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最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 前編

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最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116 280SEから450SEL 6.9まで 前編

一途なブランド信者を生み出したW116型

今から半世紀前、1972年に発売された初代メルセデス・ベンツSクラスは、一途なブランド信者を生み出した。ドイツ・シュツットガルトの技術力を、改めて知らしめた存在だった。

【画像】最初から最高だった メルセデス・ベンツSクラス W116と現行のW223 クーペも 全117枚

W116型はより速く、より静かで、より美しかった。好き嫌いは別れたかもしれないが、ここまで完成度が高く現代的な設計の4ドアサルーンは、同時期には存在しなかった。

発表は1972年のドイツ・フランクフルト・モーターショー。当初は280Sと280SE、350SEでスタートし、1980年にW126型へバトンタッチするまでに、47万台以上が公道へ降り立っている。

人気の獲得とともにエンジンのバリエーションは増え、最終的に2.8L直列6気筒にはキャブレターとインジェクションを設定。V型8気筒のシングルカムには3段階の排気量が設けられ、3.0L直列5気筒ディーゼルターボも北米限定で用意された。

W116型の開発が始まったのは、1960年代半ば。フリードリッヒ・ガイガー氏が手がけたスタイリングは、1969年に決定していた。先代に当たるW108型よりボディサイズは長く広く、ひと回り成長していた。

見た目の特徴といえた、二重のバンパーは継続。フロントガラスには雨水を気流でそれさせるディフレクターを備え、後続車が発見しやすいよう、大きなテールライトには汚れを防ぐリブが与えられていた。

乗員を危険から遠ざける高級サルーン

ホイールベースはW108より約125mm延長されたが、低めの全高と寝かされたフロントガラス、全面的に向上した安全性などが影響し、車内空間は拡大していなかった。追突時に備えるべく、燃料タンクは荷室のフロア下からリアシート直後へ移動されていた。

約100kg増しの車重と引き換えに、ルーフやピラー、ドアなどは頑丈さを増していた。1978年には同社として初めて、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)を標準で装備。シートベルトはもちろん、応急処置キットや三角表示板も最初から付いていた。

その結果、Sクラスは安全な移動手段として広く認知された。乗員を危険から遠ざけるラグジュアリー・サルーンといえた。

パワーステアリングも標準。安定性を高めるゼロ・オフセットのステアリング設計が与えられ、アンチダイブ機能を備えるダブルウィッシュボーン式のフロント・サスペンションと組み合わされている。

リア・サスペンションは、トレーリングアーム式を採用。それまでのスイングアクスル式から一新されていた。

トランスミッションは、280には4速マニュアルか4速オートマティックを設定。V8エンジンには、3速オートマティックが組まれた。

リアシートでくつろぎたいオーナーのために、1973年にはロングホイールベース版の450SELが登場。オーバーヘッドカムの4.5L V8エンジンが積まれ、350SEより増加した重量を補っている。

多くの著名人に愛された450SEL 6.9

この450SELと、標準ホイールベース版の450SEは、1974年に欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。オイルショックによるガソリン価格の高騰に見舞われるなかで、販売は好調だった。

ボディが重くギア比が高いわけでもなかったW116型は、燃費が良くなかった。それでもアメリカでは飛ぶように売れ、提供が追いつかなかったほど。現地のキャデラックやリンカーンは、卓越したドイツ車に並ぶ訴求力を獲得できていなかった。

英国でも、ジャガーXJ12の方が速く乗り心地は洗練されていたものの、支持を集めた。輸入代理店は、特に最上級の450SELを積極的に輸入している。ヘッドライト・ワイパーにパワーウインドウ、バキューム式の集中ドアロックといった装備を満載して。

続く1975年には、6.9Lという大排気量のV8エンジンを積んだ、450SEL 6.9が登場。通常の4.5L版とは、トランクリッドの小さなエンブレムとワイドなタイヤで、違いを控えめに主張した。

この450SEL 6.9は、F1ドライバーだったジェームス・ハント氏を筆頭に、多くの著名人から愛された。単に大型エンジンのW116型というわけではなく、操縦性に優れ、最高速度も高かった。さらに、当時のアメリカの排出ガス規制にも対応できていた。

ハイドロニューマチックを採用

450SEL 6.9に積まれたM100型というV8ユニットは、重心を落とすためドライサンプ化。排気量は6834ccまで拡大され、最高出力290psを実現していた。0-100km/h加速7.2秒は、この大きさのサルーンとして当時は相当なダッシュ力といえた。

Sクラスのフラッグシップとして上質な乗り心地を得るため、サスペンションにはハイドロニューマチックを採用。技術的にはシトロエンのものと似ているが、特許権を侵害しないほど内容は異なっていた。

通常のW116型に装備されるコイルスプリングのかわりに、ガスが充填されたスフェアとダンパーがボディを支持。スプリングのようにもダンパーは動き、圧力が高まるほど硬さが増した。フルードの量で車高の変更も可能だった。

450SEL 6.9の価格は、アメリカでは3万8000ドル。英国でも、V12エンジン搭載のジャガーより1万ポンドも高額で売られた。そのため製造数は限られ、最多の1979年でも1839台。現在ではマニアからの注目度が高い、貴重なW116型となっている。

この続きは後編にて。

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