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【試乗レポート シトロエン C5 X】こだわり派をも満足させるもてなし上手

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【試乗レポート シトロエン C5 X】こだわり派をも満足させるもてなし上手

新車試乗レポート [2022.10.03 UP]


【試乗レポート シトロエン C5 X】こだわり派をも満足させるもてなし上手
文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

CITROËN C5 X【グーワールド コラム/ニューモデル】

 日本で急速にファンを増やしている輸入車ブランドのひとつであるシトロエン。洒落たコンパクトカー「C3」やユニークなMPV「ベルランゴ」などが好評で、モデルの価格帯も300万円~400万円台が中心と、実用的かつ身近な存在として認知されていることも躍進のひとつのカギとなっている。そんなシトロエンに、新型クロスオーバー「シトロエンC5X」が追加された。



ラインナップの頂点となるクロスオーバーモデル

C5 X シャインパック
 フラッグシップモデルに位置付けられる「C5X」は、現在のシトロエンのカジュアル&ポップな路線とは少し異なり、より快適性や上質さを意識したアダルトなモデルだ。もちろん、価格も、484万円~636万円と高価。ただシトロエンは、伝統的に快適性の高い上級モデルを得意としており、その快適な乗り味を提供するため、シートや足回りには独自の哲学を貫いてきた。その伝統は、他の最新シトロエンにも恩恵を与えている。そんなシトロエン流の上級車の復活を目指したのが、このC5Xというわけだ。

 7年前に販売が終了した先代のC5は、セダンとステーションワゴンの2本立てであったのに対して、C5Xはクロスオーバーモデルに一本化。セダンの上品さ、ステーションワゴンの実用性、SUVの力強さを組み合わせたデザインと機能が与えられている。ただステーションワゴン調といいながらも、そのリヤが絞り込まれ、そのフォルムは5ドアハッチバックに近い。そのテールゲートの処理は、「CX」や「XM」、「BX」といった往年のシトロエンへのオマージュである。全長4805mmと大きめで、ホイールベースも2785mmとロングで、全高もクロスオーバーながら、1490mmに抑えられているので、スタイリングは伸びやかに映る。これで車高を落とせば、より雰囲気も往年のシトロエン上級車に近づきそうだ。


C5 X シャインパック

ホテルライクで上質なインテリア

C5 X シャインパック
 そんな独創的なスタイルに対して、インテリアは意外なほどシック。ただデザイナーズ家具でまとめられた上品なホテルの一室のよう。

 特にシートのデザインは、アンティークソファを彷彿させるが、座り心地もソフトな感触のソファのようなフィット感がある。その秘密は表皮の内側にあり、シートベースに低反発効果の高密度のウレタンを使い、シート表皮の下には、15mmのもの厚さの柔らかなスポンジを使う凝った作りのため。そこまでシート感触に拘るのには、もちろん理由がある。それが「魔法の絨毯」と称された伝統の乗り味の復活だ。かつてシトロエンの上級車には、独自の油圧サスペンション「ハイドロニューマチック」が搭載されていた。それを最後に受け継いでいたのが、先代「C5」であった。ただ油圧サスは、乗り心地には優れるが、製造やメンテナンスの両面でコスト高に繋がる。そこで最新シトロエンでは、PHCと呼ぶメカニカルなダンパーで、その味わいの再現に取り組んでいる。その印象を強めるべく、シートの演出にも工夫しているのだ。このシート構造は他モデルにも採用されているが、そちらの評判も上々。

 もちろん、快適な空間演出の為に、シートだけでなく、ドアトリムやステアリングなどの触感も大切にし、温かみのある空間作りを目指している。ただ普通じゃつまらないというシトロエンの遊び心が取り入れられており、インテリアの木目調パネルやステッチ、シート表皮などに、シトロエンエンブレムのモチーフであるシェブロン柄(山形ギアのデザイン)を使う。最も分かりやすいのは、シート表面のステッチだが、それ以外の箇所には、その山形模様が、デザインの隠し味としてパターンに反映されている。そんな小さな拘りに、アートやデザインで評価の高いフランスのお国柄が表れているのだろう。

 機能面を見ていくと、コクピット周りは、シンプルに纏められている。これまではステアリングコラムにレバーとして装備されていたACC制御ボタンも、ステアリング上に集約され、使い勝手が向上。デジタルメーターパネルは、昨今の上級車としてはコンパクトだが、これはカラーかつ大画面表示を可能としたヘッドアップディスプレイとの組み合わせで、実用な情報が集約された分かりやすさを優先したためで、シンプルイズベストな考え方なのだ。ただその表示も、デザイン性は高く、シトロエンの流儀が貫かれている。現代の必須アイテムであるインフォメーションシステムは、12インチワイドの大画面で視認性も良好。ワイド画面なので、スマートフォンとリンクさせても、地図と音楽情報など同時に表示できるなど、使い心地も快適だ。


C5 X シャインパック

試乗車はスタンダードな足まわりながら遠出したくなるような乗り味

C5 X シャインパック
 今回の試乗車はC5Xの主力となる「シャインパック」。1.6L直列4気筒ガソリンターボエンジンと8速ATを組み合わせて搭載する。足回りもPHCのみのシンプルな仕様だ。まだ試乗車の用意がないため、味見は先送りとなってしまったが、最上位モデルとなるPHEV車には、PHCに電子制御を加えたアクティブサスペンション仕様となるので、そちらの乗り味に興味津々。なので、既存技術であるスタンダードなPHCに大きな期待はしていなかったのが、正直なところ。

 しかし、良い意味で私を裏切ってくれた。これまでのPHC搭載車と比べても、C5Xの乗り味はダントツに良い。路面状況が良くない箇所も多い首都高で、快適な乗り心地を提供してくれた。まるでリズムを刻むように、路面に変化に合わせて、優しい動きを見せてくれる。路面の凹凸などの衝撃もしっかり受け止めつつ、不快な振動とはしないのは見事であった。

 ハイドロ主体だったかつてのシトロエンとの比較は、人により答えは分かれるだろうが、この乗り味は十分に魅力的だ。ドイツ車のようなしっかりとした乗り味だと、つい飛ばしたくなるシーンもあるが、C5Xの優しい乗り味は、寛ぎ感も高いため、運転中の心も穏やかとなり、ハード面でもソフト面でも乗員を疲れさせない。これならばロングドライブも快適だろうし、ちょっと遠くに出かけたくなる気持ちにもさせてもくれた。ちょっと旅したくなる乗り味とワゴン風のクロスオーバーボディは、まさに理に適ったデザインといえよう。電子制御となるPHEVの乗り味も楽しみだが、ナチュラルさでいえば、ガソリン車のスタンダードなPHCの方が良いかも。その結果は、またの機会にお伝えしたい。


まとめ

C5 X シャインパック
 シトロエンC5Xは、高性能であることよりも、おもてなし上手であることを大切にしたクルマだ。上級車としての心意気は、どちらかといえば、英国高級車に近いかも。ただC5Xは、英国高級車のような格式重視のものではなく、その寛ぎの移動時間は、伝統的なティータイムというよりも、通いなれた洒落たマスターのいる喫茶店のようだと思う。そんない心地の良さを提供してくれるのだ。もちろん、外から見れば、あの個性的なスタイルなので、そんな快適で居心地の良いクルマだとは、誰も思うまい。真実を知るのは乗員だけ。本国のフランスでも、シトロエンを選ぶ人は、拘りの強い人や個性的な人たちらしい。だから誰にでも合うとは言わないし、おススメもしない。ただ、興味があれば近くのディーラーに出向き、少し一緒に過ごしてみると良い。相性が良ければ、最良の相棒となってくれるだろう。付き合ってみると良い奴。それがC5Xという個性的なクルマの正体なのだ。

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