1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は1993年の第30回ショーを振り返ってみたい。
バブル景気が崩壊。夢より現実に即したモデルが増える
1993年の第30回ショーは、バブル景気が崩壊し長期不況の真っ只中で、会期が2日短縮されたこともあり、入場者数は前回より20万人減となる180万人強にとどまった。展示車は全出品台数の3分の1を参考出品車が占めたが、夢より現実に即したものが多く、1~2年後に発売を控えた次期型モデルの展示も目立った。コンセプトカーは安全や環境に取り組んだものが主流となり、4WDのRV系モデルが都会型に変化していったのも特徴であった。
■スバル SAGRES(サグレス)
セダンとワゴンの枠を取り払ったニューカテゴリーの4WDスポーティワゴン。スバルは「ロングホイールベース・ショートオーバーハング、キャブフォワードデザインとワイドトレッド、ロープロファイルランフラットタイヤによる斬新なプロポーションの中に、キャビンのフレキシビリティを盛り込んだ、近未来を想定したアグレッシブな提案」と説明した。全長4330×全幅1770×全高1310mmのボディ前端に縦置きされるエンジンは、2カム選択式可変動弁機構付きの2L 水平対向4気筒DOHCで203pを発生。トルコン付きのHT(ハイトルク)-CVTを介して4輪を駆動する。キャビンでは、逆位相の音で車内騒音を打ち消すANC、カーナビ、TV、オーディオ機能を持つマルチインフォメーションシステム、250mmのパワースライドが可能なリアシート、完全フルフラットフロアのカーゴルームなどでワンルーム感覚のフレキシビリティを実現。ICV(インテグレーテッド コントロール ビークル)と呼ぶ近未来のセーフティテクノロジーも搭載される。
■日産 AP-X
環境へのダメージを抑えつつ走る喜びを追求した、次世代の高性能2+2座スポーツクーペ。空力を極めたスタイリングや、日産の超高速実験で得たノウハウを生かしたインテリアでドライバーに高揚感を与える「AP(アトラクティブ・パフォーマー)」をテーマに開発された。250ps/30.0kgmのパワースペックを発生する3LのV6 DOHC(VQ-Xコンセプト)をフロントに搭載し、トロイダルCVTを介して後輪を駆動するFRだが、エンジンの軽量化(乾燥重量178kg)や搭載位置の最適化で前後重量配分は51:49を実現。前後マルチリンクサスペンションの後輪に電動スーパーHICASとアクティブLSDを装備することで絶妙のハンドリングが味わえる。次世代型だけに進化型ABS、ミリ波レーダー車間距離警報、後続車への緊急制動報知、夜間歩行者警報、居眠り運転警報など、数多くの運転支援システムが搭載されている。
■三菱 HSR-IV
HSRは市販車にフィードバックする技術を先行開発するリサーチカーで、1987年に初披露され、この1993年にはバージョンIVに進化した。三菱は「追求してきたヒューマン スケール テクノロジーのひとつの頂点」と位置づけている。中核をなすのはコンピュータを駆使してエンジン、駆動系、足回りを統括的に制御する学習制御技術の導入だ。エンジンは1.6LのV6DOHC-MIVECで、6気筒中3気筒の吸排気バルブの作動を停止する可変排気量機構(MD)が採用されている。駆動は油圧制御式センターデフと、前後輪の左右間のトルク制御機構を備えたオールホイールコントロール(4輪活性化技術)を搭載。フロントサスペンションにアームの伸長でキャンバーとキャスターを変化させるバイオダイナミックサスを搭載するなど、ハード面だけでも新技術が満載される。一方ソフト面は、ステレオイメージセンサーとレーザーレーダーによるマルチアイシステム、オートドライブシステムなど、先進の運転支援技術が搭載されている。
■三菱 MUM500
全長2570×全幅1395mmというコンパクトサイズで、軽自動車の規格よりずっと小さいボディの2人乗りタウンカー。車重はわずか450kgで、エンジンは3気筒の500cc。燃費や省スペース、渋滞対策にも効果があるため、実用化されればスマートなどのマイクロコンパクトカーにも影響を与えたと思われるのだが…。
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