現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 『負けられない地元戦』という潜在意識。3位表彰台がこぼれた平川亮の最終スティント/WEC富士

ここから本文です

『負けられない地元戦』という潜在意識。3位表彰台がこぼれた平川亮の最終スティント/WEC富士

掲載
『負けられない地元戦』という潜在意識。3位表彰台がこぼれた平川亮の最終スティント/WEC富士

「自分も、もう1回(映像を)見直さなきゃいけないと思うんですけど、ただ結果的に何も悪いことは……違反はなかったと思うので。ちょっと、そこは残念です」

 現在のWEC世界耐久選手権シリーズチャンピオンとして、自身初となる予選アタッカーも担当した母国ラウンドの週末。地元凱旋TOYOTA GAZOO RacingのGR010ハイブリッド8号車を操る平川亮に出番が回ってきたのは、6時間の決勝で3時間47分が経過した134周目のことだった。

トヨタ小林可夢偉が語る“ふたつの敗因”。衝撃の接触は「BoPによるパワーと重さの差が出た」/WEC富士

 周囲より早めの最終スティントで4輪にニュータイヤを装着した8号車は、トラック復帰してまもなくレースベストの1分31秒410を記録しつつ、安定して1分31~32秒台のラップを並べていく。しかし4時間を10分ほど経過した時点で63号車ランボルギーニSC63(ランボルギーニ・アイアン・リンクス)が駆動系トラブルを抱えてストップし、この日2度目となるVSC(バーチャル・セーフティカー)が導入。さらに直後には3回目のSC(セーフティカー)先導に切り替わると、これが僚友の7号車ともどもTGRの歯車を狂わせることになる。

「最初はペースも良かったんです。でもそのあとセーフティカーが来て、リスタート後はもうタイヤが厳しくて……」

 ここでライバル勢もVSCピリオドを活用してニュータイヤ、もしくは程度のいいユーズドに履き替えることができ、相対的なラップペースでも8号車に優位性はない状態に追い込まれる。

「ちょっと抜かれたり、引き離されたりする場面があったんですけど、そのあとはペース自体、悪くなかったとは思います。かといって1番速かったわけではないですが……」

■100Rの「知る人ぞ知るライン」

 残り1時間。最終のチェッカースティントに向けても、ライバル勢に先んじて「プランどおり」に4輪ニュータイヤを装着した平川だが、このアウトラップの最終セクターで宿敵ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963、首位を行くケビン・エストーレと最終セクターで"邂逅"する。

「ラップダウンっていうところまで頭にはなくて。ただ僕の方が先に入ったので、争っていることは知っていた。なので自分のベスト、自分がタイヤを温めるベストを尽くしつつ。もちろん6号車も簡単に先に行かせたくはないですし……というので、結果的にああいうかたちになった」とレース後に振り返った平川は、その先のGR Supra(ターン15)アウト側で押し出されるように先行を許す。

 ここでのロスも響いたか。本来は背後にいたはずの35号車アルピーヌA424や、ハーツ・チーム・JOTAの2台にも最後のルーティンを終えて前方へと出られてしまう。それでも「ひとつでも前に行くということしか考えていなくて。そこのときの順位とかはあまり覚えてない」と、アウトラップの50号車フェラーリ499Pを皮切りに、100Rをインカットした勢いでフロアから火花を散らしながら、192周目には38号車ポルシェ963のオリバー・ラスムッセンを、そして残り30分を切った196周目にはセクター2自己最速の28秒457も記録しながら、同12号車のノルマン・ナトを攻略していく。

「あそこ(100Rイン側)はドライビングラインなので……。知る人ぞ知るラインだと思います」と、この時点で4番手まで浮上した8号車は、直後に3番手走行中だった35号車アルピーヌがドライブスルーのペナルティを消化したことで、気持ちの籠った"諦めない"オーバーテイクで、表彰台圏内まで復帰する力走を披露してみせた。

 しかし、結果は冒頭のコメントが示すとおり。自らもアウトラップの6号車ポルシェに対する「青旗無視」を理由とするペナルティ裁定により、最終的にフィニッシュ目前となる5時間47分の時点でピットレーンを通過。劇的な乱高下を経て失意の10位チェッカーを受け、TGR陣営としての"富士2敗目"を喫する結果となった。

 改めて平川に、この週末の感慨を聞いてみる。

「ちょっとセーフティカーが……なんでこんなにいっぱい出るんだ、っていう(苦笑)。出たら出たで長いですし変なレースでしたが、ペース的には少しツラかった部分で助けられた面もありました。でも結果的には10位というかたちなので、ちょっと何とも言えないというか。ホームレースでたくさんの期待もあって、ファンのみなさんも大勢いらっしゃっているなかで、本当に不甲斐ないです」と反省の弁に終始した平川。

 性能調整により出力を絞られ、車両重量も嵩むなか、タイヤのアロケーションも考慮しつつあらゆる場面を想定して作戦を振り、給油時間の長短でトラックポジションを優先するなどクリーンエアで走れるよう策を練った6時間だったが、やはり数字の面での多寡は如実に結果として跳ね返ってくることに。そのぶんだけ『負けられない地元戦だった』という潜在意識を含めて無理をする必要があった、ということだろう。

「僕らは重い分、スライドしたらオーバーヒートしてタイヤがなくなってしまいますし、結構スライドしないギリギリのところで走る。でも(優勝したライバル陣営のクルマは)滑っても前に進めて……というような走りをしてる雰囲気で、立ち上がりはやはり速い。ストレートの後半だけは(車速250km/h以上の領域)僕らもパワーがあるので、スリップを使って勝負するか、抜かれないようにするか。そんな戦いになりました」

 残すは最終戦バーレーン。昨季もここで確定させた8号車のドライバーズタイトル防衛の可能性は潰えているものの、まだマニュファクチャラータイトル6連覇の重要な任務が残されている。 

「バーレーンもタイヤに厳しいサーキットなので。そういった意味では、最後はいいかたちで締めくくれると思いますし、今回はホームレースでこんなに悔しい思いをしたので。最終戦はしっかりと決めて獲り返したいと思います」

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

追突スピンから驚異の逆転勝利で防衛成功。トヨタ平川亮「セブが最高の走りで逆境をはねのけてくれた」
追突スピンから驚異の逆転勝利で防衛成功。トヨタ平川亮「セブが最高の走りで逆境をはねのけてくれた」
AUTOSPORT web
UPGARAGE NSXの1年半ぶり表彰台に小林&小出が安堵。CNFとセットアップに苦しむも改善の兆し
UPGARAGE NSXの1年半ぶり表彰台に小林&小出が安堵。CNFとセットアップに苦しむも改善の兆し
AUTOSPORT web
「完敗です」最終戦を残してタイトル争い終戦のニッサンZ陣営。ニスモ2台は走行データ不足と雨に泣かされる
「完敗です」最終戦を残してタイトル争い終戦のニッサンZ陣営。ニスモ2台は走行データ不足と雨に泣かされる
AUTOSPORT web
王座を掴んだ魂の追い上げ。首位奪還のトヨタ8号車ブエミが語る「賢い最終スティント」/WECバーレーン
王座を掴んだ魂の追い上げ。首位奪還のトヨタ8号車ブエミが語る「賢い最終スティント」/WECバーレーン
AUTOSPORT web
ロッテラーを祝う一貴副会長/レース中の“合法的”エンジン交換/バゲットに続くふたり目etc.【WECバーレーン決勝Topics】
ロッテラーを祝う一貴副会長/レース中の“合法的”エンジン交換/バゲットに続くふたり目etc.【WECバーレーン決勝Topics】
AUTOSPORT web
王者ブレイニー勝利で最終決戦へ。ベルvsバイロンはまさかの“壁走り”で懲罰決着に/NASCAR第35戦
王者ブレイニー勝利で最終決戦へ。ベルvsバイロンはまさかの“壁走り”で懲罰決着に/NASCAR第35戦
AUTOSPORT web
最終盤にトヨタvsポルシェ勃発、8号車が直接対決制して6連覇達成。ドライバー王者はロッテラー組【第8戦決勝】※追記あり
最終盤にトヨタvsポルシェ勃発、8号車が直接対決制して6連覇達成。ドライバー王者はロッテラー組【第8戦決勝】※追記あり
AUTOSPORT web
14.5点差は“大量リード”にあらず。「開幕戦の鈴鹿とは全然違う状況」【SF王座への勝算:坪井翔陣営】
14.5点差は“大量リード”にあらず。「開幕戦の鈴鹿とは全然違う状況」【SF王座への勝算:坪井翔陣営】
AUTOSPORT web
“寒くなれば有利”は非現実的? 「富士の課題を持ち越さないようにしたい」【SF王座への勝算:野尻智紀陣営】
“寒くなれば有利”は非現実的? 「富士の課題を持ち越さないようにしたい」【SF王座への勝算:野尻智紀陣営】
AUTOSPORT web
「開幕戦で沈んだ原因は、分かっています」。逃し続けてきた予選ポイントもカギに【SF王座への勝算:牧野任祐陣営】
「開幕戦で沈んだ原因は、分かっています」。逃し続けてきた予選ポイントもカギに【SF王座への勝算:牧野任祐陣営】
AUTOSPORT web
スーパーフォーミュラ・ライツ第6大会鈴鹿は野中誠太と中村仁がポールポジションを分け合う
スーパーフォーミュラ・ライツ第6大会鈴鹿は野中誠太と中村仁がポールポジションを分け合う
AUTOSPORT web
PPから10位に終わるも「下を向く必要はない」とModulo伊沢。海外目指す弟的後輩には「行っちゃえ!」
PPから10位に終わるも「下を向く必要はない」とModulo伊沢。海外目指す弟的後輩には「行っちゃえ!」
AUTOSPORT web
【F1第21戦無線レビュー(2)】ステイアウト選択のアルピーヌが2台揃って表彰台を獲得「まさかここまで来れるとは」
【F1第21戦無線レビュー(2)】ステイアウト選択のアルピーヌが2台揃って表彰台を獲得「まさかここまで来れるとは」
AUTOSPORT web
トップ3だけじゃない。要チェックドライバー4者の本音とそれぞれの個人的課題【SF最終大会プレビュー】
トップ3だけじゃない。要チェックドライバー4者の本音とそれぞれの個人的課題【SF最終大会プレビュー】
AUTOSPORT web
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
AUTOSPORT web
首位坪井か、2位牧野か。SF最終大会鈴鹿を前に思い出す2015年FIA-F4最終戦。長い因縁をもつふたり
首位坪井か、2位牧野か。SF最終大会鈴鹿を前に思い出す2015年FIA-F4最終戦。長い因縁をもつふたり
AUTOSPORT web
かろうじてタイトルの可能性が残ったホンダ陣営とSTANLEY「正直、こういう結果は予想していた」牧野任祐
かろうじてタイトルの可能性が残ったホンダ陣営とSTANLEY「正直、こういう結果は予想していた」牧野任祐
AUTOSPORT web
2度目のWECタイトルを手にしてワークスを去るアンドレ・ロッテラー「今日は最高の一日ではなかった」
2度目のWECタイトルを手にしてワークスを去るアンドレ・ロッテラー「今日は最高の一日ではなかった」
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村