2018年7月19日から、ガソリンエンジン車が発売開始された新型フォレスター。2Lハイブリッドのe-BOXER、アドバンスグレードは9月14日からの発売となる。
2018年6月18日の発表から約1カ月半が経った8月5日時点での受注台数は、月販目標台数2500台の約4倍にあたる約1万台と、上々の滑り出しと言っていいだろう。
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さて、その新型フォレスターに自動車ジャーナリストの国沢光宏氏が初試乗! 先代モデルから、走りは劇的に進化したのか? また、宿命のライバル、エクストレイルやCX-5に対して、アドバンテージはあるのか? 「あんまり変わってないじゃないか」と言われる新型フォレスターだが、その進化具合を国沢光宏氏がきっちりチェックします!
文/国沢光宏 写真/平野 学
初出/『ベストカー』2018年8月10日号
■新型フォレスターの実力をON/OFFで徹底的にチェック!
フォレスターが7月19日から発売となった。ネットなどで評判を調べてみたら「従来型と見分けつかない」とか「なんでターボをやめたの?」みたいな意見も多いようだけれど、やはり実車で確認するまでは判断しにくい。「写真で知ってても本人に会って話をしたらまったくイメージ変わった」みたいなことだって多いですから。ということで新型フォレスターにON/OFFでガッツリ試乗してみました。
まずクルマ好きにとって気になる新登場の2.5L直噴のガソリン車から。新型フォレスターが採用しているプラットフォーム(SGP)は、インプレッサでデビューしたスバル開発陣入魂の作。インプレッサもXVも、サスペンションの奥行きという点でドイツ車に勝るとも劣らず。そもそもボディの一体感がスゴイ。日本車にありがちな「ブルブル感」なし。
高級な自転車やスキー板、ゴルフクラブのように、硬いけれどしなやかさを持っているのだった。184㎰だとアクセル全開しても余裕。400㎰エンジン積んで2サイズくらい太いタイヤ履いたってイケそうな雰囲気。
ただ従来型がダメかと言うと、そんなこともない。今でも同じクラスのライバル車に負けておらず。新型が飛び抜けてよいのだった。
絶対的な出力だけれど、今までの2Lターボと比べたら大いに物足りないと思う。最大トルクなど半分になっちゃいますから。ただパワー不足かと聞かれたら「いいえ」と答えておく。
街中のドライバビリティなどはブースト上がらないとパワー出ないターボより、むしろレスポンスよい。このあたりはみなさん試乗して確認していただいたほうがよさそう。少なくとも2Lハイブリッドより元気だ。
■新ハイブリッドe-BOXERの走りはどうか?
続いてe-BOXERと呼ばれる簡易型ハイブリッド。期待して乗ると「あらら?」。アクセル開け気味で走ったらモーターの存在感なし。エンジン出力145㎰に対しモーター出力は13.6㎰しかない。10%以下だと体感できないと思う。
ただ街中でホンの少しアクセル踏んだようなケースだと、明確にモーターが反応している感じ。あまりアクセルを踏まない人ならハイブリッドも面白いと考える。
■エクストレイル、CX-5とガチンコ対決
さて、スバルファンならフォレスターしか眼中にないだろう。けれどよいクルマを考えている人にとっちゃ、2・5LはCX-5とガチ。2Lハイブリッドだとエクストレイルとガチ勝負になる。CX-5もエクストレイルも新型フォレスターと同じDセグメント。
ボディサイズだが全長はエクストレイルが最も長い4690mm。逆にCX-5は4545mmだから145mm短い。フォレスターはその中間の4625mm。全幅は3台ともに1800mmを超え、フォレスターが1815mm、エクストレイルが1820mm、CX-5が最もワイドな1840mm。
スバルも強く意識しているらしく、売れ筋グレードの価格はCX-5の売れ筋グレードと揃えた。参考までに書いておくと、自動ブレーキ性能はJNCAPの試験結果を見るかぎり、新型フォレスターよりCX- 5やエクストレイルが優勢。
■悪路走破性はフォレスターが一番いい!
悪路走破性についていえば、駆動力伝達機能はすべて電子制御のため最終的には最低地上高で決まってくると思う。すなわち220mmの新型フォレスター>210mmのCX-5>205mmのエクストレイルだと思っていい。今回も新型フォレスターの〝よい仕事ぶり〟をチェックできた。
新型フォレスターとCX-5を乗り比べたらどうか? 少しばかりCX-5は「緩さ」を感じてしまう。ワインディングロードをハイスピードで走っていると思っていただきたい。
新型フォレスターのハンドル切ると、前輪と同じくリアが沈み込むようになっており(スバルの伝統的なセッティング)、安定感あり軽快に曲がっていく。ボディ剛性感高く気持ちイイ!
CX-5で同じことをすると、まず前輪がボヨ~ンと沈む。リアは沈まないため、前ノメりになるのだった。当然のごとく前輪荷重です。スタビリティを確保できる半面、スポーティ感薄い。典型的な実用車のハンドリングである。フロントの重さも感じさせます。
スバルとか三菱って、フロント重いのに軽く曲がる味付けができるからタイしたもんだ。楽しさで評価するなら、新型フォレスター優勢。
動力性能は80kgの車重差分違うと思っていい。細かくスペックを見るとわずかにCX-5のエンジン出力が勝るため、実質的なデータを取ったなら新型フォレスターの2人乗りと、CX-5のひとり乗りで0→400m競争したらよい勝負かもしれません。むしろ変速機のキャラクターの違いのほうが大きいかも。CVT好きか、6速トルコンAT好きか、ということです。
e-BOXERとエクストレイルのハイブリッドを比較するとどうか? 動力性能や「ハイブリッドらしさ」はエクストレイルに軍配をあげておく。とはいえ、いかんせんプラットフォームが古くなってしまった。従来型フォレスターと比べたって厳しい感じ。世界TOPクラスのシャシー性能を持たせてきた新型フォレスターと比べられたら、大いに厳しい。
■総合点は3車種中、フォレスターがナンバー1!
果たして新型フォレスターはDセグメントSUVのなかで存在感を出せるだろうか? おそらく「スバルの売る気」しだいだと思う。性能でもデザインでも安全でも燃費でも飛び抜けていないため、地味なアピールをしていたら埋もれてしまうかもしれない。
逆に新型フォレスターのすばらしい上質な乗り味がキッチリ訴求できたら、デザインを含め、飽きのこない、よい相棒になってくれるだろう。
果たして3車種どのクルマがナンバー1なのか、採点チェック! 今回は走りに重きをおいたため、走り中心の採点項目を作って採点した。動力性能、ファントゥドライブ度、パワー感、加速フィール、操舵応答性、乗り心地、静粛性、自動ブレーキ性能、悪路走破性を採点した。
ほぼすべての項目にわたって、エクストレイル、CX-5を上回った。総合点71点で1位はフォレスター2.5L、2位は64.5点でフォレスター2LHV、3位は60点でCX-5、2.5Lガソリン、4位は58.5点でエクストレイル2LHV、5位は56点でエクストレイル2LHVとなった。
■BC執筆陣による新型フォレスターの評価
最後にベストカーレギュラー執筆陣による新型フォレスターの評価を紹介しよう。
●鈴木直也
SGPの進化は〝骨太〟な信頼感。最初に旧型を乗ると悪くないと思うが新型に乗り換えると「ハンドリングでも乗り心地でも、ソリッド感がぜんぜん違う。
旧型を100点としたら125点くらいの進歩はある。エンジンは2.5Lが基本で、これはSUVというクルマの性格にピッタシ。穏やかでトルク感に余裕があり、ウェルバランスで好ましい。
ただ、ドライブモードを変えたり、いろいろ試して面白いのはe-BOXER。高回転域もこちらのほうがスムーズだし、モーターでグッとアシストする感覚も楽しい。ボクが買うならこっちだな。
●渡辺陽一郎
高速道路や峠道で運転を楽しむなら、客観的には2.5Lで18インチタイヤを履いたプレミアムを選ぶ。WLTCモード燃費も郊外や高速道路では2.5Lがe-BOXERよりも優れるからだ。いっぽう街中が中心なら市街地燃費の優れたe-BOXERのアドバンスが適する。
しかし主観的な満足度では、使い方に関係なくアドバンスだ。ハイブリッドなのに価格はプレミアムと7万5600円しか違わず、10万円以上のドライバーモニタリングシステムも装着。
通常はハイブリッドの価格が20万円以上高いから、減税なども含めればアドバンスは30万円以上お得。旧型を100点とすると120点だ。
●岡本幸一郎
しっかりとした基本骨格とよく動く足回りといったSGPの恩恵をより感じたのは2.5Lのほう。2.5Lのほうが乗り心地がよくてグリップも高く、4輪がしなやかに路面を捉える感覚。
揺り返しなど挙動の乱れも小さく、ハンドリングもニュートラルに仕上がっている。全体的に2.5Lのほうがまとまりはイイ。
動力性能についても、ハイブリッドはやや物足りなさを感じるのに対し、2.5Lは充分。トルクの出方が素直で乗りやすく、よりリニアになったCVTも手伝って印象は上々。ハイブリッドは大人しく流すほうが向いている。
旧型からの進化度は、旧型を100点とすると125点。実はもうちょっと高くしたかったくらいだが125点にとどめた。それくらいよかったということだ。
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