車のニュース [2022.11.04 UP]
BMW製EVの頂点であるiX M60を試す【九島辰也】
文●九島辰也 写真●BMW
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各メーカーEVの占める割合が増えてきました。日本のメーカーはまだ1モデルでがんばっているところもありますが、ドイツ勢あたりは日々増殖している感じです。メルセデスのEQシリーズ、アウディのe-tronがそんなイメージ。コロナ禍で新車の発表会が行われずニュースリリースに頼っていると、見落とすこともあったのでしょう。「あれ、いつの間にかこんなに増えてる」と思いました。
ここでスポットを当てるBMWもそのひとつ。ラインナップはi4、i7、iX1、iX3、そしてiXと“iシリーズ”が拡大されていました。しかも“M”バージョンもあります。パワー違いのグレードを用意し、さまざまなニーズに応えようという作戦です。ホンキですね。
クルマに詳しい方にとっての“iシリーズ”はi3とi8だと思います。どこよりも早くBMWはEV専用シャシーをつくり、市販車を完成させていました。しかも日本のメーカーがやっていた単なるコンパクトカーではなく、いろいろな提案を行っていたのです。フルカーボンフレームのi3は高級な未来型EVとして、i8は新たなスーパーカーのカタチを我々に見せてくれました。
特にi8は印象的で、カリフォルニア州サンタモニカで開催されたメディア向け試乗会には多くの思い出があります。というのも、信号待ちでたくさんのロコに話しかけられたからです。テスラやレクサスのハイブリッドモデルに乗っているドライバーが、「どこから充電するんだ?」とか、「モーターだけなのか、エンジンを積んでるのか?」と質問してきます。たぶん、世界で一番その辺の意識が高い人たちなのでしょう。みなさん興味津々でした。まぁ、あのスタイリングですからね。そうなります。
そんな“iシリーズ”の進化系が先に記載したラインナップ。既存のプラットフォームを流用したものもあれば、専用設計もあります。その意味では以前より柔軟になったと考えていいでしょう。他のメーカーでは共有シャーシは当たり前ですからね。ライバルよりスタートが早かった分、これまでは鼻息が荒すぎたのかもしれません。
iX M60
それはともかく、先日iXに乗りました。トップエンドのM60です。電気モーターの最高出力は619ps、最大トルクはなんと1100Nmあります。文字通りの“桁違い”ですね。価格も1740万円は立派。もはやスペックも価格もスーパーカークラスとなります。ちなみに、そこまではいらないという方にiX xDrive 40とiX xDrive 50があります。価格はそれぞれ1075万円と1285万円。EV専用設計のフラッグシップですからそのくらいになるのでしょう。とはいえ、iX M60とはクルマ一台分違います。
iX M60は見るからに迫力がありました。写真だとわかりにくいですが、サイズはそれなりに大きく存在感を強く感じます。その要因のひとつは顔。キドニーグリルはどこまで大きくなるのでしょうか。以前BMW本社のデザイン部門に勤める長島さんに「キドニーグリルがなくなる日は来るのか?」と質問したら、「デザイン側から言わせれば、それはいつでもありうる」と答えてくれました。あれから7、8年くらい経ちますが、現実はそれとは違いましたね。
顔以外ではバンパーをはじめとするボディパーツ、それと大径ホイールが目に飛び込みます。調べるとホイールサイズは22インチ。“ヨンマル”というロープロファイルタイヤです。インテリアも個性的です。とにかく大きなタッチ式モニターとセンターコンソールのiDriveに目が止まります。ウッドのプレートにクリスタル?のダイヤル&シフトレバー。強者です。
とはいえ、走りは思いのほかマイルドでした。いきなり最大トルクが立ち上がってドーンと加速する、なんてことはなく、アクセルに対し自然にかつリニアに反応します。ドライブモードにもよりますが、デフォルトはジェントルな走りでした。ただ、その気になれば当然勇ましくもなります。0-100km/h加速3.8秒、最高速度250km/hのデータはハンパありません。アクセルを強く踏み込むとワープするように景色が流れます。EV特有の加速感です。ここまでになると一度サーキットでどんな動きをするのか確かめたいですね。BMW製EVの本領が発揮されると想像します。
というように、BMWは彼ららしいEVを追い求めています。パワーと軽快なハンドリングを併せ持つ感じでしょうか。そう考えると真骨頂はi4 M50ですかね。まだ試乗していないので、できるだけ早くトライして、また報告したいと思います。
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