アメリカの半固体リチウムイオン電池の技術開発会社「24Mテクノロジーズ」がメディア向け技術説明会を2024年12月6日、都内で開催し、同社の太田直樹CEOがプレゼンテーションを行なった。
マサチューセッツにある24Mテクノロジーズの太田直樹CEO24Mテクノロジーズの概要
24Mテクノロジーズという社名は日本ではそれほど知られていないが、マサーチューセッツ工科大学の研究室から生まれた半固体の電極材を使用するリチウムイオン電池技術の開発会社だ。
正極と負極を完全に分離する電極材セパレーターを採用し、ユニットセル構造とすることでリチウムイオン電池をより安全にし、生産性にも優れ、リサイクルしやすいという次世代リチウムイオン電池の技術を開発している。また多くのバッテリー生産企業に技術供与するビジネスモデルも展開しているのだ。
24Mテクノロジーズにはフォルクスワーゲン・グループが25%出資しているのを始め、日本では京セラ、伊藤忠、富士フィルムなども出資している。特に京セラは24Mテクノロジーの発足時から協力関係にあり、2016年に生産技術を確立し、2020年に製品化。2024年の現在では蓄電システム用の「クレイ型リチウムイオン電池」として世界初の量産化を実現している。このクレイ型リチウムイオン電池は家庭用蓄電システムとして商品化している。
半固体リチウムイオン電池
従来のリチウムイオン電池は、液状の電極材を採用しており、これを前提に大規模な生産設備が構築されている。つまりこれは、現在のリチウムイオン電池が開発された当時の構造がそのまま維持されているわけだ。
その生産設備は膨大で、多くの工程を経て生産されている。さらに生産の過程で不純物やゴミが混入しないように、環境管理も厳重を極めており、こうした要因から高性能で安定したリチウムイオン電池を大量生産できるのは世界でも数社に過ぎない。
特に電気自動車用は、自動車用としての安全性、信頼耐久性の規格をパスする必要があり、PCやスマートフォン用の電池より格段に量産のハードルは高いのだ。
現在開発が進められている話題の全固体リチウムイオン電池は、固体の電極材をセパレーターに安定的に張り付けることに技術的な課題があり、その生産システム開発は容易ではない。また全固体リチウムイオン電池は硫黄系の電極材が採用されているため、取り扱いに危険性が高いことや、内部で生成されるデンドライトによるショートの危険性があること、さらに継続使用により電解質が膨張・収縮を繰り返すことで亀裂が発生し、性能を低下される性質がある。
半固体リチウムイオン電池セルのサンプル形状こうした現状の液体電極材、あるいは全固体リチウムイオン電池の構造をブレイクスルーする技術が、24Mテクノロジーが開発した半固体の電極材によるリチウムイオン電池なのだ。
現在の主流であるリチウムイオン電池は液状の電極材を多数重ね合わせるという構造だが、半固体リチウムイオン電池の場合は粘土状の電極材とすることで厚塗りが可能になる。液体電極材のように何層もの電極材を重ね合わせる必要がなく、厚塗りの半固体電極材では電極性能が向上する他、従来の生産設備に比べて生産工程も大幅にシンプルにすることができる。特に大エネルギーを使用する乾燥工程が不要になることは大きなメリットなのだ。
この粘土状の電極材はマサチューセッツ工科大学の研究室で開発され、24Mテクノロジーズが特許を持っている。
これを製品化したのが京セラの「クレイ型リチウムイオン電池」なのである。
「クレイ」とは粘土状の電極材を意味し、クレイ型リチウムイオン電池は厚みのあるプレート形で、これを直列、並列で重ね合わせることで電池パックとすることができる。
京セラが量産化に成功した半固体物質を塗布したクレイ形電極材また、半固体の電解質とすることで、従来の液状電極材の電池で必要なバインダー(金属粒子の粘着剤)が不要なため、リサイクルがしやすく、リチウムなどの電極材の回収が容易というメリットもあるのだ。
■リチウムイオン電池の発火防止セパレーター
現在のリチウムイオン電池が実用化されて以来、パソコンやモバイル機器、電気自動車、蓄電装置などで幅広く使用されているが、発火事故も解消することはできていない。
発火する理由は、正極、負極が内部でショートすることで発火し、正極材から酸素が放出され可燃性の液体電解質と反応して激しく燃焼することが原因だ。ショートする原因は、衝突・圧縮などによる外部からの物理的な原因がひとつ。もうひとつは、リチウムイオン電池の内部でリチウムが結晶化し、樹木の枝のように内部で成長(デンドライトと呼ぶ)し、セパレーターを突き破ってショートが発生する現象だ。
特に、リチウムイオン電池の製造時に微小な鉄やステンレスの粒子が電極周囲に混入すると、デンドライトは急速に成長し、電池の発火事故が発生する。
そのため、現在でも電極材に異物を混入させない安全性の高いリチウムイオン電池が生産できるのは世界でも数社であり、きわめて厳密な生産管理体制のもとで生産が行なわれている。
したがって、デンドライトの成長によるショートを防ぐことができれば、リチウムイオン電池の安全性は格段に向上するというわけだ。
24Mテクノロジーズが開発したのが「Inpervio(インパービオ)」と呼ぶセパレーターだ。正極材と負極材の境界にこのセパレーターを採用することで、デンドライトが成長して反対側の正極に侵入することを阻止し、さらにセパレーターの表面にデンドライトを検知する金属皮膜からの信号をセンサーとして使用することで、デンドライトが成長していることを検出するフェールセーフ機能も備えている。
そのため多数の電池セルを組み合わせた電池パックの中で、危険性のある電池セルだけを選別して交換できるというメリットもある。
この「Inpervio(インパービオ)」と呼ぶ新開発されたセパレーターは、半固体電池だけではなく、従来タイプの液体電極材方式のリチウムイオン電池にも採用が可能で、リチウムイオン電池の発火リスクを大幅に低減できる革新的な技術ということができる。
近未来の金属リチウム電池
また、24Mテクノロジーズは近未来の高性能電池として、リチウム金属電池の開発も行なっている。リチウム金属電池用の電解液を開発しており、3元(ニッケル・マンガン・コバルト)系とリチウム金属セルを組み合わせることで画期的な高エネルギー密度と高耐久性を両立するものだ
電気自動車に搭載した場合、電池容量71kWhを想定すると、80万kmの耐久性を持ち、1回のフル充電で航続距離は1600kmを達成できるという。
もちろんこの金属リチウム電池においても「Inpervio(インパービオ)」セパレーターは必須となっている。
24Mテクノロジーズ 公式サイト
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