ミッレ・ミリア参戦を目指しレストア
タルガ・フローリオに参戦したオスカMT4は、パブロ・ピカソ氏の友人でシチリア島に住む芸術家、マリオ・ライモンド氏へ譲られる。彼も地元のレースを嗜む、アマチュア・レーサーだったという。
【画像】マセラティ兄弟が生んだオスカMT4 フィアット・オスカ1500Sとブランド最新モデルも 全82枚
そのまま地中海の島に眠っていたMT4だが、近年になって発見されると、オスカを得意とするイタリアのアウトフィチーナ・サウロ社の元へ。現オーナーのアレクサンダー・フィシェ氏が1997年のオークションで落札し、本格的なレストアが始まった。
オスカMT4(1954年/欧州仕様)
目標は、1998年のミッレ・ミリア。欧州の名だたるレースで活躍したクルマを、3か月という短期間で仕上げる必要があった。チャレンジングな仕事を引き受けたのが、英国のマクグラス・マセラティ社だった。
ワークショップを取り仕切る、アンディ・ヘイウッド氏が振り返る。「これは、いうなればミニチュア版マセラティ。わたしにとっても、お気に入りの1台です。あのオークションには自分も参加していましたが、オスカは酷い状態でした」
「そんなクルマが数週間後、ここに運ばれてきたんです。ミッレ・ミリアへの出場が目標だという指示とともにね」。とヘイウッドが笑う。
「過去にフィアット・オスカ1600 S クーペのレストアは手掛けていましたが、MT4はまったく別のマシンでした」。イタリアでボディは直されていたが、メカニズムは完全にバラす必要があったという。
「ミッレ・ミリアが近く、アレクサンダーさんはエンジンのリビルドを希望しませんでした。確かに油圧は正常で、ピーキーな特性ながら約90馬力出ていました」
戦後初期のマセラティと技術的に近い
ヘイウッドたちは、サスペンションのリビルドへ仕事を絞った。フロントがウイッシュボーンとコイルスプリングの独立懸架式、リアはリーフスプリングにリジッドアスクルだ。アンダートレイなど、一部欠損していた部品もあった。
「レストアの資料と部品集めに、イタリア・ジェノバのイベントへ、アレクサンダーさんと一緒に向かいました。偶然にも、特別なオスカが展示されていたんです。オリジナル状態のMT4を観察し、多くのメモを取りました」
オスカMT4(1954年/欧州仕様)
「ブレーキフルード・リザーバータンクなど、いくつかの部品も入手できました」。と話す彼は、5月のイベントへ間に合わせるため、直前の2週間は毎晩10時まで仕事をしたという。
「近くのテストコースで、驚くほど運転が楽しいとわかりました。サスペンションが硬く、舗装の穴には注意が必要でしたが。トランスミッションが弱点で、3速と4速に回転数を合わせるシンクロメッシュがないんです」。とヘイウッドが続ける。
MT4は、戦後初期のマセラティと技術的に繋がりが強い。「ダイナモシャフトの後ろにあるウオーターポンプや、リアのリーフスプリング、ウィッシュボーンの真鍮製ブッシュなどは、初期のクーペ、A6-1500にも通じる特徴です」
1998年のミッレ・ミリアにこぎ着けたヘイウッドたちは、サポートクルーとしても参加。小さなバルケッタを助けるべく、ローマへ向かった。
「天気は雨がちでしたが、とても勉強になりました。クラッチが故障し、クルマを手押しすると、沿道の観衆が応援してくれてうれしかったですね」
一般道で強く輝くオスカの個性
「アレクサンダーさんは、これが人生のモチベーションだと話していました。雨風をしのげるルーフはなく、エグゾースト・ノイズも轟音。でも、見事に完走できたんですよ」
オスカをすっかり気に入ったアレクサンダーは、これまでミッレ・ミリアに7度も出場している。ル・マン24時間レースではパレードランにも参加し、タルガ・フローリオのためにシチリア島へも渡った。
オスカMT4(1954年/欧州仕様)
2013年、彼はやむなくMT4を売却する。だが、2014年に再びドライバーとして乗り、ミッレ・ミリアを完走したという。
晴れて乾燥したイタリア南部とは異なり、グレートブリテン島の南西、コッツウォルズの春は曇りがち。それでも幅の狭い一般道で、オスカの個性が強く輝く。
小さなコクピットに収まる、レザー張りのバケットシートは筆者の体型にピッタリ。しっかり身体を支えてくれる。だが身長の高いドライバーは、終始気流に揉まれることになる。
新車当時は、高さのあるル・マン用フロントガラスが装備されていた。それでも、1954年にユノディエール・ストレートを全開で駆け抜けるには、人並み外れた気力がなければ難しかっただろう。
ダッシュボードの中央では、1万rpmまで振られたイエーガー社製のレブカウンターが風格を放つ。油圧と水温計がステアリングホイールの奥に見える。
華奢なイグニッション・キーを押し込み、スターターレバーを操作すると、ツインカム4気筒エンジンが威勢よく目覚めた。1速と2速との間にもシンクロメッシュがなく、低速域では変速が難しい。
ジュニア・マセラティの完成度と能力の高さ
シフトアップしていくと、カシっとした感触が心地いい。レバーの動きも滑らかだ。変速に慣れると、1092ccの4気筒が驚くほど太いトルクを発揮することに気付く。しかも、とても回りたがる。
ボール・ナット式のステアリングも、素晴らしい喜び。軽く正確に反応し、感触も感動的に濃い。開けた道でMT4の能力に迫ると、秀でたシャシーバランスとタイトな特性に気持ちが奪われる。
オスカMT4(1954年/欧州仕様)
コーナーへ速めのスピードで飛び込むと、テールが軽く感じられる。だが、燃料タンクが満タンで、スペアタイヤを積んでいれば、重量配分は改善するはず。幅の狭い15インチ・ミシュランのグリップ力も、有効に活かせる。
このバルケッタで、イタリアの一般道を14時間もまくしたてるのは簡単ではなさそうだが、4スポーク・ステアリングホイールを握っての運転は楽しい。数km走れば、ジュニア・マセラティの完成度の高さを理解できる。
かのスターリング・モス氏が、レースだけでなくプライベートでもオスカを愛したことにも納得できる。熱心に走りたいと、クルマが訴えてくるようだ。
正確な操作性と意欲的に高まるパワー、バランスの良いシャシーが調和する、スイートスポットを探りたいとドライバーの気持ちを刺激する。1950年代のサーキットで、ポルシェのスパイダーと競い合う体験は、中毒性のあるものだったに違いない。
事実、シャシー番号1143のMT4も、歴代のオーナーによってレースを戦ってきた。それは、当然のことだったようだ。筆者が幼い頃から好きだった理由も。
協力:クラシック・モーター・ハブ社、マクグラス・マセラティ社
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