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世界のスポーツカーにとどめを刺す騒音規制 「フェーズ3」いよいよ施行と深刻な副作用

掲載 更新 148
世界のスポーツカーにとどめを刺す騒音規制 「フェーズ3」いよいよ施行と深刻な副作用

 国による「騒音規制」が、ただでさえ数が減っている国産スポーツカーにとどめを刺そうとしている。

 現在(2021年10月)の日本の騒音規制は、不正マフラーへの改造禁止を徹底するため、国際基準で決められた、「フェーズ2」と呼ばれる規制値を新車の義務としている。規制値は、乗用車やトラック、バスなど、車種ごとに細かく区分けされており、その基準を満すことが、日本で販売するための前提条件となっている。

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 その規制値が、2022年10月より、「フェーズ3」という、さらに高い規制値へと引き上げられようとしている。このフェーズ3が導入されれば、廃止を余儀なくされるモデルが続出する可能性があるのだ。

文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、SUBARU、MAZDA、環境省

[gallink]

騒音による健康被害を軽減するための規制

 「フェーズ2」とされる現在の規制値は、国連欧州経済委員会によって規定された「協定規則第51号(UN_R51-03)」によるもの。これに日本も調和するかたちで、2020年10月以降に発売される新車に義務化されている。

 人を輸送することを目的とするクルマをM1~M3、貨物を輸送することが目的のクルマはN1~N3と分類分けされ、一般的な9席以下の乗用車は「M1」に該当する。

 騒音規制をする狙いは、「健康への被害を軽減するため」だ。今から約50年前の昭和40年代、日本中に道路が張り巡らされていくに従い、クルマから発せられる音が、騒音問題として取り上げられるようになった。

 特に、加速する際は大きな音が出ることから、道路周辺に住む住民が、頭痛や睡眠障害を訴え、健康被害が問題視されるようになった。乗用車はもちろん、トラックやバスなどは、今よりもずっと音がうるさかったのだ。

 ちなみに、1971(昭和46)年の加速騒音規制値は84dB。おおよそ、救急車のサイレンくらいの音量だったが、2020年に現在の規制値に引き上げられる前までは76dBと、約40%低減されているものの、まだ「うるさい」として、規制値を段階的に引き上げようとしているが現状だ。

現状でも厳しい規制値

 現在、この「M1」カテゴリーにおける具体的な規制値は、PMR(Power to Mass Ratio:最高出力 (kW)/車両質量(kg)のこと)が、120以下は70dB以下、120を超え160以下は71dB、160超えは73dB、200を超えかつ4人乗り以下で座席が低いスポーツカータイプだと74dB、となっている。

一般的な乗用車の規制値は、M1カテゴリーに属する(環境省【四輪車走行騒音規制の見直し】第三次答申の今後の検討課題の進め方について(案)の資料より)

 では、国産車の現時点(2021年10月)の騒音値はどれくらいなのだろうか。国産8メーカーが公表している数値をざっと整理してみた。ちなみに、主なクルマのPMRは、クラウン(315ps、1650kg)は129、BRZ(235ps、1260kg)は129、FK8型シビックタイプR(320ps、1400kg)は160、スープラRZ(387ps、1530kg)は177、R35 GT-R(570ps、1750kg)は230、となる。

現在市販されているトヨタの主なクルマの騒音値。国産8メーカーの騒音値は、本稿にリンクのある画像ギャラリーに掲載したので、そちらを確認してほしい

 例えばクラウンの場合、PMRが129であることから、フェーズ2での規制値は、71dB。しかしメーカー公表の騒音値は、ハイブリッド車で73dB、ガソリン車で72dB、となっている。前述した現在の規制値はクリアしていないが、発売時点での規制値(平成10年規制)をクリアしているため、現時点はお咎めがない。

 ただし、今後、販売継続車へも規制値が適用といったルールとなることも考えられる。

 これが、2022年10月導入が検討されている「フェーズ3」では、規制値がさらに引き上げられるため、騒音低減のハードルが一気に上昇する。

 現在公表されている騒音値で最大は、76dB。GT-R、フェアレディZ、シーマ、フーガ、ミラージュ、ホンダS660、オデッセイ、シャトル、フリード、ラパン、アルトワークス、ウェイク、アトレーワゴン、ブーン、といったモデルであり、スポーツカーだけではなく、一般乗用車であっても、販売できなくなるクルマが出てしまう可能性があるのだ。

 この騒音規制の厳しさがお分かりいただけるであろう。

大排気量のスポーツカーならまだしも、コンパクトカーや軽自動車でも販売できなくなるモデルがある

 注目すべきは、メーカーが公表している騒音値は、もっとも少ないものでも70dBであることだ。特に、ここ1、2年の間に発売された新型車は、軒並み70dBとされている。これらすべてのクルマがみな、ぴったり70dBというのは、ちょっと考えにくいことであり、おそらくだが、魅力性能にはならない騒音値に関しては、騒音規制値を満たせばそれ以上の良い数字であっても公開する必要はない、と自動車メーカーが判断しているのであろう。

 また、低い騒音値を公開すれば「やればできるじゃん」となって、さらなる規制強化に繋がりかねず、この「70dB」という数値は、規制に対する自動車メーカーなりの抵抗の意味が込められているのかも知れない。すでに、自動車メーカーの中では、実現に必要な方策が積みあがっている可能性は高い。

「フェーズ3の導入」は、現時点、決定していない

 国交省に進言する専門委員会の2019年資料の議事録によると、「フェーズ3導入に関する調査検討は、フェーズ2規制が適用される平成32年(2020年)から開始し、平成34年(2022年)目途に、今後の自動車単体騒音低減対策のあり方についてとりまとめを行う。」とされており、「フェーズ3の導入」は、現時点決定しているわけではない。

 特に、騒音規制が先行している欧州国連の騒音専門家会合の動向を見ることになっていたが、コロナ禍によって調査会の会合は延期、中止とされており、議論は進んでいない、というのが現状だ。

「技術的に納得できる規制値」を!!

 冒頭で触れたように、騒音規制の目的は「健康への被害を軽減する」ことだ。だがその方法として、ハイブリッド化してエンジン音を下げる、エンジンルーム全体を遮音して音が漏れないようにする、タイヤ性能を上げてロードノイズを下げる、ということをやっていけば、当然ながら、対策に必要な材料も増え、車両価格は上がっていく。

 クルマ側以外にも対策の仕様はあるはずだ。従来よりも高い防音性能をもつ防音フェンスの開発や、低ロードノイズのアスファルト開発、渋滞緩和のための道路整備など、すでに官民一体となって技術開発もされてはいるが、排ガスや燃費などの他規制と同じく、総合力が試されている騒音も、クルマだけに規制を押し付ける今の論調が正しいとは思えない。

 また、ヨーロッパのように、市街地を出たら高速走行が当たり前な地域での騒音規制値と、信号や交差点の多い日本の騒音規定値を合わせるのは、若干ナンセンスにも思われる。騒音測定の試験条件「アクセルべた踏みの全開加速」を、日本でするドライバーが何人いるだろうか、という疑問も浮かぶ。

 もっというと、同じデシベルの騒音でも、音の質によっては印象が全然違う。自動車開発では、ロードノイズは周波数ごとにメカニズムを切り分けて対策検討をしている。

 人間の健康被害軽減が目的であるならば、「コー」といった200Hz以上の高い音は、人間は不快に感じやすく、「ゴー」といった100Hz程度の低い音だと気にならない、といった人間感覚も加味した、「妥当な目標値」にしてほしい、と思う。

[gallink]

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