アイドリングストップの紆余曲折を振り返る
燃費向上や環境・騒音対策としてICE(内燃機関)車両に取り付けられてきたアイドリングストップ機能ですが、最近ではこれを不採用にしている機種(純ガソリン車)が増えてきたといいます。理由はなぜ? 各メーカーに聞いてみました。
アイドリングストップシステムを初めて採用したのは、半世紀も前の1974年、トヨタの4代目「クラウン(いわゆるクジラクラウン)」でした。「エンジン・オートマチック・ストップアンドスタート・システム」と呼ばれる優れたシステムでしたが、高価なオプション扱いであまり数が出ず、1年余りでディスコンになってしまったようです。1981年には同じトヨタの小型車「スターレット」に「エコランシステム」の名称で採用されましたがこの時もあまり普及せず、結局本格的に採用が始まったのは2000年代前半でした。
HEV(ハイブリッド車)の登場によって各社の燃費競争が激化したこと、CO2排出による地球温暖化など環境問題がクローズアップされたこと、さらに搭載車は「エコカー減税」という補助金の対象にもなったからです。トヨタ「トヨタ・ストップアンドスタート・システム」、日産「ピュアドライブ」、三菱「オートストップ&ゴー」、マツダ「アイ・ストップ」、スズキ「アイドリングストップシステム」など、各社様々な呼称を使っていました。
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環境省の過去のWebページによると、1日5分間のアイドリングストップを行うことで、年間約1900円の節約と、約39kgのCO2削減が可能になるとしています(2012年 環境省「地球温暖化対策のための税の導入」より)。駐停車中の騒音も抑えられます。また、一般財団法人「省エネルギーセンター」によると、エンジン始動時の燃料消費増加分はアイドリングの5秒間と同等(2.0LのAT車)なので、それより長くアイドリングストップすれば省エネにつながります。都市部では、クルマに乗っている時間の約半分が停止時間であるとのデータもあり、こまめに実施すれば大きな効果が得られる、としています。
ところが最近になって、純ガソリン車でこのシステムを不採用にした車種が出てきたといいます。例えばホンダの新型フリードやWR-V、トヨタではヤリスやノア/ヴォクシーなどです。そこで直近の試乗会や発表会に参加した際、各社の広報担当者さんに現状を聞いてみました。
国内自動車メーカーの近ごろの傾向とは?
ホンダの場合
まずホンダでは、アイドリングストップを今も採用しているのは、軽自動車の「N」シリーズと普通車の「ステップワゴン」、「シビック」だけで、先ごろ新型になったミニバンの「フリード」や小型SUVの「WR-V」、2022年のマイチェン以降の「フィット」などには採用していません。
理由を聞くと、登録車(=普通車)においては、カタログ燃費がそれほど重要視されなくなってきたことと、ストップアンドゴーのたびにエンジンの始動と停止が繰り返される煩わしさがある等のユーザーの意見を受けて、現状は廃止の方向に向かっているとのこと。
また技術面では、アイドリングストップ適用のためバッテリーの高性能化が必要で、コストアップにつながる一方で、実燃費は思った以上に向上しない状況もあるのだとか。一方軽自動車に関しては、まだカタログ燃費が重視される傾向にあるため適用を継続しております、との返事です。
三菱自動車の場合
三菱自動車では、オートストップ&ゴー(=アイドリングストップ)は、ハイブリッドなどに比べてCO2低減効果は小さいものの、比較的安価なコストでCO2低減ができるので、特にコスト制約が高く販売台数の多い軽自動車等の小型車向けに有効な技術であり、現時点では廃止を進める計画はないそうです。
また、SUVなどの中大型車向けについては、プラグインハイブリッドやハイブリッドなど、より大きなCO2低減効果を得られる技術への置き換えを進めていく方針といいます。RVR、エクリプスクロス、軽のガソリンモデルはアイドリングストップを搭載しています。
スズキの場合
スズキではマイルドハイブリッド搭載モデルが多く、当然それには搭載している一方で、販売台数の多い軽自動車の純ガソリンモデルに関して、やはりユーザーはカタログ燃費の数字を気にする方が多いため、現状では非搭載にしたモデルはございません、とのことです。
スバルの場合
スバルでは最新のレヴォーグ レイバックなどでもアイドリングストップを搭載していますが、右折時などに始動の遅れがあることから、ウインカー点滅時には作動の自動解除ができるようディーラーで対応することができるそうです。
アイドリングストップ衰退の理由
国産車では特に普通車のガソリンエンジン搭載モデルでアイドリングストップ非採用のものが増えているようです。理由をまとめました。
・カタログ燃費が「JC08」から「WLTC」に変わったことで、停止状態での燃費がカタログの燃費数値に与える影響が少なくなったこと。
・エンジンの基本的な燃費性能が上がったことで、高価なアイドリングストップシステムを搭載しなくても良好な燃費が出せるようになったこと。
・バッテリーへの負担が大きいためその寿命が短くなる。アイドリングストップに対応した高性能バッテリーの交換費用はガソリン節約の費用を上回り、費用対効果の面で結果的にユーザーのメリットが少ない。
・作動時の音や振動が大きく、さらにクルマが動くまでのわずかなタイムラグ(特に右折時など)がドライバビリティの減少を招く。
このような理由が挙げられ、メリットよりもデメリットの方が目だってきてしまった結果といえるでしょう。
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みんなのコメント
カタログ燃費(だけ)の数値を良くするための
機能。
見せかけの低燃費(カタログに書けるし)のため
あとは、無理に環境対応基準をクリアさせるための小道具
さすがにバレてきたので、そろそろ潮時なだけ
バッテリーの値段で稼いだ燃費は吹っ飛ぶし、
色々効果の割には制御がややこしいし