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ロンドン市街地での自動運転トライアル 実際に試乗 市民の反応は

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ロンドン市街地での自動運転トライアル 実際に試乗 市民の反応は

もくじ

ー 自動運転への準備は万全か?
ー 実際に乗ってみると
ー 制御アルゴリズムには課題も
ー パーク・ライフ:クルマが自動でやります

混乱招く「自動運転レベル」 トヨタ研究所ボスが指摘

自動運転への準備は万全か?

ロンドン市街地で行われている自動運転のトライアルは、市民の反応を正確に知り、そのうえで技術開発を行うことが目的である。本誌が実際のデモカーに試乗した。

自動運転の受け入れについて英国の世論は二分している。一般人が自動運転の試作車に乗る初めてのトライアルに参加した1300人を対象にした調査結果だ。インタビューはトランスポート・リサーチ・ラボ(TRL)、グリーンウィッチ大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートが行った。半数を少し下回る(47%)人がコネクテッドカーや自動運転に前向きであると答え、43%が不安だと答えた。少数だが10%の人は自動運転に反対だと答えている。

この結果はまだ暫定的なものであるが、先週、本誌もロンドンのグリーンウィッチで行われているこのトライアルに参加し、4台の自動運転ポッドの1台に乗ることができた。O2アリーナ周辺の川沿いの狭い道路を3.4km進むルートである。

アルミ製のシャシーとコンポジットのボディを持つ4座のポッドは、ヒースロー空港の駐車場からターミナル5にビジネス客を運ぶポッドと同じデザインなので、一部の人にはお馴染みだろう。ヒースロー空港のポッドは鉛蓄電池でコンクリートのトラックに沿って動く。ゲートウェイ・トライアルのポッドも同じくウェストフィールド・スポーツカー社製であるが、ずっと洗練されており、エネルギー源はリチウム・イオン電池で重量は約900kg。29個のセンサーを搭載し、完全自動運転モードで自由に走り回ることができる。

実際に乗ってみると

サイクリストや歩行者と共用する狭い道を走るゲートウェイ・トライアルでは、安全上の理由からポッドの速度は14.4km/hに制限されているが、設計上は76km/hまで出すことができる。「サイクリストや歩行者がいる中で走行することで、初めて自動運転の難しい課題がわかるのです」とウェストフィールド・トライアルの責任者であるアンディ・フロストはいう。「重要なのはこの点です。荒野の広く開けた道でなら、自動運転試験なんて誰でもできますよ」

ゲートウェイのために選択された道路は、もちろん広く開けてもいないし、荒野でもない。幅8mほどで、氷の張ったテムズ川への転落事故を防ぐため、片側には鉄製の手すりが設けられている。反対側にはO2との境界となる侵入防止のセキュリティフェンスが張り巡らされている。通路は二つのレーンからなる。サイクリストや歩行者を分離するためだ(紙の上の話だが)。ゲートウェイのポッドはO2側のレーンを走行する。「執事」役(緊急時に対応する)のフロストの横に座った私は、前方の歩行者やサイクリストを映し出すカメラの映像をタブレットで見ることができる。

本誌の試乗ではルートを往復したので、今回のトライアルの良い面、あまり良くない面の両方を見つけることができた。行きの試乗ではポッドはためらいがちで、邪魔になる歩行者やサイクリストと遭遇するたびに何度も停車した。「考えあぐねているように感じられるかもしれませんね」とフロストはいう。

これはプロトタイプであり商品化のための作りこみはされていない。なので、ブレーキ・アクチュエータの発する金属音や停止の際のギクシャク感も無視することにしよう。このようなトライアルでは、制御アルゴリズムの大部分は慎重さ、用心深さのために費やされる。特に電動のポッドはほとんど走行音がしないので、周りの人がその存在に気づきにくい。

ここで自動運転のクルマの設計課題がひとつ浮き彫りになる。ポッドは角が丸まっており親しみやすい外観なので、多くの人は走行優先権を持つ乗り物だとは思わないのだ。今後の自動運転のクルマあるいはポッドには、歩行者やサイクリストが道を譲ってくれるような外観上の強いインパクトが必要かもしれない。そうでないと、移動速度のアドバンテージが絵に描いた餅で終わってしまう。

制御アルゴリズムには課題も

このポッドには4種類のセンサーが使用されている。ロング・レンジの77GHzレーダー(3個)、ミッド・レンジのライダーと呼ぶ光レーダー(2個)、カメラ(5個)、それにパーキング・センサーと類似技術の超音波近接センサー(20個)である。バックアップとしてミリタリー・グレードのGPS信号を使ったナビゲーション・システムが使用され、複数チャネルのガイド情報はCAVスターで処理される。CAVスターのソフトとハードは軍事技術に強い英国企業フュージョン・プロセシングが開発した。

フュージョンのブラック・ボックスの処理能力に関する情報は開示されていないので、ブレークスルーがあるのかどうかの判断は困難だ。しかし社長のジム・ハチンソンはその処理能力に関して自信満々である。「われわれはもう90%まで来ています。システムの完成ももうすぐですよ」

しかしながら、試乗してわかったことはゲートウェイの動作には洗練と粗雑が入り混じっているということだ。通路が空いている時はポッドの速度は上限値の14.4km/hまで上昇し、緩やかなカーブではまるでベテラン運転手のように滑らかに走行する。

しかし、鉄製のポストとの間に最小限のクリアランスしかないタイトなコーナーに差し掛かると、途端にスピードを落として何とか通り抜けるという感じである。クリアランスは両サイドとも300mmに設定されている。人間の運転手であれば慎重に、しかし明らかにもっとスムースに通り抜けるだろう。「あそこはこのルートの中でも一番の難所なんです」とハチンソンはいう。しかしわれわれは、制御アルゴリズムを煮詰めるには今後かなりの時間が必要だろうと感じた。

それより印象深かったのは、乳母車を押している若夫婦が道路の端を歩いている時にポッドがどう対応したかである。過度に慎重な制御アルゴリズムなら、ポッドを停止させたことだろう。しかしフュージョンの意思決定マトリックスは、人間の運転手と同じく慎重すぎることなく無事通過した。危険が散在する環境における安全制御のマージンを、ゲートウェイが新たなレベルに引き上げたことは確かである。先日、ウーバーの自動運転試験車が歩行者をはねてしまうというニュースがあったが(自動運転のクルマが人を死亡させたのは初めてだ)、安全性と一般人の理解という両面で自動運転の技術を実用的なものにしていくには、従来にも増して慎重に一歩一歩進めていくしかない。このニュースの教訓である。

パーク・ライフ:クルマが自動でやります

自動運転プロジェクトは全国で行われるようになった。フォードやジャガー・ランドローバーも参加する英国オートドライブ・プロジェクトは先週、最新の開発成果を展示し自動的に空きを探して駐車するクルマのデモンストレーションを行った。

この自動駐車に関する技術は二つある。ひとつは協調駐車と呼ばれるもので、駐車場の空きスペースを認識してドライバーに知らせ続ける技術だ。駐車場に入ったクルマはスロットの空きを示す地図をダウンロードする。クルマが走っている最中も同じ駐車場にいるコネクテッド・カーからの情報でスロットの空き状況はリアルタイムにアップ・デートされる。この技術は混雑緩和に役立つと予想されている。英国オートモーティブによると、都市の渋滞の30%が駐車スペースを探すドライバーによるものだという。

二番目のシステムは、レンジローバー・スポーツの自動運転プロトタイプで、空いている駐車スロットを探し出し自動的に駐車を行う。レベル4の自動運転システムが搭載されており、2個のライダー・センサーとロング・レンジのレーダー・センサーがフロントに、1個のライダー・センサーがリアに、2本のGPSアンテナが屋根に、それぞれ備え付けられている。レベル4は、ドライバー前提の自動運転では最も高いレベルになる。レベル5ではもはやドライバーは不要となる。

自動運転のランドローバーはすでにコベントリーの公道でトライアルを行っているが、ミルトン・キーネスでの今回の新しい実験では、初めてラウンドアバウトに挑戦した。出入口での動作と優先権が新たな課題である。短時間のデモでは、レンジローバー・スポーツはあらかじめ定められたルートを完ぺきに走行した。ブレーキングは少しばかり雑だったが。

目的地の駐車場に到着すると、レンジローバー・スポーツは所定のスポットまで進み、バックし前進して駐車スペースに収まった。今回のデモにおける唯一の不具合は、バックする時にコーンを見つけられなかったことだけである。

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