道路交通法に抵触する違反行為
ペダルの踏み間違いなど誤操作による事故の報道が増えて注目されているが、それが高齢ドライバーだけの問題だと思うのは大きな間違いだ。年代別ペダル踏み間違い事故発生件数(2015年警察庁データ)では、もっとも多い年代が24歳以下の1080件で、75歳以上の1032件を上回る結果となっている。踏み間違いは決して高齢者に多いわけではなく、若年層にも同じように注意を呼びかけることが重要だ。
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このデータに男女比や原因の記載はないが、運転技能や反射神経など身体の衰えからくることが多いと考えられる高齢者と違い、若年層では音楽や会話などほかのことに気を取られてのうっかりミスや、服装などが原因での踏み間違いも考えられる。
とくに女性はハイヒール、パンプス、サンダル、ミュールと、その日の服装によって様々な靴を選び、そのまま運転してしまう人もいる。運転には適さないと知りながら、履き替えるのが面倒だという人もいるが、中には危険につながる可能性をまったく考えず、悪気なく運転している人も多い。
しかし、ハイヒールやサンダルでの運転は道路交通法に抵触する。ひとつは「ハンドル、ブレーキその他の操作を確実に操作する」こと、「事故を起こし人に危害を加えるような運転をしてはならない」と定める第70条「安全運転義務違反」。そしてもうひとつは、運転者が各都道府県公安委員会が定めた事項を遵守しなければならないと定める第71条「公安委員会遵守事項違反」で、例えば宮崎県道路交通法施行細則では第12条に「げた、スリッパ、つっかけ、ハイヒールその他運転操作を妨げるおそれのある履物を履き、又は運転操作を妨げるような方法で履物を履いて、車両(軽車両を除く。)を運転しないこと。」との一文がある。
各都道府県とも、ハイヒールと明記しないまでも「運転操作を妨げる可能性のある履物」での運転を違反とみなす趣旨は同様だ。
では、ハイヒールでの運転がなぜ危険なのか。それは安全にペダル操作をする上での基本を考えれば明白だ。安全確実なペダル操作のためには、まず足のかかとを床に固定し、ブレーキペダルに対して垂直になるよう足を置き、アクセルペダルを踏む時にはそこを支点として足先を右に傾ける。 この時に、クルマの挙動に関わらず、かかとがブレないようにしっかりと固定しておくことが重要となる。しかし、ハイヒールではかかとが床に接地する面積が小さく、常にグラグラとブレてしまうことと、ヒールの高さで足全体に角度が付いているために、ペダルに接地する足先の面積も小さくなってしっかりと踏み込めない、微細な調整がしにくくなること。これが危険につながると考えられる。
また、ほとんどの車にはフロアカーペットが敷いてあるが、この素材にはハイヒールのかかとが引っかかりやすく、いざ急ブレーキといった時にヒールが引っかかってペダルが踏み込めなかったり、ヒールが引っかかった拍子にハイヒールが脱げて、ペダルの奥に挟まって踏めなくなってしまう場合もある。さらに、ペダルを踏み込んでから戻す際にヒールがペダルの後ろ側に引っかかり、アクセルペダルが戻らなくなった、という事例もある。
かかとの低い靴を車内に置いておく
こうした危険は、日常的に運転する女性ドライバー100人へのアンケート(2019年クルマ業界女子部)でも読み取ることができる。これは20代~50代の女性ドライバーが回答したもので、「ペダル操作の悩みや困りごとは?」の問いには56%が「悩みはない」としつつも、「ずっと運転していると疲れる」30%、「ペダルの微細な調整がしにくい」8%、「足が小さい・力が弱いなどでペダルをしっかり踏めない」4%と、女性特有と思われる悩みも浮き彫りになっている。
次に「ペダル操作でヒヤリとした経験は?」の問いには56%がヒヤリとした経験があると回答。その内訳は、「ペダルを踏み間違えたことがある」24%、「靴のヒールなどが挟まってしまったことがある」12%、「ブレーキがしっかり踏めなかったことがある」9%、「その他」9%となり、その他では「ヒールが引っかかりブレーキが遅れた(40代女性/千葉県)」といった意見が寄せられた。
こうした、女性特有とも言える「運転時の靴による危険」に着目し、運転に適した靴を車内に常備して安全運転につなげるプロジェクト、「#置きシュー」プロジェクトがスタートする。
これはカーライフ・エッセイストの吉田由美氏と、筆者であるカーライフ・ジャーナリストのまるも亜希子が共同主宰する「クルマ業界女子部」が、女性視点からクルマ社会を応援する活動の一環として行うもので、クルマがフラットシューズを履いたユーモラスなロゴマークを作成したほか、Youtubeライブ配信やイベント、コラボレーショングッズの販売など、様々な形で呼びかけを行う予定となっている。今後の展開に期待をして頂きたい。
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