アウディにおけるランドマークの1台
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
自然吸気の4.2L V8エンジンが、7800rpmで生み出す馬力は420ps。最大トルクは43.7kg-mを5500rpmで生み出す。しかも2250rpmから7600rpmという回転域に渡って、最大トルクの90%に達する力を湧出する。
2005年から2008年にかけて製造されていた、B7型のアウディRS4は、記憶に残るスペックを備えていた。当時の自動車メディアは、こぞって感嘆の声を記事に載せた。
AUTOCARでも、アウディにおける、ランドマークに位置付けられるクルマであり、極めて好印象と記している。英国価格は、5万ポンド(675万円)を軽く超えていたが。
今でも興味が掻きたてられるRS4だが、近い将来クラシックとしての評価は高まるはず。状態の良いクルマにしっかりメンテナンスを施し、お金に糸目をつけない、新しいタイプのオーナーが価格動向へ影響を及ぼしている。
3万ポンド(405万円)なら考えてしまうが、英国では1万ポンド(135万円)くらいからサルーンが手に入る。数千ポンド(数十万円)を上乗せすれば、走行距離16万km以下で、状態の良いクルマが視界に入ってくる。
1万5000ポンド(202万円)も払えば、状態に優れるサルーンだけでなく、アバントや、英国ではカブリオレも手にすることができる。
このB7型のRS4には、3種類のボディが用意されていた。4ドアのサルーンとエステートはボディ剛性で勝るが、カブリオレでも驚くほどしっかりしている。電動ソフトトップは21秒で開閉する。ちなみに日本へは、カブリオレは未導入だ。
カブリオレの魅力は、ルーフを開けばV8サウンドを直接楽しめるところ。新車時は6万ポンド近い価格を下げていたが、現在はサルーンとほぼ同じ値段が付いている。
エンジンとトランスミッションは丈夫
アバントは車重が重く、サスペンションはサルーンより硬め。雰囲気は初代のRS2に似たところがある。青色では特に。実用性にも優れ、3種類の中で最も人気が高い。
この型のRS4には、6速MTが組み合わされた。クラシックモデルの場合、AT車よりMT車の方が評価の高い場合が多いから、問題はないだろう。
やや後輪寄りの駆動配分が与えられた、四輪駆動のクワトロも搭載する。わずかなテールスライドも許容するように調整され、コーナリング時の操作を楽しめる。
サスペンションには、安定性を高めるダイナミック・ライド・コントロールも採用。より硬いサスペンションと、車高が低くなる、スポーツパッケージで設定が可能だった。シートのサイドサポートは高くなり、体をしっかり支えてくれる。
スポーツパッケージでは、さらに引き締まった乗り味を楽しめるものの、少々やりすぎに感じる人もいるだろう。標準の、手動調整式サスペンションでも充分だ。
アルミニウム製エンジンは、オイルを驚くスピードで消費する。こまめな補充さえ忘れなければ、故障知らずといって良い。トランスミッションも同様。
電子制御のサスペンションは、そうとはいい切れない。露出したオイルパイプが腐食することがある。多くのメカニズム、駆動系統にはアルミニウムが多用されている。腐食するのは、スチール製部品と接している部分。
アウディでもあり、さらに最上級らしい充分な作り込みが施され、RS4は新車当時の激しい走りにも良く耐えた。購入する場合、下回りも含めてしっかり観察したい。時間を掛けて探してでも、極上のエンジンを手にする価値は間違いなくある。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
点火コイルやプラグの不調による、ミスファイアが起きていないか確かめる。触媒コンバーターへダメージが及ぶことがある。
吸気バルブのカーボン除去は、8万km毎の推奨。オイルクーラーのパイプ周りのサビや漏れも注意したい。同時にオイルサンプやベルトテンショナーの状態も確かめる。
定期的なエンジンオイルの補充が必要。調子の良いRS4のエンジンでも、1600kmで3L程を消費する例もあるようだ。
トランスミッション
特に重大な不具合はないようだが、初期のクルマにはクラッチの不調があり、リコール対象となっていた。クラッチは6万4000kmくらいは走れる。
ステアリングとサスペンション、ブレーキ
パワーステアリング・ポンプからラックまでのパイプは錆びやすい。異音がないかも確かめる。
サスペンションアームのブッシュは傷みやすい。アッパーアームのピンチボルトが固着することもある。アルミ製のホイールベアリング・ハウジング内にある鉄製の部品で、外れない場合、ハウジング毎の交換となる。
ステアリングを目一杯切って、コントロールアームからノックするような音がないか確かめる。ブレーキのジャダーは、ダストを飛ばすだけで落ち着くことがある。ブレーキディスク交換は、もし正規部品を選ぶとかなり高価。
ボディとインテリア
ホイールアーチ内のこすり傷を確かめる。ボディは修復箇所から錆びることがある。バッテリートレイ周りからのサビは珍しくない。
シートは、運転席側のサイドサポートの状態を確かめる。
専門家の意見を聞いてみる
デビッド・ストリンガー ADSオートモーティブ・ワークショップ・マネージャー
「近年、整備でRS4を目にする機会が増えています。携わるほどに、将来的に残しておく価値があると感じます。現在のRS4には、沢山の不調を抱えているクルマも少なくありません。以前のオーナーが理解せずに、適切な整備や維持を行っていなかったからです」
「最近人気の注文は、標準のダイナミック・ライド・コントロールを、ビルシュタインやKW製のサスペンションに交換する内容です。街乗りでの快適性が良くなります。KW製の車高調整キットも人気ですね」
「クルマの車高をどれだけ低くするかはドライバー次第ですが、最近はノーマル時の車高に戻す人も多いですよ。スピードバンプや歩道の段差などで、オイルサンプを打つ可能性が低くなります」
知っておくべきこと
ダイナミック・ライド・コントロールは、クルマの対角線上のダンパーを油圧ラインで結び、コーナリング時のロールやピッチングを抑えるシステム。右前と左後、左前と右後がリンクされる。
効果的なシステムで、AUTOCARは新車時のテストで、クルマの安定性を高く評価している。だが、圧力を保つことが重要。シールは経年劣化で膨らみ、フルードが漏れ、ショックアブソーバーの圧力を下げてしまう。修理は安くは済まない。
いくら払うべき?
1万ポンド(135万円)~1万3999ポンド(189万円)
英国では16万km以上の、走行距離の多いサルーンが中心。中には整備記録がしっかり残るクルマも含まれる。
1万4000ポンド(190万円)~1万6999ポンド(229万円)
サルーンが中心だが、アバントとカブリオレも含まれてくる。多くは状態良好で、走行距離は12万8000kmくらいまで下がってくる。
1万7000ポンド(230万円)~2万1999ポンド(297万円)
かなり状態の良いクルマが何台か。
2万2000ポンド(280万円)~2万8000ポンド(378万円)
走行距離4万8000km以下の、極上車が中心。
英国で掘り出し物を発見
アウディRS4 登録:2006年 走行:15万9300km 価格:1万2989ポンド(175万円)
アウディのディーラーで整備を受けてきた、状態の良いサルーン。2006年式で14万8000kmの、個人売買車両も同等の値段で見つかった。こちらの場合、ビルシュタイン製のショックアブソーバーと、オイルクーラーのパイプが交換済み。カーボン除去もされ、ピレリPゼロ・タイヤを履いている。
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みんなのコメント
これだけのスペックの車はもう発売されないんだろうな。