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日本の中古車異常高騰の原因はロシアだった!! ウクライナ危機で激変した中古車輸出最前線

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日本の中古車異常高騰の原因はロシアだった!! ウクライナ危機で激変した中古車輸出最前線

 日本からロシアへの中古車輸出が激増している。ウクライナ侵攻直後、大幅に減少していた輸出台数は、現在、侵攻前の水準を上回るまでになっているという。

 そこで本稿では、ロシア向けを主体とする中古車輸出業者を取材し、ウクライナ危機で激変した中古車輸出の実態を調査。日本国内の中古車相場が値上がりしている裏には、ロシアへの中古車輸出が大きく関係していた!

日本の中古車異常高騰の原因はロシアだった!! ウクライナ危機で激変した中古車輸出最前線

文/加藤久美子
アイキャッチ写真/Alexey Kopytko – stock.adobe.com
写真/LADA、TMR、Adobe Stock

■ロシアへの中古車輸出は大盛況!

ウラジオストックに輸出される中古車(Maxim Tupikov@Adobe Stock)

 2022年3月上旬。千葉県木更津港に大量のロシア向け中古車が出港できず港で滞留していたシーンを覚えている方はいらっしゃるだろうか?

 ウクライナ侵攻から間もない頃で、ロシアでは日本からの中古車に対する支払いが不安定になり、その関係で日本からロシアに船を出すことができず、日本の港には数千台の中古車がとどまっていたのである。実際それは「中古車輸出台数」の数字にも如実に表れている。以下は、日本中古車輸出業協同組合がまとめた日本→ロシアへの中古車台数のデータである。

■日本からロシアに輸出した中古車台数
●2022年1月:10,415台(前年同月比48.5増。1位ロシア、2位UAE)
●2022年2月:14,808台(同32.1%増。1位ロシア、2位UAE)
●2022年3月:11,477台(同15.9%減。1位UAE、2位ロシア)
●2022年4月:11,208台(同25.3%減。1位ロシア、2位UAE)
●2022年5月:11,630台(同16.8%減。1位UAE、2位ロシア)

 3月は2月から3000台以上減少しており、以降、5月までは前年同月比が大幅に減少する状態になっていた。

しかしその後は、
●2022年6月 18,266台(同24.4%増 ロシア1位、UAE 2位)
●2022年7月 18,002台(同30.9% ロシア1位、UAE 2位)

 と、6月以降は激増している。いつ頃から、ロシアへの中古車輸出が復活したのだろうか?

 ロシア向けを主体とする中古車輸出業者に聞いてみたところ、意外なことが分かった。中古車輸出への制限は3月の終わり頃には元に戻っていたとのこと。

「3月に入ってから中古車輸出に制限がかかっていたり、入金が確認できなかったりなどの理由で日本からロシアへの中古車輸出はストップしていましたが、3月の下旬にはもう規制が解除されています。

 その後も600万円(日本円)以上の中古車はぜいたく品とみなされ輸出が禁止されていますが、それ以下は問題なく輸出できています。といっても4~5月いっぱいは、それまで滞留していた中古車の輸出が集中し、ロシア側の受け入れ体制も混乱していました。日本からの中古車が激増し、港でさばききれない状況が続いていたのです。それが戻ってきたのが6月以降ですね。

 ちなみに20万円以下は輸出台数にカウントされないので、おそらく、実際にロシアに輸出されている日本からの中古車はもっとたくさんあるでしょうね」。

 なお、ロシア国内では新車生産がほとんどできていない状況でまた新車の輸入も少ない状況が続いている。それで、日本からの中古車輸入が想定以上に増えており、ロシアの港ではさばききれない日本車で溢れかえっている。

 ロシアの富裕層向けにこれまで台数が少なかった高額車両の輸出も目立っているとのこと。ロシアの富裕層は西側諸国からの制裁(資産の接収など)を恐れてドバイに退避?している例も多い。ドバイ(UAE)は米欧日からロシアへの経済制裁に加わっていないため、ロシアの富裕層が集まっていると考えられる。

 日本からロシアに輸送する大型船がロシア向けからドバイ向けに切り替わったことで、ロシア向け輸出の拠点となる富山港では小さめの船で頻繁に輸出を繰り返しているという。

■ロシアの新車生産はどうなっているのか?

2022年6月8日、「AVTOVAZ」JSCは、2022年モデルイヤーの最初のLADAグランタクラシックカーが組立ラインからロールオフした自動車生産を再開

トヨタは9月23日、現地での生産と新車販売の終了を発表した。また合弁工場を持つマツダも事業撤退の協議を始めている。そのほかの自動車メーカーは当面現状維持の方針としている。写真はトヨタモーターマニュファクチャリングロシア・サンクトペテルブルグ工場

 ロシアでは2月末~3月以降、日本や欧州自動車メーカーや部品メーカーが相次いで操業をストップした。さらに、欧州や日本で生産される自動車部品についても輸出供給が原則、ストップするか大幅に制限されている。

 ロシアの自動車生産台数(乗用車、小型商用車、トラック、バス)は年間約150万台レベルだが、これが2022年は半減すると予想されている。

 ロシア国内の自動車保有台数は4600万台で平均すると1台あたり15年前後使用されるが、しばらくはこの平均寿命も延びていくだろう。そして、日本や欧州メーカーの撤退によって作れなくなってしまった新車だが、ロシアの自動車メーカーは苦肉の策として、「80~90年代の旧車スペック」で新車を生産している。

 2022年3月頃にロシアの自動車メーカー数社にメールで取材をした際には、排ガス浄化装置やエアバッグ、ABSなどの装備を除いた仕様で生産している、または6月頃から生産を開始するという返事だった。

 その代表的な車種をアフトワズが製造するロシア最大の自動車ブランド「LADA」である。アフトワズは2014年6月にルノー・日産が経営権を取得し、ルノーや日産ブランド、ダットサン車の製造も行われていたが、ロシアのウクライナ侵攻を受け5月にはロシア市場からの全面撤退を発表している(6年以内に事業再開の可能性あり)。

1977年の誕生以来、基本的な仕様を変えることなく一度もモデルチェンジしていない「ラダ・ニーヴァ」

 それと入れ替わるように生産が始まったのがLADA「Granta Classic 2022」(ラダ・グラントクラシック2022)に代表されるシンプルなモデルだ。ラダは2021年ロシアで生産されたクルマの2割以上のシェアを持つ最大の乗用車ブランドである。日本では「ラダ・ニーヴァ」が有名で今も多くのファンが存在しており、割と最近まで新車も輸入されていた。

 ちなみに、筆者はかつて30年以上前になるが代車で「ラダ・サマーラ」というクルマに数ヵ月間乗っていたことがある。当時、Faia(外国自動車輸入組合)が10台程度輸入したと記憶しているが、あまりにも不人気(故障が多く見た目も悪い)で最後は組合の幹部会社が代車として使っていた。頻繁に故障して何度か通勤ルートである目黒通りを渋滞させてしまった。代車なのに信頼度ほぼゼロというクルマだった。なお、中身は完全に別物だがラダ・サマーらはジャッキー・イクスの運転でパリダカに出場し、入賞した過去もある。

経済制裁の影響で、エアバッグ、ABSなどの装備を除いた仕様で販売されるラダ・グラントクラシック22

 ラダ・グラントクラシック22は現在、ロシアで販売される最も安価なクルマの一つで、エアバッグや排ガス浄化装置、ABSなどの装置、オーディオ類やエアコンも(?)ついていないようだ。経済制裁の影響で電装関係の部品が入手しづらいためロシアとその同盟国が製造した部品のみで作られている。

 最後に。この原稿を書いている最中に知人の輸出業者から情報提供があった。その業者によると、

「日本の中古車市場はタマ数が少なく、全般的に相場が上がっていますよね。これ、実はロシアへの中古車輸出が大きく関係しているんですよ。もちろん、新車の生産調整が行われて納車が遅れていることも関係ありますが、それよりもロシア輸出のほうが大きいでしょう。私の周辺では特に人気なのはホンダ車ですね。ステップワゴンやジェイドなどが制裁前に比べると+数10万~100万円前後に値上がりして高値で取引されています。全般的にミニバンやSUVの人気があります。ここぞとばかりに、中古車業者はロシアにどんどん輸出していますよ!」

 日本国内の中古車相場が値上がりしているのにはロシアへの中古車輸出が大きく関わっている模様。この状況はまだしばらく続きそうである。

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