■欧州では販売されない新型Z
日産の北海道陸別試験場で、新型フェアレディZ(RZ34)を全開で試乗することができた。
新型フェアレディZは、なぜ「Z35」を名乗らないのか。開発陣が明かした本当の理由
エンジンが3L・V6ツインターボになったことに加えて、「クルマと路面の接地性大きく見直した」(開発者)という指摘通り、基本的にはZ34と同じプラットフォームながら、ハンドリングも乗り味も「Z34とはまったく別物」に感じるほど、RZ34はクルマとして大きく進化していた。
これほどまでに完成度の高いRZ34だが、気になるのは仕向け地(販売する国や地域)についてだ。
日産が最重要視するのは、当然アメリカだ。そのため、ワールドプレミアについても、アメリカのZファンとオンラインでつないで現地の盛り上がりを紹介し、また会見の全体を通じて登壇者は英語で話した。
そんなアメリカについて、現在は商品企画部ブランドアンバサダーの田村宏志氏に「ところで、RZ34のグローバル販売で、アメリカの比率は具体的にどのくらいか?」と聞いてみた。
すると、「7割から8割」という。これは、長年に渡りアメリカで生活し、様々な場面で歴代Zに接してきた筆者の予想より高い割合だったので少し驚いた。そこで、「他の仕向け地はどうか、例えば欧州は?」と聞くと「欧州では当初から、販売計画はない」と言い切った。その理由については「様々な規制があるから」と言うに留めた。
筆者が考えるに、CAFE(企業別燃費規制)、音量規制さらに欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)による「欧州グリーンディール政策」での「2035年までにEU域内で(事実上)新車100%がZEV義務化」など、ガソリン車スポーツカーにとってハードルとなる規制は様々ある。
また、日本のスポーツカー人気が最も高い英国(EU域外)では、2030年までにガソリン車販売禁止を目指しており、ハイブリッド車もこれに含まれない方向で調整されている。
そもそも、欧州におけるZの販売台数は極めて限定的であり、グローバルでの販売を考えるとRZ34は規制対応への難しさも加えて考えたうえで、仕向け地から除外することになったと言えるだろう。
■Z33で新旧ファンがうまく入れ替わったアメリカ
では、Zはなぜアメリカで人気が高いのだろうか? それは、アメリカ人にとってZは「唯一無二」の存在というイメージが強いからだと思う。
原点は、当然ながら初代「S30」だ。
アメリカでは「Z-car (ジィーカー)」という愛称がある。初代のS30がアメリカに渡った1970年代前半といえば、アメリカでは排気ガスに対するマスキー法が施行され、ビッグブロックV8のアメリカンマッスルカーのほとんどが市場から一気に消えた時期である。
そこに登場したS30は、小ぶりで精悍で走行性能が高く、しかも当時としてはかなりリーズナブルな価格設定だったため、多くのアメリカ人の心をつかんだ。その後、S130、Z31までは着実に、S30のユーザーからの買い替え需要があった。
それがZ32になると、価格が多少上がったことや、商品性が少し変わったことで、日産の見込みより販売台数が伸びなかったという事実がある。
そんなZ32での教訓を経て、走り味やエンジン・マフラー音での主張を強めたZ33が登場する。この時点で、じつはZオーナーの平均年齢はかなり高齢化していたが、刺激の増えたZ33を多くのアメリカ人が歓迎した。
一方、1990年代末から2000年代初頭までの短期間に、米西海岸を中心にジャパニーズチューニングカーブームが起こり、ジェネレーションX(1965~80年生まれ)を中心としてZを含む日本車スポーツカーの新しい愛好家が増えていった。RZ34はジェネレーションXや、それに続くジェネレーションYなどから高い支持を得ている。
このように、アメリカではZ33で新旧Zファンが上手く入れ替わり、Z人気を継続できたと言えるだろう。
〈文=桃田健史〉
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みんなのコメント
Zは既に受注停止なんだよね。
欧州で売れないから販売しないってこと。