愛してやまないポケット・ロケット
執筆:AUTOCAR UK編集部
【画像】気軽に楽しめるポケット・ロケット【すべてのクルマを写真で見る】 全133枚
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)
海外では、コンパクトでありながらスポーツカーばりの走りを楽しむことができるクルマを「ポケット・ロケット」と呼ぶことがあるようだ。要はポケットサイズのロケットということだろう。
欧州ではポケット・ロケットへの注目度は高く、警察官を怒らせることなく公道で思い切り楽しむための最良の方法、なんて言われている。直線での加速力も重要だが、ポケット・ロケットの良さは、ハンドリングとシャシーの扱いやすさ、そして低コストでビッグスマイルを得られることにある。
最小限の出費でドライバー・エンターテインメントを見事に実現してくれるクルマが欲しいなら、このリストに並んでいるようなポケット・ロケットがお勧めだ。
1. フォード・フィエスタST
この最新のフィエスタSTの発売により、フォードはポケット・ロケットのトップ10に返り咲いた。これまでと同様、フィエスタは卓越した性能を発揮し、手頃な価格でスリルあるハンドリングを味わえ、驚くほどのパンチ力と日常的な使い勝手の良さを魅力的に組み合わせている。
英AUTOCAR編集部も優れたドライバーズカーとしてフィエスタSTを度々紹介してきたが、攻守兼ね備えた万能ハッチバックとして高次元でバランス良くまとめられている。
しかし、欠点がないわけではない。例えば、新開発の3気筒エンジンは十分なパンチ力とスムーズさを備えているが、ホットハッチに期待されるような高回転域での元気なキャラクターが見当たらない。また、キャビンは地味でプラスチッキーであり、一般道での乗り心地は非常に硬い。
しかし、適切な道や条件下であれば、フィエスタSTほど魅力的なスピード感とシャープなハンドリングを安価に提供できるクルマは他にはない。素晴らしいドライバーズカーなのだ。
2. ヒュンダイi20 N
手頃な価格のパフォーマンスカーの作り手として、最近見過ごせなくなってきたのがヒュンダイだ。その最大の理由は、ラリーにインスパイアされた新型ハッチバック、i20 Nにある。
このクルマは、上位車種のi30 Nよりもシンプルかつ直接的に、クラシックなホットハッチになろうと試みている。小型軽量であることはもちろん、アクティブ・ディファレンシャルの代わりに従来型のリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを採用し、パンチの効いた1.6Lターボエンジンと6速MTを搭載。アダプティブ・ダンパーではなく優れたパッシブ・ダンパーを装備している。
その結果、i20 Nは、本物のラリーカーのように慎重に研ぎ澄まされたキャラクターを持つことになった。ボディコントロール、高速走行時の正確さと落ち着き、ステアリング精度のすべてが、このサイズのクルマではめったに見られない水準に達している。その俊敏さは、204psしかないクルマとしては予想以上に高い。
標準モデルのi20は、この10年間で欧州の列強と肩を並べるようになったメーカーだけあって、室内の広さや装備も驚くほど充実している。i20 Nに欠点があるとすれば、やや落ち着きすぎていて、スリルに欠けるという点だろう。人によっては、もっと速いクルマを求めるかもしれない。
3. ケータハム170 S & R
ご覧の通りハッチバックではないし、販売チャートの常連というわけでもないが、比較的手頃なドライバーズカーを語る上で、ケータハムを外すことはできないだろう。
最新の「セブン」である170は、ケータハムがこれまでに製造した中で最も軽量である。セブン160に採用されたスズキ製660cc 3気筒ガソリンエンジンの最新版を搭載し、車重が440kgと軽量であることから、モデル名の由来となったパワーウエイトレシオは「170」となり、日本の軽自動車規格も満たしている。
英国では、自分で組み立てる用意さえあれば、オプションをつけても2万5000ポンド(約390万円)以下で手に入れることができる。日本では170Sが539万円(税込)からとなっている。
このケータハムは、控えめながらも好感の持てるパワー・デリバリーとエンジンサウンドで、独自のキャラクターを完成させている。ライブリアアクスルと控えめな出力により、他のセブンほどのやんちゃさはない。わずか11.8kg-mのトルクは、リアアクスルを楽々と駆動できるものではなく、タイヤを唸らせるよりも単純にスピードを出す方が楽しい。
最高のケータハム……ではないかもしれないが、それでも同じ出費で手に入る他のクルマよりも楽しいし、維持費も含めて考えれば、所有にかかるコストは安いと言えるのではないだろうか。ホットハッチのような使い勝手や速さがないのは明白だが、このクルマを運転する機会が訪れたときには、運転の楽しさを実感できることだろう。
4. ミニ・クーパーS
現代のミニは、魅力的なポケット・ロケットをより高級で洗練したものとなっているが、子犬のような素直なハンドリングもまた、同様に鮮明にこのクルマを定義している。
このクラスでは、フィエスタSTの方がはるかにシャープでしっかりしたパッケージを持っている。しかし、グリップ、ボディコントロール、パフォーマンス、そして価格がうまく調和したオールラウンダーとして、ミニ・クーパーSは評価に値する。
このリストの他のクルマのように街中での運転に疲れたりすることはないだろうし、「BMW」の存在感がかなり大きくなっているにもかかわらず、適切な道路環境ではミニが昔から得意としてきたゴーカートのような走りの特性がふんだんに発揮される。
5. マツダMX-5(ロードスター)
世界で最も有名なスポーツカーの1つであるマツダMX-5(ロードスター)。搭載されている働き者の1.5L 4気筒エンジンと、クルマが本来あるべき姿に焦点を当てたシンプルな機械的・装備的仕様には多くのドライバーが満足できるだろう。
1.5Lエンジンの出力は132psで、初代の1.6Lよりもわずかにパワーアップしている。軽快に回せる魅力も現代に引き継がれている。だが、上記のケータハムと同様に、MX-5は小さなトランクを持つ2シーターに過ぎない。おそらく現代のセブンよりもかなり日常的に使用できるだろうが、多用途性という点では3ドアハッチバックにさえ及ばない。
しかし、このクルマの走りには、前輪駆動車にはない繊細さと純粋さがある。カントリーロードを駆け抜けるときの独特の味わいは、他のスポーツカーにはない特別なものだ。このクルマの性能を引き出すのは簡単で、引き出すとちょっとした発見がある。
6. フォルクスワーゲンUp! GTI
Up! GTIは、最もパワフルなクルマでも、技術的に最も洗練されたクルマでもないことは明らかだ。実際、このリストに掲載されているほとんどのクルマは、Up GTIに遅れを取ることはないだろう。
しかし、そのような理由で評価するのは、このクルマの存在意義を完全に見失っていると言える。そこそこの速度で、ドライバーからビッグ・スマイルを引き出すことができるのが、小さなUp! GTIの魅力なのだ。機会があれば試乗してみることをおすすめする。
3気筒エンジンは活発だし、曲がりくねったワインディングロードを免許証を脅かすことのないスピードで走り回るその姿は、何年も大切にしたいと思えるものだ。楽しさというものが、これほどまでに愛すべきパッケージとなっているクルマはほとんどない。おまけに見た目も最高だ。
7. スズキ・スイフト・スポーツ
3代目となるこのスイフト・スポーツは、これまでのモデルとは一線を画している。まず、自然吸気エンジンがターボエンジンに変更され、さらに電動化された。価格も上がったことで、欧州ではフォードの新型フィエスタSTなどとも競合することになった。フィエスタSTは、ドライバーズカーとして優れているだけでなく、はるかにパワフルだ。
それでも、このクルマには気に入った点がたくさんある。期待通りの機敏さを見せてくれるし、コーナー途中のスロットルやブレーキのレスポンスも良い。ドライビング・ポジションは非常に的確で、価格に見合った標準装備もたくさん用意されているが、残念ながらかつてのように回転数を上げようとする意欲は湧かなかった。
8. フォルクスワーゲン・ポロGTI
最新のポロGTIは、不動の人気を誇るポロの単なるスパイシーなグレードではなく、信頼の置けるパフォーマンス・ハッチバックとなっている。
レジェンド的なゴルフGTIとエンジンを共有しており、若干性能を落としているものの、かなりのレベルのパフォーマンスを実現している。また、洗練されたシャシーにより、どんなに荒れた道路でも落ち着きとダイナミズムを発揮する。
丸みを帯びた魅力的なクルマで、その能力に対する自信を十分に感じさせてくれるが、個性や楽しさの面ではもう一歩踏み込んで欲しいところだ。このタイプのクルマでは、間違いなくそれがすべてではないだろうか。
9. アバルト595コンペティツィオーネ
アバルト595コンペティツィオーネに不足しているものがあるとすれば、それはキャラクターだ。エンジンをかけると、1.4Lのターボ4気筒がフィアット500のキュートなイメージとはまったく相反するアグレッシブな音を立てて動き出す。そして、このサイズのクルマでは考えられないような加速性能を見せつける。
しかし、いくつか問題がある。まず第一に、より完成度の高いポケット・ロケットに比べて価格が高いこと、そしてダイナミズムが十分ではないことだ。しばしばアンダーステアに陥り、ライバルよりも低いコーナリングスピードで多くの操作をドライバーに要求する。室内は比較的狭く、ドライビング・ポジションも良くない。
このように、この小さな騒々しいトラブルの塊は、ドライバーズカーとしては不完全なスタートを切っている。しかし、それが笑みを誘うのもまた事実である。
10. ミニ・エレクトリック
電気だけで走るコンパクトカーは、この10年ほどの間にモデルラインナップの中で広く浸透しつつある。ダイナミクスは昔ながらの性能重視のパフォーマンスカーには及ばないが、このリストで言及する価値のあるクルマがあるとすれば、それは可愛くて個性的なミニ・エレクトリックだ。
トランスミッション、クラッチペダル、そして高回転のピストンエンジンがないと、この種のクルマは本当の意味でドライビング・ダイナミクスを高めることは難しい。しかし、ミニはいつものようにフラットでバランスのとれた機動力、大胆で直感的なステアリング、そして比較的引き締まったボディコントロールを組み合わせて、それを実現している。
ミニ・エレクトリックは航続距離を追求せず、その代わりに重量を減らし、パフォーマンスを向上させ、走りの面での妥協を最小限に抑えることができた。その代償として、航続距離は約200kmにとどまるが、その分ミニのエンブレムにふさわしい勢いのある加速とコーナリングを実現した。
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みんなのコメント
それならばアルトワークスとかあるじゃん