231psと67kWhのシングルモーター版
ボルボのマーケティング部門は、少々先を見誤ったのかもしれない。ブランドに対しては、多くの人が未来的でエコフレンドリーなイメージを抱いていると思う。だが、バッテリーEV(BEV)の販売では、一部のライバルに出遅れた感がなくはない。
【画像】231psのシングルモーター ボルボXC40 リチャージ 競合のBEVクロスオーバーと比較 全112枚
BMWにメルセデス・ベンツ、ジャガー、アウディは、いずれもすでに複数のBEVモデルを提供している。だが、ボルボは少し展開が鈍いようだ。
ボルボ初となるBEV、パワフルなXC40 P8リチャージ、現在のXC40 リチャージ・ツインモーターが登場したのは2020年。2021年にはそのクーペボディ版のC40 リチャージが追加された。基本的には兄弟モデルといって良い。
今回試乗したのは、XC40のエントリーグレードといえる、シングルモーターのXC40 リチャージだ。スウェーデンのブランドが、1歩づつ拡大を続けていることは間違いないけれど。
駆動用バッテリーの容量は、リチャージ・ツインモーターより若干小さい。実容量で67kWhとなり、そのぶん車重は158kg軽い。航続距離は434kmから423kmへ、僅かに短くなっている。
リチャージ・ツインモーターの最高出力は408psもあったが、シングルモーター版のリチャージは231ps。0-100km/h加速は2.7秒遅い7.5秒がうたわれるものの、不足ない瞬発力を備えていることは間違いない。
不満なく速いスタートダッシュ
ベーシックなXC40 リチャージで選べる、コアと呼ばれるお手頃なトリムグレードも設定された。英国価格は4万5750ポンド(755万円)からで、より手の届きやすいものになっている。
リチャージ・ツインモーターは約6万ポンド(約990万円)だから、高価なコンパクト・クロスオーバーだという印象が拭えなかった。それと比べれば安く思える一方で、BEVが内燃エンジン・モデルと比較して高いことに変わりはない。
コア・グレードの場合、高効率なヒートポンプを用いたエアコンも、シートヒーターも装備されていない。どちらも冬の早朝などにはありがたい機能といえる。今回試乗したグレードはプラス。約6000ポンド(約99万円)高いぶん、どちらも備わっていた。
基本的な技術を共有するポールスター2と同様に、XC40 リチャージにはスタートボタンがない。キーを身に着けたまま運転席へ座り、大きなシフトセレクターをDにスライドさせれば発進できる。
シングルモーターで動力性能はツインモーターに劣るものの、33.6kg-mのトルクは瞬間的に発生するため、スタートダッシュは不満なく速い。アクセルペダルを踏み込むと、フロントタイヤが悲鳴を上げる場面もある。
トルクステアも明確に生じる。不快に感じるほどではなかったが。
訴求力あるスタイリング 見劣りする航続距離
日常的な条件なら、XC40 リチャージでも走りは充分以上。高速道路への進入路では、あっという間に110km/hに届いてみせた。ツインモーターの過剰といえるパワーが必要だとは感じさせない。
乗り心地も基本的には変わりない。サスペンションが柔らかく、比較的揺れが大きい。
航続距離は、近年の同価格帯で比べると若干見劣りする。アグレッシブに運転していなくてもエネルギー効率は伸びにくいようで、メーター用モニターに表示される数字は、320km程度に留まっていた。
コンパクト・クロスオーバーの主なユーザーにとって、普段使いなら不足ない距離とはいえる。だが長期休暇の帰省時などは、少々心もとないはず。
姉妹メディアが別の機会に検証した結果によると、理想的な気候条件での航続距離は約363kmだった。気温の低い冬場なら、更に短くなると考えられる。
積極的に電動化技術を取り入れてきたボルボではあるが、市場をリードできるほどのBEVはまだラインナップできていない。ゲームチェンジャーといえる実力を備えるのは、新しいXC90まで待つ必要がありそうだ。
とはいえ、XC40 リチャージのスタイリングには訴求力がある。BEVで長距離走行を考えていないのなら、候補に加えたいクロスオーバーだとはいえるだろう。
ボルボXC40 リチャージ・プラス(英国仕様)のスペック
英国価格:5万1750ポンド(約853万円)
全長:4425mm
全幅:1863mm
全高:1652mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.5秒
航続距離:423km
電費:5.3km/kW
CO2排出量:−
車両重量:1955kg
パワートレイン:永久励磁同期モーター
バッテリー:67.0kWhリチウムイオン(実容量)
急速充電能力:−
最高出力:231ps
最大トルク:33.6kg-m
ギアボックス:−
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みんなのコメント
EVとしての完成度も高く、安全性を売りにするボルボらしい。
ワンペダルドライブも慣れてしまえば使いやすい。