか、「より安全な乗り物への実現」やプラットフォーマーによる「デジタル技術の進化の証明」といった側面で実用化が進んでいる。一方の日本では、「働き手不足の解消」という、より現実的な問題解決手段として取り組まれているところで様子が大きく異なるものと見ている。
すでに自動運転タクシーで先行するアメリカでは、自動運転タクシーが関係する事故などのトラブルが社会問題化している。自己責任という感覚が広く根付き、「多少の犠牲はやむを得ない」との考えも受け入れる傾向のあるアメリカでも問題となっているのだから、何か問題が起これば当該事業者や監督官庁などの行政機関への責任追及に終始する日本では、タクシーより大型路線バスでの完全自動運転化を優先させているような状況はかなりリスキーなようにも見える。
また、アメリカの完全自動運転タクシーでは、筆者が見てきた限りでは、クルマの運転は自動化されていたとしても、「何かあったときのために」と運転席には対応できる人間が座っている。アメリカでもいまだに「自動だけど有人」のような運行が続いていることを考えると、日本が完全無人運転となるのは遠い未来の話になるのではないかとも考えてしまう。
日本では、本格実用化に際して、補助的に運転席に座る人の資格も問題化していくだろう。原則的には二種免許保持者が乗ることになるのは間違いない。また、完全無人運転の前提は現金での料金収受は介在せず、完全キャッシュレス化というものも要求される。路線バスでは完全キャッシュレス運行の実証実験も始まっている。
タクシーについては現実的な考え方としては、スマホによるタクシー配車アプリを利用したキャッシュレス決済のみで完全自動運転タクシーの利用ができるという方向になるのではないかと考えている。
仮に補助運転士の資格要件で二種免許が必要なくなると、「完全自動化となるまでの過渡期」という前提で、「自動運転タクシーの補助運転士」という新たな職業が生まれることになる。何もしないで20時間ほど運転席に座る(休憩時間はあるけど)というのは考えただけでも苦痛なようにも見えるが、補助的作業がほぼ必要なければ「ものは考えよう」となり、人気の高い職業になるかもしれない。懸念すべきことは、技術的には完全無人自動運転が可能となっても、監督官庁などが「何かあったら」と補助運転士をいつまでも続けるということが考えられる。
自動運転バスよりも自動運転タクシーのほうが受け入れやすい?
また、とくに路線バスでの話となるが、技術的に完全無人自動運転がクリアされて無人の路線バスが運行されたとしても、それを利用する利用客の心理の問題もあるだろう。何かあったときに責任の所在が当該事業者となるのか、車両製造したバスメーカーなのか、それともシステム会社になるのかなど、利用客としては有人運転バスに比べるとそのような不安もあり、「完全無人自動運転バスに乗りたくない」という人が出てきても不思議ではない。
完全無人自動運転化への過渡期にはバスの時刻表にて「この時間にくるバスなら有人」といったマーキングを時刻表に施すことになるかもしれない。技術的な解決が実現しても、それに人間がついていけない時期がある、タイムラグのようなものが発生することも十分に考えられる。
また、完全自動運転バスの必要性の優先度は、働き手不足で路線廃止リスクがより高いような過疎地域となるものと考える。「全国一斉スタート」のようなノリで進めれば、交通環境の複雑な市街地に対応したシステムが必要となり、過疎地域ではオーバースペックのような状況となり、導入までに時間がかかってしまうのでわけて考えることも必要なのではないかと考えている。
タクシーやバス業界は労働集約型産業となっており、とくにタクシーは世のなかが不況となり、リストラなど雇用調整が盛んに行われたときなどは「雇用の調整弁」として、リストラされてもなかなか一般企業への再就職が難しい中高年男性が、比較的容易に社保完備の正社員採用として転職できる数少ない職種とされてきた。
働き手不足といっても、そこには多くの人が働いているのも事実。完全自動運転車両を導入して表面的な問題解決を図ろうとするのではなく、視野を広げて導入を進めないとなかなかことはうまく運ばないのではないかとも考えている。
諸外国が乗るか乗らないかの選択ができる環境を維持し、タクシーで自動運行技術の開発を進めているのは、単純な新しい技術の導入ではなく「受け入れられる新技術」としても磨き上げたいという気もちがあるようにも見えてならない。つまり、タクシーの次のステップに路線バスがあると考えているようにも見える。
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みんなのコメント
利用数が見込めないからコスト的にペイ出来なくなるでしょうけれど
有人列車でさえ大事故起こしてるアメリカじゃ田舎でも乗りたくない
何かあったとき、例えば人を轢いたとき、乗車のお客さんが怪我したとき自動運転とは言っても自動で救護まではしてくれないし。