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野生動物のリアル感がハンパない!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第11回~ツキノワグマ」

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野生動物のリアル感がハンパない!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第11回~ツキノワグマ」

ドライバー2020年3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国を最新SUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。
第11回は、パッと見はかわいいけれど、手足の爪はまさに凶器で野生動物のリアル感がハンパない『ツキノワグマ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。

 
 
クマの目撃情報がある場所へは必ずクマよけの鈴を持参本誌にも書いたが、今年はツキノワグマが日本中で多数目撃されている。昔じゃ考えられない事態である。
今までさんざんラリーで夜に山の中を走ってきたが、クマと遭遇したのは一度だけだ。それほど人里や林道にも出てこなかった。
ただ15年ぐらい前、栃木県で30年以上にわたってクマを撮影している「クマ仙人」と呼ばれる横田 博さんにクマ観察に連れていってもらった。
 

日本に再び帰ってきた人気者を接写!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第10回~ラッコ」

 
 
「ほら、あそこにいるよ」と言われて双眼鏡で見ると、遠くの山の斜面にクマが数頭いたのには驚いた。そして、それに気づかず山の斜面を登っていく登山客も見えた。あまりに距離があるので、われわれが叫んでも彼らには聞こえない。
クマと人はドンドン近づいていく! 危ない! 
ドキドキしながら見守った。
しかし、クマと人間の距離が近づいたところでクマのほうが人間に気づき、回れ右をしてそれていった。もちろん登山客は最後までクマに気づいていない。

 
 
昔からクマはひそかにたくさんいて、臆病なので人間を避けて暮らしていた。それが少しずつ人なれしていって、食糧不足になると人里に現れるようになったのかどうかオイラにはわからない。
ただクマは臆病で、驚かさなければそうそう襲ってはこない。向こうからトラブルを避ける動物だ、と横田さんに教わった。
それをまさに目の前で実感したのだった。
 

 
出会いがしらは不運としか言いようがないが、ハイキングや登山に行く場所がクマの目撃情報のある場所なら、クマよけの鈴を付けていれば、ふいに出くわす危険は減る。こっちの存在がわかっていれば、クマのほうで迂回してくれることが多いのだ。
と言っているオイラは、今回のクマとの遭遇後にあわてて“クマ鈴”を買った(笑)。
 

 
クマの顔は正面から見ると丸顔でかわいいのに、横を向くと鼻先がとがっていて、急に怖い獣顔になる。それも今回まざまざと知った。
 

 
また太い木を簡単にかみ砕き、あの大きな肉球のある手で器用に枝を引き寄せては木の実を食べ、その枝をおしりの下へ押し込んでいく。あっと言う間に寝床のような「クマ棚」が形成されるのも見ることができた。
 

 

 
食事中のクマは一心不乱で、オイラの存在に気づいていてもこっちのほうをめったに見ることもなく、木の実を食べている。
 

 
グミのような赤い小さな実はおいしそうに見えるが、クマが落っことした枝からオイラもつまんで食したら、エグミが強くてとても食えたものじゃなかった!
この登山でオイラはなんと3回もクマと遭遇したのだった。1回はクマが木に登り始めたときにオイラが通りかかったようで、いわゆる出会いがしらだったが、こっちが驚く間もなく、向こうがものすごい勢いで木から滑り降りて逃げて行った!
 

 
逃げ足の速さはものすごい(笑)。しかし、木から降りるときの爪のスゴさを見ちゃうと恐怖を感じる。
あとの2回は木の上で食事中。オイラが手をたたきながら声を出すとクマはしばらくこっちを見ていたが、そのうちオイラのことはまったく眼中になくなり、冬眠のための食事に夢中になっていた。
もうすぐ山も雪が降り始め、彼らも冬眠に入ることだろう。たらふく餌が食えて肥えたことを祈る!
 

「撮影裏話&テクニック」 
 
小型・軽量の望遠ズームレンズで無音の撮影登山が目的で途中に何か動物が出てきたらいいな~という感じだったので、機材は軽くて小さな望遠ズームとワイド系のレンズをザックに詰めて出かけた。

そこで大物に出会ってしまったのだ。いやー、100-400mmでも持っていればクマの顔の表情とかもっと撮れたんだけどな~、というのは後の祭り。

さすがに刺激したくないので近づけない。だから写真はほとんど全部、トリミングをしている。
SONY α9は電子シャッターを選べ、まったくの無音で撮影できる。クマをシャッター音で刺激しないので最高だった。
 

 
α9とタムロンの70-180mmズームとの組み合わせは、クマが真っ黒なのでたまにAFが迷うときがあったが、軽さではこれに勝るものはないセットだった。クマとの遭遇でも最軽量で最大限の仕事をしてくれた。
 
[撮影データ]機材:SONY α9II
レンズ:タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/500秒
絞り:F5.0
ISO:3200
露出補正:+0.7EV
ストロボ:ハイスピードシンクロ
 
 

「今回のSUV……トヨタ ハリアー」

都会的なイメージだがアウトドア的な使い方でもマイナス要素なし! 
 
エンジンとモーターを併用して走行するクルマはもちろん、エンジンを発電のみで使用してモーターで走行するクルマも増えてきている。経済性などの観点からも、それが当たり前のような流れになっていると思い込んでいた。

今回、乗ったハリアーは2Lのガソリンエンジンモデル。とてもシンプルなものだ。

ところが、これが目からウロコの気持ちのいいエンジンだった。組み合わされるトランスミッションはCVT。これも以前は音ばかり先行して車速の乗りが悪く、加速感にタイムラグのあるものが多かったが、どんどん進歩してきてエンジン回転に同調して加速がいい。
そうそうすることはないが、アクセル全開のフル加速。軽快なエンジンサウンドとともにタコメーターの針が跳ねあがり、5000回転から上でもシャープに回り続ける。

これがスポーツエンジン風で気持ちいいのだ。

通常走行から河原などの荒れた場所に入ったときの微低速走行まで、硬い突き上げもなく乗り心地がとてもいい。ワインディングのクルージングもロールは気にするほど大きくなく、ハンドリングは滑らかだ。

インパネのセンター上部にある12.3インチTFTワイドタッチディスプレイはとても大きい。情報量が多いのはいいが、ディスプレイの上端が
フロントウインドーの下部にややはみ出して視界に入るのが個人的に気になった。シートを下げ気味にして乗るのが好みなのだが、チラチラ視界に入ると、狭い道で車幅を把握しづらいのである。

ハリアーの都会的なイメージとは違うアウトドア的な使い方をしたが、マイナス要素はない。4WDではなくFFで岩ゴロゴロの河原を走ってトラクションが安定していたのは、予想外の美点だった。
 


■主要諸元トヨタ ハリアー Z レザーパッケージ
(10速CVT/FF)
全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm
ホイールベース:2690mm
最低地上高:195mm
車両重量:1600kg
エンジン:直4DOHC
総排気量:1986cc
最高出力:126kW(171ps)/6600rpm
最大トルク:207Nm(21.1kgm)/4800rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/55L
WLTCモード燃費:15.4km/L
タイヤサイズ:225/55R19
価格:423万円
 
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている

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