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ベテランの意地と若手の執念、それぞれのアツイ走りがテージャスを揺らす。JNCC第6戦ビッグディア広島

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ベテランの意地と若手の執念、それぞれのアツイ走りがテージャスを揺らす。JNCC第6戦ビッグディア広島

JNCCシリーズ戦の中でも珍しく、ゲレンデではないマウンテンレースになる第5戦、ビッグディア広島。台風14号の接近により開催が危ぶまれたが、無事開催にこぎつけた。前戦の神立の2トップである渡辺学と熱田孝高だけでなく鈴木健二も新型マシンで参戦、事前予測が難しい注目の大会となったのだった。

NEWマシン×鈴木健二、鬼に金棒の速さでヒロシマを制す
鈴木健二のマシンは、JECルスツで日本のエンデューロにデビューとなった新型YZ250F。今年はJNCC2戦(ほおのき・神立)でポイントが無いためチャンピオンの座は見えないが、それでも王座を狙う渡辺や他のライダーにとっても、その走りは驚異となっている。

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スタートは焦らず先頭集団の中で安定した位置をキープしていたが、1周目のウッズを抜けた後の「ラスベガス」では先頭で登場しショートカットをスムーズにクリア。実はこのヒルクライムの麓には深い溝があるのだが、トップ集団でも唯一鈴木だけがその溝のラインを使っており、経験の差が目に見える形となって現れた。

レース中盤までは渡辺学との激しい先頭争いに馬場大貴も加わり、ヤマハ勢の接戦。だが、馬場がピットワークで離れた終盤には、渡辺との一騎打ちとなった。そして渡辺との差が徐々に開きはじめ、最終周では1分を超えるタイム差を付け、広島の勝者に。

テージャスランチが、最も好きだと公言する鈴木健二だが、今戦は相当に苦戦を強いられた。
「このテージャスは昔から幾度となく走っているので、コースの事は知り尽くしているのですが、それでもやっぱりきつくてマシンに助けられたシーンがかなり多かったです。エンジン特性が中・高速でとても伸びるので、普段ならギアを変えるシーンでもそのギアのままいけます。登りなどで回転数が落ちやすいシーンでもかなり粘ってくれたのでとても走りやすかったです。

レース中盤までは学と大貴3人で走っていたけど、給油タイミングにそれぞれの作戦が出てましたね。俺と大貴が給油ピットに入った時に学は入らなかったのでその時に差が空いてしまったけど、なんとかその周に追いつきました。その後はずっとペースを上げたまま走っていたら大貴が離れていって、気づいたら学も離れて行きました。

今年のメインレースは"G-net"と決めているのでチャンピオンは狙っていないです。そもそも2戦出てないので学(渡辺学)とはポイント差が大きいですし」と鈴木。昨今、2021年のエルズベルグロデオ参戦を発表したばかり。50歳間近のホープに、期待が集まる。

ヤマハ勢の強さ
鈴木健二が語る「エンデューロで勝つまでには3年が必要」

鈴木にもモトクロスからエンデューロへ戦うステージを移した時はすぐに結果を出すことはできなかった過去がある。モトクロスから上り詰めて来た鈴木はこう語る。

「モトクロスライダーがエンデューロでコンスタントに勝つためには最低でも"3年"かかります。その3年という期間はモトクロスとは違う体の使い方や、ライン、路面を読む目の使い方に慣れるまでに必要な時間です。その期間中に勝てるレースもありますが、それは運が良かっただけであって、しっかり実力で勝つならやはり3年しっかりやる事が大事です。

これは僕だから3年で勝てるようになったとかではなく、多くのライダーに対して言えることだと思います。実際、学や大貴を見ててもすぐに活躍できたわけではなく、今の走りになるまでそれなりの時間を必要としてますよね。」

さらに鈴木は、新たなチャンピオン候補、熱田孝高についてもこう語る。

「孝高はJNCCでチャンピオンを取れるライダーの1人だと思います。彼はモトクロス世界選手権を走ってきたライダーだからこそ、普通のライダーとは1枚も2枚も違うよね。その経験があるからこそ本気で取り組めばエンデューロにも対応してこれると思います。」

「チャンピオン獲得」のために下した選択
ランキングトップの渡辺は2位鈴木と大きなアドバンテージを築いている。この広島で1位を取れば王座への道筋はほぼ決まるのだが、結果は2位。

渡辺にとっては、執拗にトップを狙うことは得策ではない。
「ポイント的にこの広島を1位か2位取ればチャンピオンも現実味が帯びてくる事はわかっていました。それに、健二さんは過去2戦分のポイントが無く、チャンピオンにはなれませんし、そういう考えもあって今回は健二さんに1位の座を譲りました。健二さんだから1位を譲りましたが、それが他の人であればそんな事はせず、確実に僕が1位を取りにいってましたね。」とコメント。積年のライバルながら、実家は隣どうしという距離の近さ、世界でも類を見ない最高のライバル関係が、1位を譲った形。

「前戦の神立では新型YZ450FXでしたが、今回の広島でのマシンはあえて去年1年乗り込んだ20年モデルのYZ450Fをチョイスしました。前回のレースが終わってから、新型のセッティングを煮詰める事が難しかったので、乗り馴染んだマシンで勝ちに行こうと思ったからです。次の鈴蘭はどのマシンで出るからまだ決めていませんが、作り込み次第で決めようと思います」と、マシンについてもコメントを残した。

「世代交代は本気で狙っている。30歳までに」追い上げる若手の力
1位鈴木健二、2位渡辺学、そして3位に入ったのが馬場大貴。レース前日には、「前回の神立はハイスピードで実質モトクロスの様なレースだったので熱田さんに負けてしまいましたが、今回負けたら焦りますね。」とやはり熱田をマークしていると教えてくれた。

イメージ通り、相当に追い込んだレース展開をモノにできた馬場。
「スタートから狙い通りに出れたのですが、すぐに健二さん、学さんに追い抜かれてしまいそこからは3番手を走ってましたが、途中で2位まで追いつきました。そのままついて行きこっちからスパートをかけて逃げ切ろうと考えたんですけど、学さん達のペースに後半になってからついていけ無かったのが悔しいです。

健二さんと学さんは長い時間をかけて今の地位まで上り詰めているので、僕はその二人に早く追いつきたいです。そのためにもJNCCだけでなくハード系にも出ています。前回も3位で、今回もずっと3位の位置を走っていたので、2位に入ることができれば若手もここまで追いついたんだぞ、とアピールするチャンスでした。でも世代交代は本気で狙っています。期限は30歳になる前に。」と、息は荒い。YoutubeのDBちゃんねるも好評、世間の注目も集める中堅だ。

初のテージャスランチに戸惑う熱田
開幕戦のサザンハリケーン以来、久しぶりの参戦となった田中教世はYAMAHA勢を追うも及ばず結果は4位につけた。「このコースはモトクロスライダーの僕にとっては難しいコースでした。技量や体力だけでなく、エンデューロ用のセッティングをもう少し煮詰めないとだめですね。どうしてもマシンが暴れてしまって大変でした。JNCCの今後の予定はまだ未定ですが、阪下で開催するものならちょっと考えちゃいますね」

前戦の神立では2位の熱田孝高が、広島のコースに苦しめられ結果は5位をマーク。「前回の神立と違って大きなアップダウンは無いですが、コース幅が狭く自分のペースが作れなかったです。これは自分のミスですが、1周目でハデに転んでしまい肋骨を骨折してしまい思うように走れませんでした。そういう点をふまえてもここは難しいコースでしたね。個人的にはスキー場のようなハイスピードがいい」とコメント。現役を退いて、すぐにJECにスポット参戦するなど、要所でエンデューロへチャレンジしてきたこの4年間。荒れたエンデューロ特有のコンディションに、自身をアジャストしてくるのはあっという間のはず。

COMP-AA2の優勝は、鈴木涼太。

「スタートが出遅れてしまって焦った走りをしてしまいましたが、熱田さんと一緒に走る事が多く、後ろから追いかけている中で学ぶ事が多かったです。追い抜くにはまだまだぺースアップが必要なので次の鈴蘭はその辺りを意識して望みたいと思います。」

鹿児島男児、大楽誠也。地元に近い九州、広島のレースにスポット参戦するあるいみレギュラーメンバーで、あっさりAクラスの優勝をかっさらっていく実力の持ち主。

「今年やっとAクラスで優勝できました。レース時間は長かったけど最後まで諦めずに走った結果の1位は嬉しいです。支えてくれた皆さんありがとうございました」クラス2位の保坂修一以外をラップしており、ダントツの速さを見せつけた。

COMP-Bは、初優勝の田上拓。

「初めてCOMP-Bで優勝できてよかったです。四国ベルグも出場予定なのでこの勢いのまま次のレースにも望んでいきたいです」彼は一部から「白井のジャービス」と呼ばれており来年のエルズベルグロデオに参戦する1人。

親子で参戦する瀧村一家の息子、瀧村泰自が今季2度目の優勝。

「ラスベガス(ヒルクライムセクション)の最後のほうがどうしても登れず苦しいシーンもあったのですが、タイヤチョイスに助けられなんとかクラス優勝できてよかったです。」ほおのきでもクラス優勝しており、着々と実力を身につけている。次戦の鈴蘭でも表彰台に立つ姿を期待したい。

次戦JNCC第6戦、ワイルドボア鈴蘭は11月8日開催。エントリー締切は10月26日まで。

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