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スライドドア車ならなんでも高齢者フレンドリーとは限らない! 重要なシート形状とズバリ選ぶべき車種

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スライドドア車ならなんでも高齢者フレンドリーとは限らない! 重要なシート形状とズバリ選ぶべき車種

ポイントはヒール段差とシート位置

 足腰の弱った高齢者をより快適にクルマに乗り降りさせてあげたい。そんな要望に応えてくれるのは、どんなクルマなのか? まず思いつくのは、リヤドアの開口部が大きくてステップが低く、ステップに段差のない両側スライドを備えたクルマだろう。

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 そう、ミニバンやプチバンと呼ばれるハイトワゴン、そしてスーパーハイト系と称される軽自動車である。両側スライド車のメリットは、大開口のドアからの乗降性の良さに尽き、その開口部高がたっぷりあれば、頭を大きくかがめずに、家の玄関を出入りするような自然な姿勢で乗り降りできることになる。

 ならば、どんなスライドドア車でもいいのか? と言えば、じつはそうではない。ドアをくぐり、室内に入り、そしてシートに腰掛け、降車時にはそこから立ち上がることになる。だが、足腰の弱った高齢者にとっては、シートの着座や立ち上がり性の良否がポイントとなるのである。

 それは、どういうことか。家庭内の椅子、ソファを想像してほしい。ローソファに座り、そこから立ち上がる動作は健常者であっても大変だ。とくに立ち上がる際は、どこかに手をつくなどしないとスムースに立ち上がることはできないはずだ。だが、食卓の椅子の高さなら健常者ならずとも動作が小さくて済み、比較的に座りやすく、立ち上がりやすい。

 クルマのシートもまったく同じで、フロアに対するシートの高さ=ヒール段差が高ければ高いほど、座りやすく、立ち上がりやすくなる。

軽自動車ならルークスとekスペースがベスト

 例えば、高齢者を乗せ降ろしさせるのにもぴったりな、スーパーハイト系軽自動車の例を挙げると、後席のヒール段差は車種によって様々。日産ルークス&三菱eKスペース380mm、ダイハツ・タント360mm、ホンダN-BOX 355mm、スズキ・スペーシア360mmだ。

 つまり、このなかで足腰が弱った高齢者が座り、立ち上がるのにもっとも適適しているのは、ヒール段差がもっとも高い380mmのルークスとeKスペースということになる。もっとも、ヒール段差は360mm以上あると座りやすく立ち上がりやすいので、ほぼ全車、高齢者対策としては合格と言っていい。

Mクラスボックス型ミニバンならノア&ヴォクシーやステップワゴン

 では、高齢者施設などの送迎車としての使用頻度も高いMクラスボックス型ミニバンはどうだろう。2列目席のヒール段差は日産セレナ390+70=450mm、現行ステップワゴン385mm、新型ノア&ヴォクシー380mmだ。ここでのポイントは、セレナの場合ステップとフロアに70mmの段差があり、階段を2段上がるようにして乗り込まなければならない点だ。

 よって、ワンステップフロアのノア&ヴォクシーやステップワゴンのほうが、足腰の弱った高齢者には向いている。新型ノア&ヴォクシーにはからくり機構を使った、パワースライドドアと連動して展開するユニバーサルステップもメーカーオプション(3万3000円)として用意され、ステップ地上高は200mmまで低まるから、高齢者や小さな子どもの乗り降りにぴったりだ。

 肝心のヒール段差は新型ノア&ヴォクシー370mm、現行ステップワゴン340mm、セレナ340mmと、ノア&ヴォクシーが圧倒。シートに腰を落とす、立ち上がる、どちらの方向もより楽ということになる。乗降時にはBピラーに縦長に付いた、下部は子ども用自転車のハンドルグリップと同じ細さにデザインされているアシストグリップの存在も、乗り降りのしやすさに貢献してくれるに違いない。

後席の降車のしやすさはシート位置がポイント

 だが突き詰めていくと、足腰の弱った高齢者ならずとも、後席の降車のしやすさに関わる意外なポイントがある。それがシート位置。これができるだけ外側にあってくれると、降車が楽になる。ミニバンの話ではないが、新型アウトランダーはSUVならではの高い着座位置ゆえに、先代に対して前後シートを外側配置として、乗降性を高めていたりする。

 そしてさらなる意外なポイントが、シート外側サイドのたわみである。そこがたわみやすいと、お尻を横に滑らすことで、スルリと体が外側下に移動でき、地面に自然に足がつきやすくなるわけだ。その点では、Mクラスボックス型ミニバンの場合、セレナと新型ノア&ヴォクシーが比較的優れている(シートサイドのたわみ量が大きめ)。

 一方、シート座面のたわみは少ないほうが、とくに足腰の弱った高齢者にはありがたい。たわみすぎるとお尻がより大きく沈むことになり、例のヒール段差を着座したお尻の位置で計ると、結果的に低まってしまい、座るのはいいとしても立ち上がり性には不利に働いてしまうのである。

 よって、ソファ的なかけ心地より座面表皮の張りが強めの、お尻の沈み込み量が少ないシートがより適切と言えそうだ。この点については、グレード(シート表皮の素材、織り方)にもよるので、各車、実際にたわみ量をディーラーなどでチェックしてほしい。

 例えば、コンパクトミニバンの2列目席で言えば、ふんわりソファ的なかけ心地のシエンタよりフリードのほうが、2列目席の座面の張りは強め。もちろん、かけ心地がより良く感じられホールド性で勝るのは、フランス車のような座面がある程度たわみ、お尻が沈み込むシートのほうなのだが……。

 もっとも、ここで示したスペックだけで、それぞれの高齢者に最適とは言えないこともある。体型、身長、足腰の弱り具合などによるからだ。できればショールームに連れ出せれば連れ出し、それが無理なら試乗車を自宅に持ってきてもらい、実際に乗り降りしてもらうのが正解だろう。

 ここではおもに足腰の弱った高齢者の乗り降りに相応しいシートについて言及した。ステップ、フロアの高さ、スライドドア開口部の高さ、幅、そしてアシストグリップの位置、前席のつかまり所など、乗降性の良し悪しはさまざまな要件が絡むからである。

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